総合型地域スポーツクラブの運営組織

 どうも!上杉健太です。

 今日は、『総合型地域スポーツクラブの運営組織』というテーマでお話したいと思います。総合型地域スポーツクラブは地域住民が主体となって運営されることを基本としている分、その体制づくりというのが極めて重要になります。経営のプロが手掛けたものとは違う場合がほとんどなので、その地域にどのような人財がいるかによって、組織づくりも大きく変わっていくのです。今日は、いくつかのパターンに分けて総合型地域スポーツクラブの運営組織の作り方、あり方について考えていきたいと思います。


必要なポジション

 まずは総合型地域スポーツクラブの運営に最低限必要なポジション・役割について抑えておこうと思います。総合型地域スポーツクラブには色々な形があるとは言え、基本形はあると思いますので、あくまでも最低限これは必要だよね、という捉え方をしてください。

主権者・オーナー

 多くの組織の最高意思決定機関として『総会』があると思います。株式会社なら株主総会ですね。ここでの決議があらゆる機関決定よりも優先されることになり、代表取締役(社長)などもここで選定されたりしますよね。これは総合型地域スポーツクラブも同じで、『総会』が最高意思決定機関となります。そしてその『総会』において議決権を持つ人こそが主権者またはオーナーとなります。要するにクラブ運営に関して1票を投じる権利を持つ人のことです。

代表・役員

 主権者全員が運営に実際に参加するのは現実的ではありませんから、一定の主権者または主権者が委任する者に運営を任せることになります。それがいわゆる『役員』であり、その役員の中でも最高責任者となるのが『代表』です。理事とか監事とか、言い方は組織によって異なると思いますが、恐れくこれも、どのような総合型地域スポーツクラブにも必要なポジションでしょう。

クラブマネジャー

 権利や責任だけでは実際のクラブ運営はできません。そこには実務をこなし、実際に現場をマネジメントする役割が必要です。総合型地域スポーツクラブの場合、クラブマネジャーという存在が不可欠です。例えばtoto助成金の総合型地域スポーツクラブ助成事業で採択をされようとすると、クラブマネジャーを雇用していることが必須条件となったりします。それだけ一般的に必要不可欠とされている役割です。

その他

 実際には他にも、コーチや事務スタッフなども運営に必要な役割となるのですが、これは実はクラブの形次第ではなくても運営可能な部分だったりします。例えば指導がなくてサークル活動ばかりをやるクラブだったらコーチはいりませんし、会費を集めないようなボランティアクラブの場合や、事務所を持たないクラブの場合は、事務スタッフを置く必要がないこともあります。なので今日は、必要なポジションからはあえて外しておき、ここで紹介するにとどめておこうと思います。


主権者・代表・クラブマネジャーの役割

 というわけで、今日のところは総合型地域スポーツクラブに最低限必要なポジションとして、『主権者』『代表』『クラブマネジャー』の三者とします。
 ではそれぞれの役割はどのようなものか。ここが重要です。ここを曖昧にしたままに組織を作っても、全然機能しなかったりします。結局はそういう曖昧さがクラブの内部崩壊を招いたりするので、きちんと押さえておきましょう。

主権者の役割

 主権者の役割は、クラブの大きな方向性や目指す姿を決めることです。一人一人が「こんなクラブにしたい」とか、「私はこんなことがやりたい」という意思表明を総会で示すことで、それを果たします。

代表の役割

 総会や役員会で選ばれたクラブの代表は、クラブ運営に対して責任を持つのが主な役割です。その責任を果たす為に、実務を行ったり、人を雇って実務を行わせて指示・管理を行ったりします。

クラブマネジャーの役割

 クラブマネジャーは、総会や役員会で決まったことを実行するのが役割となります。役員や代表が兼務することもありますが、クラブマネジャーは基本的には実務の人です。その中身は事業内容などによって大きく異なりますが、総会や役員会で決議された計画を実行に移す人という役割であることは間違いないです。


キーマンはどこ?

 さて、『主権者』『代表』『クラブマネジャー』の三者があるというお話ですが、実際にこの三者がきれいに役割分担をできるかどうかは、また別の話です。僕が知る限り、結局はこの三者のいずれかにキーマンが存在することになり、その人が実質的なリーダーとなって組織を引っ張ることが多いです。つまり、クラブ運営のキーマンはどこにいるかを見極め、設定し、運営組織を作っていくことが重要だと思います。

主権者がキーマンの場合

 総会に絶大な力がある総合型地域スポーツクラブを僕はあまり知らないのですが、総会が最高意思決定機関であることに間違いはないので、総会での議決権を持つ主権者がキーマンとなる場合はもちろんあり得るでしょう。ただ、株式会社の株主総会と違うのは、非営利組織である総合型地域スポーツクラブの場合、絶対に一人一票しか持てないという点ですね。日本における選挙と一緒です。どれだけ貧乏でも、どれだけ資産を持っていても、選挙で投じることができる票はみんな一票です。総合型地域スポーツクラブの総会も同じで、みんな同じ一票しか持っていません。
 なので、主権者の一人がキーマンとなるというのが基本的にはできない構造になっていると思います。その分、主権者一人一人の意識も低くなり、総会の持つ権力が低くなる傾向が総合型地域スポーツクラブにはあると思います。少なくとも僕が知る限りは、そういうクラブが多いです。

 ただ、これは総会の議決権を誰が持っているかによっても大きく異なります。クラブの活動に参加する会員全員が総会における議決権を持つクラブもあれば、一部の創設メンバーだけが持つようなクラブもあります。総会の参加者が限定されればされるほど、主権者がキーマンとなる可能性は高いと言えるでしょう。

 いずれにせよ、もしも主権者がキーマンとなる場合は、総会での意思決定が強いパワーを持つことになりますから、代表やクラブマネジャーの影響力は相対的に低くなり、代表やクラブマネジャーは意思やビジョンを持つことよりも、実務能力を求められることになるでしょう。役割に微妙な調整が入ることになるということです。

代表がキーマンの場合

 代表がキーマンとなるのは、例えばクラブを創設する大きなきっかけとなった個人がいるクラブなどです。そのようなクラブでは、主権者や他の役員などもその仲間として存在していますが、あくまでも協力者的だったりします。そうすると必然的に、主権者(総会)はほぼ追認することが役割となり、形骸化しやすくなります。また、クラブマネジャーは代表の意思を完全に反映したような動き方をすることになるでしょう。代表の状況・スキル次第では、代表がクラブマネジャーを兼務するパターンも多いです。見え方としては、”ワンマン経営”のようになっていくと思います。

クラブマネジャーがキーマンの場合

 本来的にはあり得ないのですが、クラブマネジャーがキーマンとなる場合も実はあります。本来はあり得ないというのも、クラブマネジャーは、総会で決議されたことを、代表を含む役員たちが責任を伴って実行する時に、それを指示を受けて動くようなポジションだからです。ポジションとしては雇われ的なんですね。役員が兼務する場合などを除けば。

 クラブマネジャーがキーマンとなるパターンは、僕が知る限り2つです。
 1つは、総会も役員も形骸化している場合です。これは行政主導だったりで、誤解を恐れずに言うなら、”無理矢理誰かに組織されたクラブ”に怒りやすい現象です。誰かの意思によって設立されていないから、強烈なリーダーがいない。役所の職員などに頼まれて役員になったり、創設メンバーになったりしているから、実際にクラブ運営においても何の影響力も発揮しない。そのようなクラブの場合、実務に当たっているクラブマネジャーがキーマンにならざるを得ないという実態があります。
 もう1つは、シンプルにクラブマネジャーが優秀な場合ですね。これはどんな組織でも起きる現象でしょう。責任とかポジションの上下関係に関係なく、実力のある人が実質的なリーダーとなっていく。これは総合型地域スポーツクラブにおいてもよく起きる現象だと思います。

 クラブマネジャーがキーマンとなる場合には、主権者(総会)は追認が主な役割となりますし、代表においては責任を取ることだけが役割と言えるくらいになります。実務はクラブマネジャーがやりますから、決裁をしたり、せいぜいが相談に乗るくらいのものでしょう。それはもちろん大事な役割ですよね。


それぞれの組織のメリット・デメリット

 全てのものにはメリットとデメリットがあります。総合型地域スポーツクラブには色々な組織のカタチがあるとはいえ、それぞれにはやっぱりメリット・デメリットがあります。最後にそのあたりに触れていきたいと思います。

主権者がキーマン

 主権者がキーマンというのは、総会がしっかり最高意思決定機関として機能するということであり、最も健全な運営組織のカタチと言えると思います。主権者が大きな方向性や絶対に守るべきラインを設定し、その実行に代表が責任を負う。それを実務としてクラブマネジャーが行い、代表がチェックをする。三者が健全に機能しやすいメリットがあると思います。

 デメリットを挙げるとするなら、一般的な民主主義のデメリットがそのまま当てはまるかと思います。例えば主権者に迎合するような方針を取りやすいとか、ですね。それこそ派閥のようなものが出来て票数を争うようになってしまったら、票数を獲得する為の運営方針を立てるような方向性にクラブがいってしまう恐れもあります。
 また、言い方が非常に難しくなってしまいますが、主権者が”無能”な場合、クラブ運営は非常に危うい状態となるでしょう。
 このあたりがデメリット(リスク)として挙げられるかもしれません。

代表がキーマン

 代表がキーマンのクラブのメリットは、意思決定が速く、方針も個人の価値観に由来する可能性が高くなりますから、分かりやすい方向性が打ち出しやすくなることが挙げられます。会社で言えばワンマン社長、政治で言えば独裁政治を思い浮かべていただければメリットが分かりやすいかもしれませんね。
 デメリットもワンマン社長経営、独裁政治と似たようなところが挙げられるでしょう。他の意見が反映されにくかったり、誤った方向性に突っ走ってしまう恐れがあるなどが挙げられます。

クラブマネジャーがキーマン

 クラブマネジャーがキーマンとなるメリットは、何と言っても実行力でしょう。現場に出ているクラブマネジャーがキーマンであり、現場で色々と意思決定をすれば、会員などのニーズと事業のミスマッチを防ぎやすいメリットが高まります。計画を立てる者と実行者の距離は、近ければ近いほど実行精度は高まりますから。
 一方のデメリットは、雇われの立場であるクラブマネジャーがクラブを私物化してしまうようなことが考えられます。例えば形骸化した総会や役員会に対して、実現不可能な計画に基づいて予算請求してしまったり、会員よりも従業員の利益ばかりを追求してしまうリスクが高まります。総会や役員会は、キーマンであるクラブマネジャーにやめられては困りますから、これを断ることができなかったりするので、実は結構危険な状況になり得るんです。実行力との諸刃の剣と言えるでしょう。


 さて、多くの総合型地域スポーツクラブの場合、組織的なビジョンによってキーマンを置くことはなかなかできないと思います。設立の経緯だったり、”たまたま”の結果、どのような人が運営に関わっているかどうかで、自然と「キーマンはこの人だよね」という暗黙知が出来上がっていくと思うんですね。
 なので大事なのは、「キーマンはこの人だから、こういう組織にしよう」と考えることなのだと思います。それこそ人事異動(退職)などがあった時には、キーマンの変更が起こり得ますが、かつてクラブマネジャーがキーマンだったからと言って、新しい体制でもそうしなければならないわけではないということです。そこはまた新しい運営メンバーの中でキーマンを何となく探り、それに合わせて組織づくりを進めていけばいいと思います。


 ということで今日は、『総合型地域スポーツクラブの運営組織』というテーマでお話しました。

お読みいただきありがとうございました!
ではまた!

ここから先は

0字
総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5