見出し画像

ドイツの『幅広いスポーツ』という考え方

 どうも、上杉健太(@kenta_u2)です。”誰もが、いつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる”総合型地域スポーツクラブを広める活動をしています。これまで7年間長野県のクラブをマネジメントしてきて、現在は埼玉県富士見市で立ち上げにチャレンジしています。

 今、『ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか 日体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間』(高松 平藏)という本を読んでいます。先日訪れた恩師の部屋で見かけて、すぐに購入しました。

 というのも先日、音声SNS『clubhouse』内で、ドイツにも住んだことがあるかたとお話をする機会があり、改めてドイツをはじめとしたヨーロッパの地域スポーツクラブ文化を学びたいなと思ったからです。

 こちらの本の中で、ドイツには「幅広いスポーツ」という考え方があると紹介されています。これは「ブライテンシュポルト」という概念だそうです。スポーツに対してこのような捉え方があるからこそ、誰でも気軽にスポーツを楽しむことが当たり前だというんですね。

 「幅広いスポーツ」については、さらにこのように記述されています。

このスポーツ概念は、簡単にいえば、余暇や楽しみ、気晴らし、健康、体力の維持・向上、コミュニケーションといったようなことを主目的にしたものです。
~『ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか 日体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間』より~

 これって、総合型地域スポーツクラブがよく掲げている多志向の中身によく似ているなと思います。

「余暇や楽しみ、気晴らし」=エンジョイ志向
「健康、体力の維持・向上」=健康志向
「コミュニケーション」=コミュニティ志向

 さらに本の一文を引用させていただくと、ドイツではこの概念を使ってスポーツを分類しているのだとか。

「幅広いスポーツ」という概念があるため、たとえばクラブ内でコースを作るときなども誰でもできる「幅広いスポーツとしての体操コース」といったような形で分類できます。

 これは、「ドイツはスポーツの多様性が当たり前のように認められているんだ」と捉えることもできるのですが、一方では、「スタンダードはやっぱり競技志向」と捉えることもできます。
 つまり、あくまでも「スポーツ」というものは競技志向で勝ち負けを競うもので、それを拡大解釈して、余暇や楽しみ、気晴らし、健康、体力の維持・向上、コミュニケーションといったようなことを主目的にしたスポーツも認めるようになったという経緯がうかがえるのです。
 現にドイツでは、トップレベルの競技以外はすべて「幅広いスポーツ」と呼ばれている印象だとか。これを聞いてもやはり、スタンダードは競技志向のスポーツだなと思えます。楽しみのスポーツがスタンダードなのではなくて、競技スポーツがスタンダートという。

 日本とドイツはよく似ているといいますよね。同じ敗戦国であり、同じように勤勉。さらに国土の面積もほぼ同じです。スポーツの捉え方も、似ているのかもしれません。でもたぶん、スポーツの体育の側面に重きを置いて学校で普及させた日本と、学校はあくまでも勉強を教える場としてスポーツは地域で行うことにしたドイツで、多様なスポーツ(幅広いスポーツ)の普及スピードには圧倒的な差があったのだと想像します。

 日本の総合型地域スポーツクラブを普及させる政策は、ドイツをモデルにしているといいます。つまり日本は、ドイツとの差を認めた上で、追随しようとしているということですよね。そう考えると、日本では「スポーツは遊び」という考え方を無理矢理に競技スポーツにも適用することはなくて、競技スポーツ以外のスポーツを”幅広いスポーツ”として日本なりに分類・表現して広めればいいのだと思います。

 今のところ、その分類の仕方は、

①競技志向
②エンジョイ志向
③健康志向
④コミュニティ志向

この4つになっているかなと思います。それは、先にご紹介したドイツの「幅広いスポーツ」の在り方を見ても、妥当な気がします。
 日本では、これらのスポーツの在り方をそれぞれ認めて、ある意味では住み分けていけばいいのだと思います。たぶん、多くの総合型地域スポーツクラブは正しい方向へ向かっています。

 ただし、スポーツを分類するならなおさら大切になってくることがあります。それは、分類したスポーツを行き来できることです。それぞれのスポーツ領域が認め合わずに縦割りになってしまっていたとしたら、競技スポーツができなくなったらスポーツを引退するということになってしまいますし、エンジョイ志向から競技志向への移行も受け入れにくくなってしまいます。
 日本は学校体育・部活動がスポーツの中心となっていたので、どうしても競技スポーツとエンジョイスポーツの垣根が高くなりやすかったのだと思います。でも、学校体育や部活動も変化してきているし、地域スポーツも多様化しています。
 まだまだドイツでいうところの「幅広いスポーツ」の地位は低いというのが現状ではあるかもしれませんが、それでも日本はきっと正しい方向へ進んでいると思います。総合型地域スポーツクラブがその一助になっていることも間違いないと思います。

 日本の総合型地域スポーツクラブの政策は、「量より質」に移行するらしいです。その是非は、正直わかりません。まだまだ量が必要だとも思いますし、いったん質を上げてから再び普及に転じるのもいいのかもしれないなとも思います。
 いずれにせよこのまま、日本なりに”幅広いスポーツ”の考え方を広めていけるように、私も自分ができることをしていきたいと思います。競技スポーツも含めた幅広いスポーツを。


 ということで今回は、ドイツの『幅広いスポーツ』という考え方をご紹介しました。ちなみにこの『ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか』という本、とても面白いです。目次を見ただけで、自分が大切にしてきていることとの共通点がたくさんあって、何だか嬉しくもありました。このまま進んできた道を信じて進もうと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

ここから先は

0字
総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5