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ロジカルシンキングを自分で鍛える9つの習慣

ビジネスのあらゆる領域で効率を圧倒的に高める汎用ツールがロジカルシンキングです。経営コンサルタント=ロジカルシンキングと連想されるように、コンサルタントは必ずロジカルシンキングを習得しています。最近では、コンサルタントだけではなく全てのビジネスパーソンに必要な基礎スキルとして注目されています。

2021年5月4日にTwitterで9つの習慣リストを投稿させて頂き、沢山の方から反響を頂きました。今回、リツイート頂いた方への感謝の気持ちも込めて、”自分で鍛えるロジカルシンキング”をテーマに解説版を作成しました。長文となりますが、1習慣ずつでもお時間がある時に御覧ください。
※本稿では初めてロジカルシンキングに触れる方がいる前提を考慮し、広義のロジカルシンキングをベースにしております。

0.これからロジカルシンキングを学び始める方へ。

ロジカルシンキングは、一部の優秀な人だけが習得している特殊能力ではありません。全くロジカルシンキングのイロハを学んでいなくても誰しもが日常生活で論理的に考えています。ではなぜ、あえてロジカルシンキングを磨く必要があるのでしょうか。個人的な見解は、説得力の高い論理を構築できると実生活や仕事にプラスの影響が出るからだと思っています。例えば、新規事業の提案書を通したり、営業資料や営業トークを磨いたり、はたまた貯金計画を論理的に検討する事かもしれません。

幸いにロジカルシンキングで考えたアウトプットに正解はありません。他人と比較した時に、優れているか優れていないかの評価です。そしてコンサルティングファームに入らずとも自力で鍛えられます。ぜひ、高いロジカルシンキングを身に着け、皆さんのビジネスに活かせられれば幸いです。

1.頭で考えず紙に書く

人間の脳はとても優れていますが、論理立てて考える作業はそれほど得意ではありません。頭の中で次から次へと新しい思考に移ってしまい、最初に何を考えていたのか、どういう問に答えなければならなかったのか分からなくなった経験はありませんか?

ロジカルに整理するために漏れなく重複なく網羅的に思考する(MECE:Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)必要がありますが、残念ながら頭の中だけで可能な人はロジカルシンキング上級者でも少ないはずです。

そこで経営コンサルタントは、紙に書くという作業を必ず行いながら思考を整理します。頭で考えた事を一つずつ紙に書き写していく。そして、描かれた単語や文章から論理的な整合性を俯瞰的に分析する。論理の穴や欠陥を見つけたら思考をやり直す。この一連の作業により論理的な整合性の取れた提案やアイデアを生み出す事ができるのです。本稿の全てのエクササイズは紙に書き出して実践することで、より効果が発揮できます。必ず紙に書き出そう!(iPadの手書きメモでも大丈夫です)

Action:
さあ、考えを全て紙に書き出して、論理の穴をチェックしてみよう。

ここからは余談なのですが、頭の中で考えていても解決策が思い浮かばない、考えが堂々巡りになってしまう、頭の中がごちゃごちゃで気分がスッキリしない状態なら、頭で思いつく事を全て紙に書き出す作業をしてみましょう。人間の頭もパソコンに例えるとメモリー(短期記憶領域)があり、考え事が溜まってくると、新しい情報をメモリーに移せず処理が止まってしまう状態があると思います。外部記憶媒体である紙に書き写すとメモリーから余計なデータが消え、正常に思考が回るようになります。

ワードやメモ帳と比較した紙の利点は、図や矢印、因果関係など手書きで自由に素早く書けることにあります。また、1枚の紙のどの位置に書くのかという位置情報も思考を深めるために利用することができます。(グルーピング/時系列など)

これはコンサルタント時代に大先輩より紹介されたGetting Things Done - ストレスフリーの整理術(デイビッド・アレン著)でも提唱されている方法です。紙に書き写せ!という話も同じ大先輩より教わりました。

もう一冊古い本で中古でしか手に入りませんが、マークリービー著のプライベート・ライティングもオススメです

2.因果関係を考える

ことわざの「風が吹けば桶屋が儲かる」をご存知の方は多いと思います。ことわざ自体は、物事には意外な因果関係があるという意味なのですが、ここでお伝えしたいのはA(原因)だからB(結果)という因果関係を考える重要性です。

ロジカルに相手に説明しようと思うと、答えるべき問いに対して自分の主張が論理的に繋がっていなければいけません。
例えば「AだからB、BだからC、CだからD、・・・結果、Zと言える。」と因果関係を展開するイメージです。桶屋の話のように複数の因果関係のつながりより、シンプルな1対1の因果関係や、3段論法(演繹法)によるアプローチが実際には有名です。

練習方法は簡単、議論をすべき問いに対して自分の主張に因果関係が繋がるように論理展開を紙に書きながら考えましょう。ここでは主張の正しさではなく因果関係が成立しているかが大切です。

例)東京五輪は開催すべきか?(問い)
コロナウィルスの感染者数は減らない

海外から観戦者を受け入れられない

海外分のチケットは払い戻さなければならない

大量のチケットが余る

国内で全てのチケットは売り切れない

開催期間中のコストを賄えない

東京五輪は開催すべきではない。(主張)

Action:
さあ、貴方も因果関係を紙に書きながら主張してみましょう。

3.主語と述語で語る

言語化された論理の整合性を評価するのに、邪魔な存在は副詞や形容詞といった修飾語句です。説明を足そうと程度を表す修飾語句を多用すると論理がぼやけてしまう可能性があります。逆に、主語が抜けたために因果関係が相手に伝わらない場合もあります。
ロジカルシンキングを鍛えるためには、常に主語と述語で論理の関係性を評価していく癖をつけましょう。

例)
赤い服を着てメガネをかけた男の子は、よく学校をサボるのでお母さんに怒られている。
問題点1. 全体の論理に関係ない補足情報が邪魔 
”赤い服を着てメガネをかけた”の部分
問題点2. 1つの主語に対して2つの述語部がある。
男の子は→学校をサボる
男の子は→怒られている

この文章をロジカルに展開するなら以下が考えられるでしょう。
男の子は学校をサボる(原因)

お母さんは男の子を怒る(結果)

Action:
報告書や提案書を書く時の自分の文章を分析してみましょう。
主語と述語、最低限の補足情報で論理が伝わりますか?

余談ですが、相手に伝わりやすい表現は勉強して損はありません。我々は日本語を使いこなせていないものです。もっと日本語を勉強したい方には、本田勝一さんの「日本語の作文技術」がオススメです。

4.個別の議論より一般化する

せっかく提案したアイデアに説得力がない(論理的でない)大きな理由は、個別の議論では成立するが、与えられた問いに対して確からしいとは言えないパターンに陥っているからです。例えば、全ての哺乳類に意識はあるのかという論点に対して、”人間は・・・だから”と1哺乳類に限った議論を展開している状態です。人間に意識がある証拠の具体例から、他の哺乳類にも共通の特徴が観察されないか?と横に広げていく事により、哺乳類一般的に言える論理に繋がります。(正しいかどうかは別として)

論理的な強さ(説得力)は、一般化(抽象化)されても成立すると確からしさが上がりますし、他の事例にも応用がききます。これは帰納法的なアプローチのロジカルシンキングで、AだからB、Cの状態であってもA、だからAはDであるというような展開になります。
他社事例や他業界事例を用いた提案には、帰納法的なアプローチで考えます。しかし、危険なのが過度な一般化であり、本当に当てはまるのか正しいと言い切れないロジックに陥る可能性があります。

ロジカルシンキングと言うと因数分解(後述)のイメージがあり、大きなテーマから分解して議論するイメージがありますが、具体例からの一般化の流れがあることを知りましょう。どちらも大事なテクニックです。

Action:
共通の特徴から一般化したロジックが導き出せないか考えてみよう。

5. ファクトで組み立てる

ロジカルに議論を組み立てる際に、個人の思い込みや見解が入ってしまうとそれは主観的な評価や願望になります。例えば、東京オリンピックをやるべきではないと主張する理由として、”オリンピックはお金の無駄遣い”を入れてしまうとロジカルと言えません。また、”きっとこうであるはず”とか、”こうあるべき”という考えを前提にロジックを組み立てると、議論がすれ違う原因になってしまいます。

一方で、オリンピックに掛かる経費は総額1兆6440億円で組織委が7060億円、都が7170億円、国が2210億円をそれぞれ負担するというデータはファクトです。東京都の令和3年予算規模が約14.9兆円という事実もファクトとなります。こういった事実に基づいた議論を展開すると反論できないですし、説得力が上がります。

議論が水かけ論になったり、相手に納得してもらえない大きな理由は、”本当にそうなの?”と思われているからです。定量的なデータや普遍的な定理・公式は、疑いようのない論拠となりえます。いかにファクトを重ねてロジックを積み上げ、主張をサポートするかが、ロジカル力向上のポイントですね。

Action:
紙に書き出した自分のロジックを眺めて、主観的な主張や思い込みが入っていないかを確認しましょう。そして、思い込みかどうかインターネットで検索してみることです。

6.因数分解でMECEに分ける

漏れなく重複なく物事を整理する発想、MECEはロジカルシンキングにおいて重要なアプローチです。ただし、物事は一つの軸だけで分解できるわけでなく、多用な切り口があります。まず、足し算での要素分解と掛け算での要素分解(因数分解)という分け方で2つに大別できます。そして同じ足し算でも分ける基準を変えることができます。
足し算の例①) 
日本の人口=男性の人口+女性の人口(戸籍上の切り口)
日本の人口=未成年の人口+成年の人口
日本の人口=生産年齢人口+その他の人口
掛け算の例②)
商品Aの売上=商品Aの単価×販売数

足し算/掛け算共により小さな単位に分けることもできます。
足し算の例③)
日本の人口=0才から10歳の人口+11歳から20歳の人口+・・・
掛け算の例④)
商品Aの売上=商品Aの元値×平均割引率×グロス販売数×(1−返品率)

掛け算の例②と④を比べて、一緒じゃないか、こじつけじゃないかと思った人。センスあります。でも、何のために因数分解しているかを考えれば必要性がわかるはずです。②の一般的な売上の式を④では議論可能な指標に因数分解することにより、より詳細な検討が可能となるのです。つまり、分けることに意味はなく、分けた項目を分析して示唆が出せるかが重要になっています。分けるという手段が目的化しないようにしましょう。

足し算は割と簡単ですが、危険なのは漏れやダブリが起きやすいことです。まず因数分解で練習してみましょうとタイトルに書いているのは、漏れが起きづらくイメージもしやすいからです。余談ですが、コンサルタントの面接で用いられるフェルミ推定も概ね因数分解した指標で答えを導きます。

Action:
身近なテーマを意味のある切り口で因数分解しよう

7.論点をぶらさない

論点は生活では馴染みの無い言葉ですが、広くビジネスでは用いられています。但し、定義は難しく正確に理解されていないケースもあると思います。私自身もコンサルティングファームに入ってから、半年位は論点の定義は何かと思い悩みました。Appple標準の辞書に論点とは、”議論の対象となっている問題点。”と書かれているがそれもしっくりこない。

私がしっくりした定義は、”相手の意思判断に影響を及ぼす判断項目である”です。これは「ロジカル・プレゼンテーション」で著者高田貴久氏が定義する論点の解釈で、現場で働いていて一番腹落ちする答えでした。自分の論理において、”相手の意思判断:YesかNoか”を引き出す”判断項目”であるのが論点という理解です。これはロジカルに分解した指標そのものも論点になり得ると理解しています。

ちょっと難しい話になってしまったので、実際の例を上げて考えていきましょう。例えば、問いがiPhone12の売上を2倍にする方法だったとします。まずクリアな論点は、当該商品を売上2倍にすることで誰もが理解できます。売上を因数分解すると、価格×販売台数となります。ここで論点が拡張され、価格を上げるべきか?(意思判断、判断項目は価格)、販売台数を増やすべきか?(意思判断、判断項目は販売台数)の2つになります。さらに価格も端末種別ごとに分解したり、販売台数もエリアや年齢層別に分解可能となりますが、それぞれ論点になり得るということです。そして、初めの問いから分解した各階層に至るまで上位と下位の論点が繋がっている状態が大切になります。

では、論点をぶらさないって何なのか?に戻ります。ロジックツリーや一般化を行う際に意思決定に関係性が低い判断項目を導き出すことが可能(そしてやりがち)ですが、それは狭義の論点ではありません。論理は正解があるようで正解のないフィールドです。良い論理とは、単に論理的整合性が取れているだけでなく、相手の意思決定に繋がる判断項目を与えるものなのです。自分で練習する際は、自分自身が与えられた問いに対して、アクションを取りたいと思える軸(切り口)で論理展開ができているかをセルフチェックしましょう。だから何?と思う状態であれば論点からブレてる可能性が高いです。

Action:
自分の論理が、意思決定に繋がる判断項目になっているかセルフチェックしましょう。

8.論理的欠陥を常に探す

コンサルタント同士の会話は論理的欠陥の見つけ合いになることがあります。特に上司から資料のレビュー(フィードバック)をもらう時は徹底的に論理的欠陥を指摘されます。この論理的欠陥を指摘され続けることによって、人に伝わる論理とは何か?が分かります。

自分自身で学ぶなら、上司と会話している時、他人の成果物(Twitterやブログ)の主張を見て、論理的欠陥がないか徹底的に探しましょう。よく使うキーワードは、So what?(だからなに?)Why so?(どうして)そうなる?論点は何?です。ただし、配偶者(パートナー)はやらない方が良いです。また、指摘を声に出してしまうと喧嘩になるので注意しましょう。

Action:
良く見るブログに行って、以下のチェックポイントで徹底的に論理的欠陥を探そう。
MECEになっていない?
論点がぶれてる?
論理が飛躍している?
主語は何?

9.ロジックツリーを書け

最後にロジックツリーを書けと持ってきた大きな理由があります。この記事の問いは、ロジカルシンキングを自分で鍛えられる方法は何か?であり、1〜8の全ての要素を理解した上でひたすらロジックツリーを紙に書きまくるのが大切だという主張に繋がっています。

日常生活のあらゆる問いや仮説はロジックツリーに落とし込むことが可能です。そして、ロジックツリーに落とし込むことによって新しいアイデアやアクションプランが思いつきます。そして、人に何故その解決策を試したか?をロジックツリーに従って論理的に説明が可能です。

といっても最初はどんな問いがあるの?何からやるべき?と思いますので身近なテーマでロジックツリーが書けそうな問いを以下に紹介したいと思います。

問「(自分が一番良く知っている)コンビニの店舗オーナーになったと仮定し、売上を二倍にする方法を考えよ」

問「自分の収入を2倍にする方法を考えよ」

問「希望する日本国民にワクチン接種を素早く完了する方法を考えよ」

Action:
日常の全ての課題をロジックツリーの形で紙に書いてみよう。

最後に。

いかがでしたでしょうか、ロジカルシンキングは相手に納得させるための技術の一つであるため、独習が難しいと考えられています。ただ、紙に書き、客観的に自分が批判するスタンスを取れば、センスの良いロジックが作れるようになっていきます。ロジカルシンキングを磨き上げれば、自分の伝えたいコトを相手に正確に、納得できる形で提案することができます。結果、仕事はよりストレスなく、円滑に進められるはずです。ロジカルって苦手っと思わず、自分が普段やってる論理的思考を磨き上げればいいんだと考えるようにしましょう!

皆様がロジカルシンキングをもっと楽しく使いこなせることを祈っております!
ぜひ、こちらのNoteの感想をRTで書いて頂けると嬉しいです。
5月14日までにはなりますが、RTのお礼に抽選で3名の方に書籍プレゼントを行っていますのでこの機会をお見逃しなく!

感謝

考える力の大家である、高松さん(元ボストン・コンサルティング・グループ)に本記事をご推薦いただきました😭有難うございます。


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