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7.ベトナムの起業環境

ベトナムの物価は感覚的には日本の1/10程度です。その為、起業に必要な投資も日本での起業と比べると、とても低く抑える事が出来るので、起業の練習にはとても適しています。また、道徳観のレベルが日本人とベトナム人は近いと感じており、信用できるビジネスパートナーも見つけやすいと思います。

しかしながら、起業に必要な周辺サービスがほとんど整備されていないのが実情で、日本の感覚で起業準備すると、必要以上の手間が掛かってしまいます。日本では、資金調達もWebを通じたクラウドファウンディングがありますし、製菓資材や材料調達もECを活用する事が出来ます。分からない事があれば、様々なインターネットサービスを利用して情報収集する事も出来ます。一方、ベトナムでは賃貸物件をインターネットで探しても古い情報が未更新のまま残っており、使い物になりません。また、製菓資材や材料調達も人的ネットワークで探すか、直接マーケットに行って探す必要があります。クッキー用の防湿袋のような特殊資材は、日本で買う方が安かった為、私の会社では日本製を使っています。Lazadaという、楽天のように様々な業者が出店しているオンラインモールがベトナムにもあるのですが、日常品が中心で商用資材はあまり扱いがありません。

ベトナムにおいて、ECの取扱高が一番多いのはFacebookです。Facebook自体はECサイトではないのですが、登録されている友達に対して商品を販売したり、他社製品を販売して手数料をもらうというモデルです。対面販売からECに販売方法は変化しても、人的ネットワークをベースとした信用保証の上でビジネスが成り立っています。私は何度もLazadaを利用していて、今までトラブルは一度も無いのですが、私のスタッフはLazadaは信用出来ないから使わないそうです。また、今回のコロナウイルス騒動で卸せなくなった商品を彼女のFacebookで販売してもらったのですが、初日に半数以上売り切ってしまいました。これも人的ネットワークをベースとした販売力だと思います。

また、ベトナムで人気のある副業は密輸です。さすがに輸入禁止商品を扱うわけではないのですが、ベトナム入国時に税関検査が無い事を利用して、ベトナムで人気のある日本製品を関税を支払わずに持ち込み、Facebookで販売しています。LCCを利用すれば2万円で往復出来ますし、日本に行く友人に買ってきてもらうケースもあります。ベトナム航空は、エコノミーでも40kgまで無料なので、その枠をフルに使えばかなりの商品を持ち込むことが出来ます。私は密輸はしていないのですが、今まで10回以上ベトナムに入国していますが、誰もいない通路を通って出ていくだけですし、一度も声を掛けられた事はありません。(犯罪ですし日本人がやるべきビジネスではないので推奨しません。日本の物価感覚では、たいして儲かりません)

ベトナムでは個人単位のビジネスが多く、起業や会社を運営していく為の周辺サービスが未整備です。資材調達に特化したECサイトのようなビジネス周辺サービスに先行投資するのも一つの戦略ですが、私は「人的ネットワークをベースとした、個人単位のビジネス形態」は、しばらく変わらないと考えています。将来は、個人同士の繋がりである人的ネットワークを、定量化、可視化するようなサービスが出てくると思います。定量化、可視化する事で、人的ネットワークで繋がれていない人の信用度を知る事が出来るので、Lazadaのような不特定多数の業者が参加しているモールでも安心して利用出来るようになります。

ベトナムではIT大手がオンライン決済に参入していますが、決済情報は個人の信用を最も表しているので、この決済事業のデファクトになれた企業が、個人のレーティングビジネスでも覇権を取れると考えています。

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