見出し画像

アメリカの美大で学んだこと02:物の個性を見つけて描く

学生時代に教授から言われた言葉で今も印象に残っているものって結構あります。褒められた言葉よりダメ出しされた時の言葉の方が頭に残ってるんですが、今でも教訓になってるんだなーと思います。

色々言われた学生生活でしたが、言われた回数だとおそらくトップ5に入るものの一つを紹介。

IKEAで買ってきたばっかりなのか?」です。

※英語なので実際言われたのは"Is it straight out from IKEA?"

いきなりなんの話やってなると思うんですが、作品のクリティック中にこれをよく言われました。僕は別に授業前にIKEAに行ってたわけでもないんですが、、、(いや確かに学生時代はIKEAにお世話にはなりましたが、、安いし、、)

実はこれ皮肉たっぷりにダメ出しされてる時に言われる言葉です。

「IKEAで買ってきたばっかりなのか?」の真意とは?

どんな意味で教授はこの言葉を言ってたのかというと、

「お前の絵の家の中めっちゃ新しいけどそんなことある?ないよね?もっと使われた形跡とか、物ぶつけた跡とか、子供がシール貼っちゃった跡とか、経年劣化とかあるはずだよね?物の個性がもっと見えるはずだよね?」です。

例えば家の中のシーンを描いてて、なんか家具や内装が新しく無個性になっちゃう時ありませんか?確かにもっと生活の跡が見えるように描かなきゃなんですが、光とか色とかその他諸々を気にしているうちに塗り進めた結果、家の中の物が新品みたいになっちゃうこと。

こんな絵をアメリカンっぽくちょっと皮肉を混ぜて指摘する時に、「IKEAで買ってきたばっかりなのか?」と言われるんですね。

IKEAで買わないのは意外と難しい

絵の中に登場するものが新品になってしまうことって、デッサンや実物を見ながらのスケッチだとほとんど起きないんです(目の前にあるものが新品でない限り)。ただ、自分でゼロからロケーションやプロップ(物)をデザインしたりすると最初の頃はよくやりがちな気がします。僕はめっちゃやったし、今でもたまにやらかします。

なんでこうなるかと言うと、自分の描いてる物を深く理解できていないからです。もっと詳しくいうと、誰がどういう状況で何年間、どのくらい大事に使ってた物で、その人の手に渡る前にはどういう人が所有しててっていう描こうとしている物の個性の情報が不足してるので、描く前の想像すら十分にできていないことが多いです。

デッサンならば傷も日焼け跡も目の前にありますが、ゼロからデザインするってことは、傷の深さや日焼け跡の形さえも含めた物の個性をデザインするってことなんです。

IKEAで買わないためには

じゃあどうすればIKEAで買ったと言われないような家具や部屋が描けるかというと、描き始める前にどういう生活の跡ができるのか想像する→下書き(線画)の段階で想像したものを描き込む、ということを怠けずにやるしかないです。

言葉で言うとそんなに難しくないんですが、怠けずにっていうのが肝心です。この作業って「どうせあとで塗る時に描けるから今はそんな描き込まなくていいや」って省きがちな気がします。ただ、塗ってる間は他にも色んなことを気にしなきゃいけないので気付い頃には忘れちゃうんですよね。結果、なんか新品の(教授が言うところのIKEAで買ったばかりの)家具が揃った無個性な部屋ができる。

下書き(線画)の段階で物の個性を描くのは、いわば塗る時に忘れないようにするリマインダーです。完璧にディテールを描けって話ではないんです。最初は難しいですが意識してると少しずつ省略しながらうまく自分にリマインドする方法が見つかるかと思います。大事なのは最初に怠けないことかと(自分に言い聞かす、、)。

実例

最後に実例です。

下のデザインは僕が学生の時にデザインした鳥の巣箱です。与えられた設定と物の個性を出すために気をつけたポイントを下に書いておきます。多分これが初めて「IKEAで買ってきたばっかりなのか?」と言われなかった作品だったかと。何かの参考になれば嬉しいです。

画像1

与えられた設定
●所有者:占い師のお婆さん(70才)、町外れに住んでいる、少し変わり者
●巣箱は手作りでなければならない
●お婆さんはcarriage house(馬車小屋を改造した家)に住んでいる

気にしたポイント
●保管場所は?(室外、二階のベランダ)
→劣化の仕方に関わってくる
●作られてからの何年?(2年前に作ってから少しずつ作り足している)
→こちらも劣化具合に関わる
●お婆さんは工作得意?(不器用ではないが、特に経験もない)
→そもそもの巣箱の出来の良さに関わってくる
●なぜ巣箱を手作りしたんだろう?(占い師で町外れに住んでいて少し孤独、癒しを求めて?)
→どれくらい愛情を持って作ったか、その他何かしらのヒントになるかも
●素材の調達方法は?(貰ってくるor拾ってくる、買ってはいない)
→これによって見た目が変わってくる、おばあさんの性格によっては特殊な巣箱にもなり得る
●住んでいる地域の気候は?(カリフォルニアを想定)
→劣化具合、どんな鳥を入れるための巣箱かが変わってくる




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?