菊井悠介選手の凄み
今シーズンの山雅の新卒加入選手で二ノ宮選手は身長、住田選手は魔法の左足、薄井選手はコーチングなどの特徴があり、各メディアで取り上げられています。
その3人とは対照的に個人的な特集がされず、特徴が見えないのが菊井悠介選手です。
加入記者会見でも二ノ宮選手、住田選手、薄井選手は初々しく情熱的な性格とするならば、菊井選手は冷静で真逆のように見えます。
個人的に大学サッカーが好きで週末に何試合か見るようにしていて、今年は主に法政大学を追っていました。12月に流通経済大学から薄井選手と菊井選手の加入が決まったことから改めて流経の試合を見たところ菊井選手の”良さ”に驚かされました。
その”良さ”が多く出た関東大学サッカーリーグ 第20節から映像を引用し、彼のプレーに迫っていきたいと思います。
(タイム部分をクリックすると、YouTubeで実際の映像を確認することが出来ます)
①菊井選手の立ち位置から生まれたチャンス
前半16:41~
中央レーンで7菊池選手、右大外レーンで5宮本選手が裏に要求する動きを見せます。(黄色い〇)
青い〇で囲まれた15菊井選手はこの時点では左寄りにポジションを取り、慶應の右CBを立ち位置で引っ張ることで中央を空けています。
7菊池選手が裏のスペースへ突破をしようとする動きを見せますがボールが出てこず、一度CBからやり直しします。
7菊池選手が3佐々木選手にボールを戻し、右SBの4家泉選手にボールが渡ります。
この動作で慶應のラインが上がり、流経の前線の選手もラインに合わせて自陣方向へ下がります。青い〇で囲われた15菊井選手もボールサイドに顔を出そうと下がろうとしますが首を振り、7菊池選手へのパスコースがあることを確認してボランチの後ろで停止。
相手の右CBを9永井選手、中央CBを10満田選手が固定し、慶應のDFラインが動けない状況。
更に15菊井選手がボランチの背後で停止したことで、ボランチのプレスバックが届かない状況で4家泉選手→9永井選手と繋ぎ、フリックから背後へ抜け出し。
そして、小さなモーションからスピードのあるグラウンダーのクロスを入れます。
この試合で流経全体として人の立ち位置でスペースを作り、そこにCH、SH、SBの選手が飛び込むことを多くトライしています。菊井選手は比較的自由にポジションを変え、前線にスペースやパスコースを作る働きをしています。
1トップ気味だから最終ラインに張り付くのではなく、周りの状況を見ながら偽9番的にポジションを下げたことで生まれたチャンスでした。
②パスコースを作る献身性
前半31:40~
相手陣深くでスローインを得たものの、クロスを入れられず最後尾からやり直し。ボール周辺は4対3で流経が数的優位の状況ではありますが、前の近い2人に出せば相手の2シャドーに捕まえられそうなので、選択肢としては前線へのロングボールorCB間に限られてしまっています。
出来れば前線の3枚を一気に剥がせる選択肢が欲しい所です。
そこで登場するのが15菊井選手です。
3佐々木選手の所でボールが詰まることを察知すると、画面外からダッシュで現れ、相手2シャドーの中間、シャドーとボランチのライン間まで下がってきます。
結果的に左CB→右CBで右サイドから崩しにかかるのですが、地味に大事な動きをしてくれています。
前半35:10~
FKからのロングボールを回収し、右サイドを2人で崩そうとしますがキャンセルし一度戻します。
矢印方向にボールが戻る時点で、15菊井選手は一度首を振り、BOX内の状況を見ています。3バックがマンマークでついて、中央にいる13熊澤選手は自分寄りにいる。
そこで相手の右CBを自分に引き付けながら自陣方向へ。
7菊池選手は15菊井選手が戻ったことで出来たスペースへワンタッチでボールを配給。スペースに13熊澤選手が飛び込みチャンスを演出しました。
③様々な武器
後半43:50~
GKからのロングボールを収め、15菊井選手がボールを持っています。
上がってきた6安居選手にボール預け、自身は中央レーンに入っていきます。
中央レーンに移動しながらDFラインに大きなスペースがあることを確認。
5宮本選手に入る手前で、菊井選手は要求しながら一気に加速。裏抜けしますが、滞空時間が長いボールだった為に相手のマークが間に合い、シュートには至りませんでした。
チャンスメイクだけではなく、ゴールに直結する動きも持っています。
また、1stキッカーである7菊池選手がベンチに下がってからはCKのキッカーを担当。後半39:25、41:55には速く鋭いけど合わせやすそうなボールを蹴っていました。
クロッサー、裏抜け、キッカーなど持っている武器に多彩さを感じます。
まとめ
これまでの山雅でハードワークというワードで連想するのが田中隼磨選手、玉林睦実選手、船山貴之選手、岩上祐三選手などです。
これらの選手は守備に”走っている”。或いはボール、ゴールに対して”走っている”ことが顕著に見えて「山雅スタイル」に大きく当てはまる選手でした。
しかし、菊井選手はこれらの選手とは違ったハードワークが出来る選手だと個人的に思います。
スペースを空ける為の細かい移動、前選択を作るためのポジショニング。そのポジショニングが1人で相手2人を困らせることができる。
ハードワークというと走力やストレングスなど身体的なことばかりにフォーカスされがちですが、周囲の状況を常に確認し、必要な位置に移動したりと身体的にも頭脳的にもハードワークしている選手だと思います。
また、小さなモーションからの高速クロスやCK時のドライブ系の速いボールはかなり魅力的です。
昨季終盤。名波監督は試合後コメントで「ゴール前で温度が上がりすぎる」と表現していました。チャンスになると焦りから余計なタッチが増えたり、力んでしまったり。ゴール前での冷静さが足りないシーズンでした。
菊井選手のプレーを見ていると、いい意味で常に一定で、何処か冷めていて、闘将といわれる様な選手とは程遠いけどプレーはしっかりしています。
前年までの形を踏襲するのであれば河合選手、セルジーニョ選手、小手川選手が去ってしまいOHやSTの位置は手薄です。そこで前線のフリーマンとして効果的に動き回れる菊井選手は重宝されそうな感じはします。下がりすぎず、持ちすぎず、シンプルに、継続的にプレーできる。2,3年後、恩師である曺監督のもとへ行ってしまわないか心配になるくらいいい選手だと個人的に思いました。
是非、フルで菊井選手の活躍を見てみてください。
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