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チームラボ どんぐりの森のいたずら

 チームラボ『どんぐりの森の呼応する生命』についてお話ししましょう。郊外のベッドタウンにおいてチームラボはどんな世界を見せてくれるのでしょうか?

『自立しつつも呼応する生命-液化された光の色』の昼間の様子です。無機質なovoid(卵形体)と住宅街の対比は不気味さを感じさせます。唯一の生命である木々の美しさが際立つことで、どこか終末感が漂う風景です。

昼間から一転。『呼応する木々』と共鳴するovoidは森の生態系の一部となることで、『どんぐりの森』は姿を現します。おや? 街灯も点きました。人類はまだ滅んでいないようです。

みなさんはチームラボの展示を直接ご覧になったことはありますか? 彼らは光や音を自然や展示物にあてることで、ものごとの隠された側面を浮かび上がらせています。ですが、それと同時にヒトの認知能力の限界と、それを補うための情報機器による支援を積極的に取り込むことで、来場者にとって予期せぬ体験を与えているのが彼らのもう一つの側面です。

例えば、この発光しているovoid。揺らすと、色の変化する光を放ちながら美しい音を森全体に響かせ、それに反応してライトアップされた木々も色を変化させます。色づき、発光することで立体感を出しているように感じます。ですが、これはレンズ越しで見ることで、はじめて色彩や色調と立体感の目視が可能になります。実際にヒトの目で発光するovoidを見ると、光の強さと変化の度合いに目が追いつかず、むしろ立体感は感じにくくなります。薄暗闇に細く伸びた一本路に突如現れるovoidは幻想的な光景をヒトの目に見せてくれるわけです。

展示の後半部には、かなり斜度のついた急坂が出てきます。昼間であれば坂を目視してから進むことになるので、心の準備ができます。しかし夜は一変、薄暗くなり足元の変化は勿論、数歩先の斜度の変化にも気づきません。そして、視覚を撹乱させる光を放つovoidを揺らし進むヒトの目には、それは幻想の森の『どんぐり』にしか映りません。この坂はovoidの揺れをつくる為の傾斜なのですが、『どんぐり』の姿を現わす夜においては、ヒトは認知能力の低さを思い知る目に遭うわけです。
ここから得る教訓は、ヒトが普段視覚と思っている領域は、視覚と触覚の協働で成立しているという現実を知ることです。つまり、視覚は色の認知は可能ですが、距離感や奥行きといった立体感の認知には触覚の経験が関わってくるわけです。それを視覚による目視のみに頼ろうとすれば『ズレ』が生じます。『どんぐり』に気を取られてばかりいると坂の傾斜を見誤って混乱が起きるのです。

どうでしょう、お解りいただけたでしょうか?
え? そんなものに騙される訳ない?
では、この真っ暗で真っ平らな東所沢のベッドタウンを5キロ程ナイトランしてきなさい。コンビニも沢山あって便利らしいですから、ポップでカジュアルなオシャレなドリンクでも買えば良いんじゃないでしょうか? その足でどんぐりの森に向かいリア充を楽しむと良いでしょう。坂で脚が笑うこと間違いなし。

まったく、残念だがヒトというのは、情報機器なしでは自分達の限界も解らなくなってしまったのだな。
そろそろ頃合いだろう、動き出すとするか。
夜は『私達の時間だ!』


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