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光速の壁は超えられるか

K.S.R.C ResearchReport FileNo.200028
オリジナル公開日 2000/4/30 報告
  報告者:KS

 もうすぐ21世紀である。
21世紀と言えば、かつてSFでは宇宙旅行が当たり前のように語られていた時代である。
しかし、宇宙は旅行をするには広い。とてつもなく広い。広すぎるのだ。

 人類史上最も速いと言われている乗り物は、あのアポロ11号を載せて地球の重力圏を脱出したロケットであるサターンV型ロケットである。このサターンV型ロケットの最高速度は時速38000キロメートルである。
このスピードで地球に一番近い天体である月に行くとしたらどのくらいかかるであろうか。
実は、10時間ほどで行くことが出来るのである。太陽系の惑星で最も遠い冥王星には1年9ヶ月で行くことが出来る計算になるのだ。
これだけ考えると決して悪くないスピードであろう。

 しかし、これが他の恒星系まで行くことを考えると事情が違ってくる。

 太陽から最も近い恒星はケンタウルス座のαケンタウリである。その距離は4.4光年、41兆キロメートルと少しに相当する。分かり易く言えば、月までを1メートルとしたとき、αケンタウリまでは10万キロメートルになる。これは地球を2周半する距離である。

 では、サターンV型ロケットでαケンタウリまで行こうとしたらどれくらいの時間がかかるであろうか。
答えは、12万年である。もちろん片道でだ。
ついでに言えば、隣の銀河系であるアンドロメダ銀河までは220万光年の距離があり、サターンVで行こうとした場合、7116万年かかる計算になるのだ。
 これでは、いくら寿命があっても足りない。これを打開するには、光速を超えるしかないのだ。

 では実際に光速を超えることはできるのであろうか。

 有名な相対性理論に登場願おう。
 相対性理論からは様々なことが導き出されるが、「速度が速くなればなるほどその物質の質量も重くなる」ということも導かれるのだ。これは、どんな手段を使っても速度が光速に近づくほど重くなり、光速では質量が無限大になってしまうことを表しているのだ。

 これでは、どんなに頑張っても光速を超えることが出来ない。
 しかし、相対性理論は光速を超える可能性を否定したわけではないのだ。

 確かに、物質は光速に近づくほど質量が重くなるが、もともと質量のない物質であれば質量を増やすことなく光速に近づき、また、超えることも可能なのである。
 たとえば、レーザー光線を十分離れた距離にある壁に対して当てながら左右に振ったとしよう。そのときに、壁に映ったレーザー光線はどのくらいの速度で移動するであろうか。壁までの距離、左右への振る速度によって違いはあるものの、壁に映ったレーザー光線は光速を超えることが出来るのである。

 しかし、質量を持たないモノがいくら光速を超えたとしても、それでは質量のある我々を乗せて宇宙旅行に行くことが出来ない。
やはり、光速を超える乗り物は実現できないのであろうか。

それを可能にするのは、超空間の利用である。

 超空間は亜空間とも言われる我々の4次元時空とは異なった空間のことである。
通常、4次元時空と言った場合、3次元空間に時間軸を加えるが、狭義の4次元空間は3次元空間に加える4番目の軸は物理的にも数学的にも異なった軸を加えた物である。
したがって、ここでは4次元時空での物理法則は成立しない。もちろん、相対性理論もその例外ではない。この超空間自体を光速以上で動かすことは、相対性理論にも他の物理法則にも反することではないのだ。

 そう、宇宙船を超空間で包み込み、そのまま光速以上で移動すればいいのである。 
宇宙船自体は超空間の中に停止した状態で、超空間そのものが光速以上になるのである。 


<解説>
相対性理論
 相対性理論には「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」がある。

1.特殊相対性理論
特殊相対性理論は以下の2つに基礎をおいている。
①相対性原理
 宇宙には慣性系(基準系)が平等に存在し、それらの系の中ではすべて、同じ物理法則が成り立つ。
②光速不変の原理
 すべての慣性系で、光の速度は同じ値となる。

この2点から導き出させることを簡単に言えば、
・運動しているモノの時間はゆっくり進む
・速度が増せば重くなる
と言うことになる。

2.一般相対性理論
特殊相対性理論が互いに等速度で運動する慣性系について成り立つ理論だったのに対し、一般相対性理論は加速度の存在する座標系での理論である。
 最も身近な加速度は重力である。重力を加速度に置き換えることを『等価原理』という。
そして、一般相対性理論が言っていることを簡単に言ってしまえば、
・光は重力場で曲がる
・光は無重量状態で直進する
このことは、『重力場では時間は遅れる』ことを表しているのだ。

4次元時空
 我々の宇宙は、縦・横・高さの3次元空間に時間軸を加えた世界、すなわち4次元時空と呼ばれている。
しかし、現代の素粒子論的宇宙論によれば、宇宙が誕生した当時は、10次元時空だったのだ。それも単なる数学的な虚構ではなく、物理的な実像だったのである。
 もっとも、宇宙が10次元だったのは宇宙誕生の直後だけで、すぐに4次元と6次元に分離してしまったと考えられている。そして4次元はそのまま膨張して現在の4次元膨張宇宙になり、6次元空間は膨張せずに素粒子サイズの閉鎖空間になったのである。
 そのため現在では、それらの閉鎖空間、すなわち6次元空間は全く認識できないのである。

宇宙船を超空間で包み込み光速を超える
 スタートレックでのワープ理論は、まさにそうである。


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