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インターネットにはまるわけ

K.S.R.C ResearchReport FileNo.010024
オリジナル公開日 1999/12/30 報告
  報告者:KS

 インターネットというとまず何を思い浮かべるであろうか?
ホームページ閲覧、チャット、掲示板、eメール等いろいろなサービスがインターネット上に存在している。
(2022/6/4筆者注:1999年当時、動画サイトはまだなかった)

Windows95の普及あたりから着実にその利用者を増加させてきたインターネットだが、その魅力は何であろう。

 インターネットのネットワーク網は世界中に蜘蛛の巣のように張り巡らされており、そこからWorldWideWebという呼び名も付いている。

この世界中に張り巡らされているネットワーク網というのが第一のキーポイントになるのだ。

 インターネットに接続できる環境さえあれば、その場所にいながら世界中どこにでも行くことが出来るのである。また、自分の望む情報も検索することが出来るのだ。
 これは、非常に魅力的だ。インターネットが普及する前は、何か情報を得ようとするならば、自分で図書館や書店などに出向き、膨大な資料の中から情報を選択しなければならなかった。また、趣味・嗜好によっては本として出版されていないことも間々あった。が、インターネットならば誰かしらが、そういった情報をホームページという形で公開してくれている。

実は、この個人で情報を公開するという点が第二のキーポイントなのだ。

 近代社会において、今までさまざまなメディアが登場してきた。
活字によるメディアである新聞・雑誌、音声によるメディアであるラジオ、映像によるメディアである映画・TV等がその代表であろう。
が、これらメディア(マスメディア)の情報発信者はどうしても個人ではなく企業や団体になりがちであった。特に、不特定多数にその情報を発信するメディアほどその傾向は強くなっているのだ。
 ある意味それは仕方ないことであった。不特定多数に情報を発信すると言うことは、文書であれば大量に印刷しなくてはならないし、TV、ラジオであればその放送設備を整える必要があるからだ。特に後者のような放送設備など個人ではどうしようもないことは明白である。
 ところが、インターネットでは不特定多数への情報公開が非常に安価で誰にでも出来るのだ。このことは、今までのメディアが為し得なかった、真の双方向メディアの誕生を意味している。

 また、インターネットでの情報公開は、もう一つ今までのメディアと決定的に違う点があるのだ。

それは、情報の正確性を伴わない点である。これは今までの常識から考えると、不特定多数へ発信するメディアとしては不適切と言うことになるのだが、この情報の曖昧さもまたインターネットの魅力の一つなのである。

 インターネットはその発展過程から文字主体のメディアである。故に、情報発信者を知る手がかりはその文章しかない。これは声や顔を見ることが出来る他のメディアとの決定的な違いである。
情報の曖昧さはここに起因しているのだが、さらにそれを助長するのがハンドルネームなのである。

これが第三のキーポイントであり、かつ、最大のポイントなのである。

 顔が見えない、声が聞こえない、年齢・性別が分からないとなれば誰もが今までの自分以外の存在に簡単になることが出来るのである。が、本来これはインターネットから発生したことではない。文章を書く場合等に用いるペンネームがハンドルネームのルーツであることは言うまでもないだろう。
 自分以外の誰かになるという要求は犯罪においてもしばしば見受けられる。
今田勇子」や「酒鬼薔薇」、最近では「てるくはのる」等がその筆頭にあげられる。彼らは、文字文化の象徴であるマンガからその影響を受け、偽名を使って自分以外になろうとした。
(2022/6/4筆者注:1990年代に世間を騒がせた児童に対する殺害事件ではこういったハンドルネームのような犯罪者名での犯行声明が行われる事件が多かった)

犯罪者の異常心理はここでは触れないが、こういった自分以外への、ある種の変身願望を簡単に叶えてくれるのがインターネットなのである。今や、文字文化の象徴はマンガからインターネットへと移っている。インターネットで自分以外の人物になろうとする人の数は、犯罪者のそれとは比較にならない事は明白である。

 インターネット上でハンドルネームを使用している人の99%は、本来の自分とは異なった性格を持った人物になっている。
実際は内向的な性格の人がインターネット上では社交的になってみたり、育児に疲れた主婦が実際にはしていないが幼児虐待をしたかのような日記を載せてみたりと様々な人達が登場している。
 このように誰しもが持っている変身願望をいとも簡単に叶えてくれるのがハンドルネームなのである。

 
以上3つのポイントを挙げてきたが、これらのポイントを併せ持ったのが、チャットであり掲示板なのである。
 遠く離れた場所にいるもの同士が、様々な情報を、ハンドルネームで呼び合い会話するのである。このチャットや掲示板の魅力がインターネットにはまる最大の吸引力であろう。
顔の見えないもの同士ではあるが同じ趣味を持ったもの同士、あるいは遠く離れた場所に暮らしている人との会話、自分の知らない情報の交換。これらは今までのメディアでは到底不可能な事であった。
それが、インターネットを使えば簡単に出来てしまうのだ。

 以上のようにインターネットに流れる情報は正確性を伴わない。これらの情報は一種のギャグとして受け止める態度が必要である。他のメディアから流される情報は常に真実を追い求めてきていたため、それに慣れている我々は、時として全ての情報を鵜呑みにしがちである。
 が、インターネットではその匿名性故、どんな情報も流すことが出来てしまうのだ。しかも意図的にである。したがって、これからの我々には正確な情報を見極める力が求められていくことになるのである。



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