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Croz 80 years old / Journey of David Crosby

David Crosby御大が8/14で80歳になったそう。

Happy Birthday Croz!

昨日、InterFMのBarakan Beat!に「Rodriguez For A Night」をリクエストしたら採用された。この曲はDavid Crosbyの2018年以来の新譜「For Free」(2021.7/23発売)に収録されていて、Donald Fagenとの共作曲として話題にもなっている。共作と言ってもメロディではなく作詞の部分でコラボしたらしい。

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Crosbyと言えば「5 Albums I Can’t Live Without」というテーマで自分のベスト5を回答していて、1位 Steely Dan「Aja」、2位 Steely Dan「Gaucho」というくらいのSteely Danフリーク。2017年発売の前々作「Sky Trails」でも「She's got be somewhere」というSteely Dan風の曲を発表していた。この曲は狙い過ぎで少し上滑りしている印象で成功しているとは言い難かった。

この「Rodriguez For A Night」はさらに進化したCrosby風のSteely Danサウンドの再現となった。Donald本人に作詞を依頼した手前、生半可なサウンドにする訳にはいかず本人も相当な気合が入っていたと推測する。Steely Dan研究の成果が結実した本家顔負けというより見事に自分のものにしたサウンドを展開している。

まず人選が凄い。
GuitarはDean Parks。名うてのセッションマンを集めたSteely Dan人脈の中でもPretzel Logic、Katy Lied、 The Royal Scam、Aja、Two Against Natureと5作に参加している強者である。聴いただけでAja辺りのSteely Danサウンドが蘇る強烈なギターソロは懐かしくもまた嬉しい。
Drumsはチック・コリア・エレクトリック・バンドにも参加していたJazz/Fusionの実力派のGary Novak。Bassはアル・ジャロウ、チャカ・カーンとの仕事で知られるAndrew FordとリズムセクションはAja辺りのJazz/Fusion系のサウンドを堅実に再現。

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そして自分的に嬉しいのは前作「Here if you listen」からのコラボレーターである Becca StevensとMichelle WillisのBack up Vocalsだ。この2人はCrosbyのプロジェクト「Light House Band」のメンバーでもあり(もう1人はMichael League)
ツアーにも同行した気心の知れた連中である。コロナのためリモートで録音された同曲だが、コーラス部分はNYのスタジオで録音されたようである。Snarky PuppyのGround upレーベルから作品をリリースする2人のコーラスワークはSteely Danにはなかった透明感を吹き込んでくれている。

この曲とアルバム全体のプロデューサーでもあるJames Raymondによるデジタルアレンジメントの過程をレクチュアするYou Tube映像も興味深い。リモートワークでSteely Danにチャレンジした経過がわかりやすい。

このJames Raymondという人物はCrosbyの遺伝子上の息子という複雑な立場。若き日にゆきずりの恋愛の中で身篭った女性が産み落としていた子供が養子としてRaymond家に引き取られたのが彼。大人になってからCrosbyの存在を知り、突然彼を訪ねてきたという。
Crosbyの遺伝子を継ぐだけあり音楽の才能に恵まれ、会った時は既にジャズのミュージシャンだったらしい。

現在のCrosbyは息子のRaymondとSnarky PuppyのMichael Leagueをプロデューサーとして起用。テレコでそれぞれをプロデューサーとして起用した作品を発表している。
「Croz」(2014/James Raymond)
「Lighthouse」(2016/Michael League)
「Sky Trails」(2017/James Raymond)
「Here If You Listen」(2018/Michael League)
「For Free」(2021/James Raymond)
豪華ゲストを起用して厚みのある音を展開するJames RaymondはAOR風なサウンドで、Snarky Puppyを率いるMichael Leagueは対照的にアコースティックな音作りであくまでシンプルを貫く。

このJames Raymondが率いるプロジェクト「Sky Trailバンド」のステージは一度、2018年にニュージャージー州で観ている。CSNやCSN&Yのヒット曲満載のステージは見所沢山だった。
Michael League率いる「Light House Band」はBecca Stevens、Michelle WillisにCrosbyの4人編成でアコースティックのドラムレス編成。こちらのステージは未見なので是非観てみたい。

話が脱線した。
CSN&Yの『デジャ・ヴ』(Déjà Vu)のタイトル曲「Déjà Vu」を聴くと1970年の時点でCrosbyがジャズ的なコード進行とハーモニーに既に精通していたことがわかる。さらに1970年には彼の「Guinnevere」(69年Crosby, Stills & Nash収録)がMiles Davisによりカバーされる。Steely Danがジャズに開眼した「Aja」が77年だから7年前にロック、フォークとジャズの融合に成功したCrosbyはPioneerであった。さらにジャズとフォークの融合の中心人物のJoni Mitchellの1968年のデビュー作のプロデューサーはCrosbyであり、2人は変則チューニングの発明者として知られる。その後1976年にJoniはJaco Pastoriusを起用しジャズの世界に踏み込んだ名作「Hejira」を発表している。
因みにCrosbyの5 Albumsの1-2位はSteely Danだが3位はJoniの「Blue」で4位はWeather Reportの「Heavy Weather」だから笑ってしまう。

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そう考えるとJazzを熟知したCrosbyにとってSteely Dan的な音作りなどお手の物で、彼にとっては新譜でのチャレンジは原点回帰に過ぎなかったのか。
近年ではJazz FunkバンドのSnarky Puppyとの共演など、JazzとFolkの世界を自由に行き来する旅人である。
2015年に観たCSNの来日ステージ。そこでのCrosbyの雄叫びのようなボーカルに圧倒され、90年代に観たドラッグでヨレヨレになった彼がいつの間にこんなパワフルになったのかと仰天したものだった。
そして翌2016年にはSnarky Puppyの「Family Dinner – Volume 2」にゲスト参加することになる。(Snarky Puppy、Becca Stevens、Michelle Willis、Charlie Hunter、Salif Keita、Jacob Collier、Louis Cole 等が参加)
この参加に刺激を受けたのか、Snarky Puppyのジャズ人脈の中で新たな活動を見出していく。

そして、新譜の「For Free」ではタイトル曲として70年代に刺激しあった盟友Joni Mitchellの同名曲をカバーしている。

80歳にして自分のルーツを掘り起こして再見したDavid Crosby。
彼の自分探しの旅はまだまだこれからも続くだろう。

1941      生誕
1969      アルバム「CSN」発売(Guinnevere収録)
1970      GuinnevereをMiles Davisがカバー/アルバム「Déjà Vu」発売
1977      (アルバムAja/Steely Dan)
2014      アルバム「Croz」発売(Wynton Marsalis 参加)
2016      アルバム「Family Dinner – Volume 2」(Snarky Puppy)参加
              アルバム「Lighthouse」(Michael Leagueプロデュース/Becca      
              Stevens、Bill Laurance、Cory Henry参加)
2017      アルバム「Regina」(Becca Stevens)参加
              アルバム「Sky Trails」発売(Becca Stevens、Jacob Collier参加)
2018      アルバム「Here If You Listen」発売(Michael Leagueプロデュー      
               ス/Becca Stevens、Michelle Willis、Bill Laurance参加)
2020      GuinnevereをCHRISTIAN SCOTTがカバー
               アルバム「Wonderbloom」(Becca Stevens) 参加
2021      アルバム「For Free」発売(Rodriguez For A Night収録)



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