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狂言発表会で初めての体験でござる

和ろうてござるか~


狂言の和らいは実に氣もちの好いものでござる
突然人前で披露すれば周りは潮が引くように静かになるかもしれませぬが

さて去る九月十日
金剛能楽堂(京都市上京区烏丸通中立売上ル)にて
茂山千五郎家社中会 かぶら会に混ぜてもらい
狂言を披露させてもらってござる

このブログでは狂言好きのわたくしけんすけ福のかみが
もっとも狂言らしい登場人物“太郎冠者”となって
狂言へとご案内するべく描いてござる
なにとぞ和らいだお心もちにて読うでくださりまりませ

狂言案内草紙「南無三寶」より一部改

わたくしは狂言『舎弟』の教え手と申す役でござった

まずシテ(主役)の男が兄から「しゃてい」と呼ばれるがこのしゃていの意味を知らぬによって物知りな人、教え手より教えてもらおうと訪ねまする
そこで教え手(わたくし)はいい歳をして舎弟の意味を知らぬ弟にいたずら心が湧き嘘を教え、兄とケンカをさせようと目論むのでござる
教え手から舎弟とは人の物を勝手に持って帰ることと習った弟は
急いで兄の元へ、兄が本当を教えるも聞かず、兄の方こそ散々舎弟したと暴露し怒った兄は…さてどうなることか

狂言舎弟(茂山千五郎家)筆者による粗筋

三人出てくる割りには短めでとても判りやすい展開かと存じまする
舎弟の意味を知らぬ弟も初めから兄に訊けば揉めぬのでござろうが
あえてややこしくする教え手と云う役は狂言という芝居を成立するのに
大切な役なのでござる

当日の出番は十四分ほどの狂言のうち前半の五分ほど
弟に教え終えたらさっさと橋掛かりを渡って退出するのでござる

つまり弟が急いで兄の元へ向かう場面に転換するや
わたくしは舞台にいても居ないものとなるのでござる

これも狂言の”みなし”のワザでござる

ここでかつてなかったことを経験してござる

橋掛かりを越えた先には五色の幕がござって、
その向こうに鏡の間がござる
役を終えた演者は五色の幕が挙がった下をくぐり
鏡の間を抜けて楽屋へ戻るのでござるが

幕が近くなっても一向に挙がる気配がござらぬ

しかたなく五色の幕の左の隙間から鏡の間へ入ってござる👇

左から右上は今年の幕入り、左下は去年の幕入り

五色の幕は左右に幕の下の端につながった棒を持った方がござって
持ち上げるのでござるが
その幕の棒を持つ人どころか、鏡の間にはだれもおらず
そのまま楽屋へと戻ってござる

途中で出る場合はこのようなこともあるものかと思うておりましたれば

楽屋で装束を取ってもらうとて(自分で脱いではならぬのでござる)
そこにおられた玄人衆に声を掛けますれば
真実驚いたおおきな声で、「あ!」と云う反応に
これは狂言の途中でわたくしが退出することを忘れられていたに違いなかろうと感じたのでござる

自身台詞や所作を失念することは多々ござるが
このような予想外の展開はそうは起きるものではないと存ずるほどに
ことのほか貴重な経験であったと思うてござる

今宵はここまででござる
またお目に掛かれましたら嬉しゅうござる🤗

この狂言noteはけんすけ福のかみが
大蔵流茂山千五郎家 島田洋海社中にて
狂言を学んだことをモトに
実際に狂言を(できれば生で)観て
和らいでもらいたいと願うて描いてござる🖋

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