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クレイマンvsライト裁判最終判断。

2023年10月27日 宍戸健

2018年2月からもう5年以上争われている、クレイグ博士の友人、故ディビット・クレイマンの相続人(原告)とクレイグ博士(被告)で争われていた民事訴訟について一応の決着がついたと思われる。

26日にアップロードされたその判決の内容(原文)の結論(主文。PER CURIAM)について完訳した。

ココから。

「WILSON、ROSENBAUM、LUCK各列席裁判官による判断。

結論(PER CURIAM)

本訴訟は、暗号通貨ビットコインの起源に起因する所有権紛争をめぐるものである。

故デイヴィッド・クレイマンの遺産相続人(以下「相続人」)は、友人関係であったデイヴィッド・クライマンとライトがパートナーシップを組み、オリジナルのビットコイン・プロトコルを開発し、ビットコインを採掘し、関連するブロックチェーン技術を開発したと主張し、オーストラリアのコンピューター科学者で自称ビットコインの発明者であるクレイグ・ライトを訴えた。

相続人は、このパートナーシップによって採掘された数十億ドル相当のビットコインの半分を受け取る権利があると主張した。陪審員は最終的にパートナーシップは存在しなかったと判断し、相続人に不利な評決を下したが、相続人はこれを不服として控訴した。

控訴審で相続人は、三つの理由から連邦地裁での陪審員評決は成り立たないと主張した。

第一に、相続人の見解によれば、パートナーシップの形成に関する連邦地裁の指示は、フロリダ州の1995年改正統一パートナーシップ法に基づく現行法を正確に反映していなかった。(解説1)

第二に、相続人によれば、裁判所は、相続人のパートナーシップの主張の本質的な事実要素を真実とみなした判事が被告(クレイグ博士)科した制裁を取り消した際に、誤った法的基準を適用し、その裁量を逸脱したという。(解説2)

第三に、相続人は、デイビッド・クライマンとアイラ・クライマン(デイビッドの兄であり、相続人の代表者)の「兄弟関係」に関する証拠の提出を禁止する制限命令に対する相手方弁護士の度重なる違反に基づき、再審の要求をしたが、連邦地裁は再審を却下した。連邦地裁がこの判断をしたことは、裁量を逸脱したと主張している。(解説3)

各論を順に検討するが、本控訴審査は最終的に連邦地裁での陪審員による評決を肯定する。」

ココまで。

解説1: フロリダ州ではパートナーシップが成立する定義について以下としている。"a partnership is created only where both parties contribute to the labor or capital of the enterprise, have a mutuality of interest in both profits and losses, and agree to share in the assets and liabilities of the business.”

クレイグ博士の証言では、確かにデイブ・クレイマンは友人であり、ビットコインの開発について助言(主にWhite Paperの精査。当初は60ページくらいあったらしい)をしてくれてはいたが、それを持って共同開発者とは言えないと主張していた。フロリダ州の定義では、「開発に関し資本や労働の貢献をし、その創造物から得られる利益や損失を共有すること。」あるので、確かに共同開発者とは言えないですね。

解説2: 連邦裁判所の2019年の審理の際に、裁判所はクレイグ博士に対し故デイヴ・クレイマンが死亡した2013年の時点で保有していたビットコインのアドレスリストを全て開示するように命令した。しかし、クレイグ博士はこの命令に対し、約100万ビットコインは2011年に信託(Tulip Trust)に譲渡しており、そのリストはすでに存在しないと証言した。そのため、推定されるアドレスリストは提出できるとした。

また、この信託に譲渡されたビットコインはShamir’s Secret Sharing Algorithm”で15の鍵に分割され、クレイグ博士は2019年時点で過半数に満たない7つの分割鍵しか所有していないと証言した。しかし、2020年4月に、もう一つの鍵がBonded Courier(期限指定付き宅配業者)により配達があるように手配してあると説明した。

このため裁判所は当初このような説明は不合理であるとクレイグ博士にペナルティを課したが、Bonded Courierにより8つ目の鍵の配達があったため、後にペナルティは取り消された。(ほんとクレイグ博士がやることはややこしいんですww。笑)

解説3: クレイグ博士側の弁護士によるアイラ・クレイマンの尋問の中で、アイラとデイブは母親違いの兄弟であるが疎遠であり、デイブ・クレイマンは2010年から死亡する(自殺)2013年までの間、病院に入院していたが、近所に住んでいたにも関わらず、その3年間に一度も見舞いに行かなかったことなど、不適切な尋問をしていたと主張(どのくらい親しかったかは相続に関して関係はない。しかし陪審員10名の心理に影響したと主張。)しており、このため、陪審員裁判を再審するように要求していた。しかしながら、確かにクレイグ博士の弁護士による不適切な尋問はあったが、それにより陪審員10名による21日間の審理の結果は変わらないと判断した。

というわけで、一応この裁判の決着はこれにて終了となるのですが、まだ他にこの裁判に関するクレイマン側に賠償費用がどのくらい課されるか、(ものすごい額)、またそもそもクレイマンが原告2名のうち1名(W&K Info Defence社)の代表となり原告になっていることについて違法性があるのではないか、など細かいところはまだまだ続くと思います。

しかし、今回の裁判ではクレイマン側はそもそも、クレイグ博士は発明者だ。(正確には発明者2人のうち1人)と前提としており、さらに判決では「ビットコインのプロトコル開発にはディブ・クレイマンは関与していない。」とのことで、これは結局「クレイグ博士が一人でビットコインプロトコルを作った。」ということです。いろいろ法律はややこしいんですが、この判決は関連する他の裁判にも効力を有するんじゃないかと思うんですよね。専門家の方どうぞコメントで教えてください。

それでは今日はこの辺で。

最後に2021年の陪審員評決についての解説を置いておきます。結局、この判断が肯定されたわけですので。


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