建設DX研究所 第17回定例部会を開催しました!
みなさん、こんにちは。
「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインの定例部会を実施しています。
6月27日に、第17回となる定例部会を開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします。
今回は、建設DX研究所メンバーのセーフィー(株)からの紹介で、Cellid株式会社の岡部様、山本様、鎌田様にご登壇いただき、空間認識技術を用いた建設DXについてお話いただきました。
Cellid株式会社は、2016年に設立したスタートアップ企業で、今ではアメリカにも拠点を置くなどグローバルに展開されていらっしゃいます。「Cellid SLAM」という空間認識技術をコア技術として、アプリケーションやソフトウェア開発キットなどのソリューションを提供されているほか、ハードウェアとしてARグラスのディスプレイ部分の開発も進められています。建設業界にとどまらず、エンタメ業界など、業界横断的なプロダクト展開も視野に入れています。
第17回 空間認識技術を用いた建設DX
簡単に3Dモデルの作成が可能 ~Model Builder~
まずご紹介いただいたのは空間認識技術「Cellid SLAM」を活用したModel Builderというソフトウェアです。360度カメラで撮影した動画をModel Builderに読み込ませるだけで3Dモデルを作成することができます。
「Cellid SLAM」の空間認識技術を活用したModel Builderというプロダクトでは、動画から3D空間を点群データとして作成し、その3D空間内に動画から切り出された画像の撮影位置が自動判定され、各撮影位置からの画像を見ることで現場の状況の把握や記録ができます。また、応用編としては、機械学習を通じて、個々の物体を認識すること(物体認識)も可能だそうです。このModel Builderを通じて、様々な活用が行われています。
事例として、①建設現場の3Dモデル化と②画像整理の効率化についてお話いただきました。
①建設現場の3Dモデル化
建設現場の3Dモデル化では、建設現場でのニーズに対応して、現場を3Dの点群データとして再現することが多いとのこと。
例えば、具体的な事例として、BIMモデルと3Dモデル化した周囲の環境とを重ね合わせることで、物体同士の干渉がないかを確認するなどして利用されているそうです。特に、自社でBIMは整備しているものの、さらに3Dモデルを作成するコストをかけにくいという場合に利用されているそうです。また、通信やGPSも通じないような山間部の現場では、ドローンで撮影した動画から3Dモデルを作成し、河川の土砂量の変化を判定するために活用された事例もあるようです。
さらに近年重要性が増している遠隔での現場管理にも利用されているそうです。360度カメラを持って現場を巡回するだけで、現況の正確な共有や記録が可能になるとのことでした。
確認作業効率化の観点では、写真ではなく3Dモデルで確認することで、感覚的に該当現場の確認ができるという利点があるとのこと。
画像整理効率化の観点では、建設現場にて、モデル作成用の動画から切り出された画像だけでなく、その後、現場巡回時に気になった箇所を撮影した写真も、Model Builderで解析を掛けることで、現場の3Dモデルのどこで・どの角度から撮影されたものか簡単に分かるため、施工管理の過程で撮影した膨大な写真の位置を自動で整理することができ、写真管理業務の効率化につながるそうです。
処理した画像を映し出すことで現場を効率化 ~ARグラス~
Cellid社では、Model Builderのようなソフトウェアの他に、ARグラスのディスプレイ部分のハード開発やARグラスのユースケース開発も行っているそうです。ユースケース開発に利用される現在のARグラスのリファレンスモデルでは、ARグラスはスマートフォンとケーブルでつながっており、スマートフォンで処理された画像がグラスに投影されるという仕組みで機能しています。今後のARグラスのリファレンスモデルにはカメラも今後実装される予定で、視点の共有が可能になります。
作業者の視点を共有できるという利点から、建設現場での活用可能性として、リモートでの作業指示やアシストが行えることを挙げられていました。特に建設現場では作業のために両手を空けておくことが必要なため、ARグラスはその意味でも有用性が高いとのことです。
また、建設現場では広い現場の中に資材置き場やレンタルの機材置き場があるため、その場所に初めて行く人にとっては分かりにくいことが多くあります。そういった場合でもARグラスを装着した現場作業員が日々現場を歩く過程で自然に集められた画像をもとに、ARグラスを通して置き場など行きたい場所を案内してもらうということも可能だそうです。
グラスに現場を映し出すという利用方法だけでなく、音声やテキストを自動翻訳したものをグラスに映し出すという利用方法もあるとのこと。建設現場に外国人材が増加する中、日本語の理解が難しい外国人がスムーズに現場作業になじむために、視覚的にサポートが得られるARグラスは重要な役割を果たせそうです。
さらに、ARグラスと生成AIとの組み合わせについても伺いました。例えばARグラスのカメラで捉えた映像を生成AIに読み込むことで、ARグラス装着者が生成AIからレクチャーやアシストを受けることができるようになる未来もあるとのこと。本来であれば遠隔地にいるベテランの指導者が指導するところを、代わりに生成AIが助言や質問への回答を行うかたちで実現します。
基本的にハード開発しているのはディスプレイ部分のみとのことでしたが、ユースケース開発を進めていくためにリファレンスモデルの開発を行い、追ってリリースを予定しているそうです。今後の普及次第で建設現場も大きく変化しそうだと感じました。
今後の展望
Model Builderは既存システムとのAPI連携や単体での提供を通じて、既に大手ゼネコンやインフラ関係企業、現地調査を主な事業とする企業に普及しているそうです。一方で、ARグラスのリファレンスモデルについてはこれからワイヤレス化など様々な機能の実装が予定されているとのことで、9月から順次センサーを搭載したモデルやSaasとの連携や特定の用途に特化したアプリケーションとも連携できるモデルをリリースしていきたいそうです。
建設DX研究所事務局より
今回は空間認識技術を基軸にソフトウェア、ハードウェアの両面でのサービス展開についてお話を伺いました。
建設現場での活用については、カメラと空間認識技術との組み合わせで行う遠隔管理や、現場記録の効率化について伺いました。3Dモデル化することで、感覚的に特定の場所や撮影した場所を確認できるようになるという点は他の遠隔管理手段とは違うメリットだと感じました。
一方で、あえて3Dモデルを使用せず、現場で使用するヘルメットに360度カメラを内蔵し、撮影された画像を2Dの図面上にプロットして活用しているという事例も伺いました。現場において必要に応じた技術や機器の使い分けが行われながら、新しい技術が建設現場に導入されていく様子が分かり、興味深く思いました。
また、今回はCellidさんにARグラスのリファレンスモデルをお持ちいただき、実際に映像を見ることもできました。グラスを通して周囲が見えるにも関わらず、投影された映像にも焦点が合う感覚は不思議なものでした。建設現場の方が使用される際には慣れが必要そうです。ただ、ARグラスを広く販売するには、まだまだ販売価格の壁があるとのこと。ARグラスはかけ合わせる技術で活用場面が広がる機器ではないかと思います。今後どのように普及していくのかが楽しみです。
Cellidさんより「弊社製品にご興味がある方は、contact@cellid.comまでご連絡ください」」とのコメントをいただいています。
建設DX研究所では、今後もこうした勉強会・定例部会を定期的に開催していくほか、情報発信・政策提言等の活動も実施していきます。 建設DX推進のためには、現状の建設DX研究所メンバーのみではなく、最先端の技術に精通する建設テックベンチャーをはじめ、数多くの事業者の力・横の連携が不可欠だと考えています。 建設DX研究所の活動・定例部会などにご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。