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建設DX研究所 第10回定例部会を開催しました!

みなさん、こんにちは。
「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインの定例部会を実施しています。
10月26日に、第10回となる定例部会を開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします。

第10回「住宅業界のDXの現状と課題」

今回は、「住宅業界のDXの現状と課題」と題し、住生活産業情報誌『Housing Tribune(ハウジング・トリビューン)』や『木と建築』をはじめとする住宅関連情報出版事業を営んでいる株式会社 創樹社代表取締役社長 中山 紀文様に「住宅会社におけるDXに関する取り組み」についてご登壇を頂きました。


はじめに、長年にわたり住宅業界を取材・ウォッチされている中山様には、住宅業界おけるDXの現在と今後についてお話頂きました。直近刊行された『住宅DXツールガイド2023』の取材先のなかから、5社をピックアップ頂き、各種デジタルツールを施工管理に活用した会社や来店~内覧~注文~建築~引き渡しと一連のお客さまとの接点にDXツールを活用して成果を出されている最新事例をご紹介頂きました。

続いて、住宅DX化への今後についてお話を頂きました。はじめに建設業の「人」をめぐる状況から、「確保できる人材の量」と「一人あたりの労働量」がどちらも減少し、深刻な生産力不足を迎えます。

建設業界(住宅も含む)を取り巻く関連データを以下の通り紹介されました。
・2025年には建設業の労働人口が90万人程度も不足すると予測。
・総務省の「労働力調査」から、2022年度の建設業従事者を年代別に見ていくと、5割を50歳以上が占めており、人材不足はますます深刻化。
・2024年4月から建設業(住宅も含む)でも残業時間の上限規制を導入。
そのなかで業界は深刻な人手不足を迎えるほか、さらに、新たな法制度への対応で業務負荷の増加が予想されます。
関連する法改正については、今年、来年と様々差し迫っています。
・2024年10月 インボイス制度のスタート(会計業務や受発注業務の煩雑化)
・2025年4月 省エネ基準の義務化(省エネ関連書面の提出に伴う業務負荷の増大)
・2025年4月 4号特例の見直し(戸建住宅でも構造計算が求められるように)

こうした関連データや法改正も理由に、これらの状況から、既に人手不足の対策をはじめています。
大手住宅メーカーは、長年にわたり築き上げてきた耐震技術を工務店などに対してオープン化。グループ会社である建設会社が工務店からスケルトン(構造躯体)の施工も請け負うなどの動きも出てきています。
 
また、直近では、住宅業界全体が必要とされる『住宅を建築する力』が著しく失われています。着工数の減少よりも、職人・作り手の減少のスピードが上回っている事が深刻だという意見もあります。ここにきて人手不足倒産も増えてきています。

住宅業界が迎える人口減少による懸念としては、着工戸数の減少があげられました。今後、仮に80万戸を切るような時代もやってくるのではという見解が示されるとともに、大工をはじめとする『職人・作り手』の減少の深刻さも解説いただきました。
高齢化による急激な絶対数の減少と、一人前になるまで長期育成時間が必要になるために若年層の職人化への敬遠も大きな障害となっているといえます。人手不足の問題に対して業界では、短期で解消する特効薬はなく、雇用環境、育成システムなどを着実に良くしていくことが必要と唱えられています。

また、こうした人手不足に対する対策として推進されるのは大工の社員化とのお話がありました。
多くの住宅会社が社外のいわゆる「ひとり親方」と呼ばれる協力事業者に施工を依頼していますが、人手不足の解決策として大工の社員化などを進めていき、安心して働ける雇用環境を整備することが求められているといいます。技能の伝承という点でも大工などを社員化し、しっかりとして教育の仕組みを整え、次世代を担う職人を育てていくこと。最近では、積極的に大工の社員化を進める工務店の方々も増えています。

中山様には、「今後は、根本的な業務の効率化と生産性の向上が住宅市場での優位性を創り出す」としたうえで、生産性向上に向けて住宅業界が乗り越えるべき課題を挙げて頂きました。
たとえば、データの再入力問題、適切な予実・粗利管理、現場監督の不足、施工力の不足、商談の長期化、施工品質の低下による手戻りやクレームの増加、情報管理の一元化など、枚挙にいとまがありません。
しかしながら、これらの課題をDXで何とかしたいと考えても、何から手を付けていいか分からない状況が続いている昨今。今後DXを提供する関連企業は、単なるツールの提案だけでなく、業務改善に関するコンサルティングまで行うプレイヤーが重要になっていくと提案頂きました。
 

建設DX研究所事務局より

今回の部会では住宅業界のDXについて、関連データや時勢を踏まえ詳細なディスカッションをさせていただきました。終盤の「単なるツールの提案だけではなく、業務改善に関するコンサルティングの必要性」という点が非常に重要な示唆であると感じました。我々の建設DX研究所も、スタートアップ企業が集合しているからこそ考えうるソリューションなどを検討していきたいと思います。

今後もこうした勉強会・定例部会を定期的に開催していくほか、情報発信・政策提言等の活動も実施していきます。 建設DX推進のためには、現状の建設DX研究所メンバーのみではなく、最先端の技術に精通する建設テックベンチャーをはじめ、数多くの事業者の力・横の連携が不可欠だと考えています。 建設DX研究所の活動・定例部会などにご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。