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20歳の学生に何を伝えるかを学んだ。立花隆の本より

 年末年始の休みは1週間ほどあり、さまざまなジャンルの本を読み漁りました。普段はまったく読まない小説にまで手を出してしまい、おもしろいのは分かったが、どうにもこの類の読書の時間の使い方がもったいない気がして、私にはあまり向かないと改めて感じたものです。
 ちなみに読んだ小説は『三体』。「アメトーーク!」でカズレーザーさんらが絶賛していた本で、宇宙から宇宙人が攻めてくる設定ではベスト1らしく、その通りだとは思っています(まだ1巻しか読んでません。計5巻もあります)。数学や物理学の素養があれば、完全にはまってしまうでしょう。

 ノンフィクションで読んだ中では、昨年亡くなった「知の巨人」立花隆さんの『東大生と語り尽くした6時間 立花隆の最終講義』が最も感銘を受けました。タイトル通り、人生の大先輩である立花さんが学生に向かって、気迫のこもった、そして膨大な知に裏打ちされた言葉の数々を発しており、なるほどと唸りまくりながら読みました。例えば、こんな一節があります。

「互いに違う個性を激しくぶつけ合わせる中で、相手を理解し自己の人格を育てていく姿が、二十歳前後の同年輩の若者たちが一堂に会する大学の教養課程の面白さです。一言で言えば、切磋琢磨の大切さです。教養課程の二年間の出会いで、それぞれの人が、他人がいかに他人でしかなく、自分はいかにどうしようもなく自分であるかを学び、自分の独特の個性と価値体系を磨きはじめるのです。このような個性と個性の相互刺激による急速な発達を指して「人格の陶冶(とうや)」と呼ぶのだろうと思います。

立花隆『東大生と語り尽くした6時間 立花隆の最終講義』(2021年、文春新書)122頁

 「陶冶」とは、陶器をつくる過程で、土がひねくり回されたり、こねくり回されたりすることです。それを若いうちにやっておけ、と立花さんは説きます。それを人間関係で経験しておくのは学生のうちしかありません。私も大学で普段から学生と接している中で、そういうことを伝えられたらなと学びました。
 そして読書もそうです。立花さんは「本とか思想とかものの見方、感じ方にかかわることについては、若いときに、できるだけ乱読・乱接触するべきです。可能な限り、浮気に浮気を重ねるべきです」と述べています。

 ちなみに、立花さんはこの本の中で「小説はくだらないと思うようになった」「文学の世界は映画の世界に完全に負けている」と話しています。そこまで断定できませんが、映画好きで小説食わず嫌いの私も同様の感覚を大学卒業以来、持っていました。

 


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