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続・cEDHにおけるケンリスのすすめ

0.はじめに

2022年10月30日に晴れる屋トーナメントセンター大阪さんにて開催された最強統率者決定戦@コマンダーサミットにて、私が2年近く愛用している『帰還した王、ケンリス』デッキで優勝を収めることができました。
ケンリスはビルダーによってタイプや勝ち手段が様々で非常に奥が深い統率者ですが、今回は私がデッキ構築するうえで考えたことや、各カードの役割について紹介してまいります。
最後までお付き合いいただければ幸甚です。

前回の記事はこちら↓

1.デッキ構築コンセプト
(ケンリスの特徴)

ここでは、ケンリスのポテンシャルを最大限に活かすために、どのような考えでデッキ構築を進めたかを解説いたします。
まずは、ケンリスの特徴についてまとめてみました。

①ケンリスは“弱い”

身もフタもないですが、ケンリスはcEDHにおける統率者としての性能は低いと言わざるを得ません。
共闘統率者の代表格であるティムナやクラム、テヴェシュは場に出た後すぐに複数枚のドローを見込めるのに対し、ケンリスはキャスト5マナ+青含む4マナでやっと1枚ドローできるのみです。
ナジーラのように自身の能力で相手のライフを積極的に削れるわけでもなく、ディハーダのように爆発的なマナ加速や墓地肥やしができるわけでもありません。
ライバルとなる統率者と比較して見劣りするため、デッキ内のパワーを上げて対抗する必要があります。

②固有色が5色≠強い

ケンリスの強みとして「5色全て使える」という点がよく挙げられますが、私は同意しかねます。
なぜなら、共闘の統率者が現れてからの環境は、1色を犠牲にすること以上に共闘統率者を採用するメリットが大きすぎるためです(高性能な統率者であるティムナ、クラム、トラシオス、テヴェシュを採用すると5色構築は不可能ですが、①で述べたとおり、その短所を長所が圧倒的に上回ります)。
よって、ケンリスを統率者に据える以上、「5色使える」ではなく、「5色の強みを全て出し切る」構築にしなければなりません。
私は4色構築にて最も弱い色は緑と考えているため、逆に緑の強みを引き出すことが求められます。

※緑が濃いデッキならば緑ならではの強さを発揮できると思いますが、多色構築にする上で他の色と比較して強力なカードが少ない、と捉えていただければ幸いです。

③無限マナ+ケンリス=勝ち

ここまでケンリスの短所を書いてきましたが、逆にケンリスの強み(独自性)はどこにあるのか?
私が考えるケンリス最大の強みは、ケンリスが無限マナの吐き先となることです(マナが無限に生み出せる状態でケンリスが場にいれば、青含む4マナの起動能力を対戦相手に向けて連打し勝利できる)。
EDHにおいて無限マナを創出できる2枚コンボは数多く存在しますが、それを注ぎ込むカード(歩行バリスタ など)を別途用意する必要があり、実質3枚コンボとなりがちです。コンボパーツの一枚を統率者領域に置くことのできるケンリスは、メインデッキ構築時に不要牌を投入しなくてよいため、無限マナコンボを決めやすい統率者といえます。

④膠着状態からインスタントタイミングで仕掛けられる

早々にコンボが決まりあっけなく終了するゲームもあれば、妨害等でコンボが失敗し睨み合いとなり長期化するゲームもよく見かけると思います。
ゲームが長引き膠着している状態では全員が様子見のため手札を蓄える傾向があるため、妨害札の枚数も必然的に多くなり勝負を仕掛けるハードルがどんどん上がってしまいます。
このようなケースでは呪文を唱えずにコンボを揃えられる統率者(イーサーンやシッセイなど、打ち消しが刺さりにくい)や、インスタントタイミングで仕掛けられるデッキ(出現領域起動からコンボ開始し、対戦相手の妨害札が消費された上から勝利を掴める)が有利ですが、ケンリスの黒含む5マナの起動能力がこれに当てはまります。
墓地にコンボパーツとなるクリーチャーを送り込み、じっくりと勝機をうかがうことができます。

⑤デッキ構築方針

上記をふまえ、『無限マナの注ぎ先となる』点と、『呪文を唱えずにインスタントタイミングで勝利することが可能である』点を併せ持つことのみをケンリスの独自性(唯一性)とみなし、それを最大限に活かす構築を心掛けました。

↓デッキリスト

具体的な構築方針は下記のとおりです。

・コンボパーツとそれをサーチするカードを主体とし、除去や打ち消し(自身のコンボを通すための札)は最小限の枚数とする
・コンボ以外のビッグムーブは“むかつき”のみとし、残りは3マナ以下のカードを採用して妨害を受けた際のテンポロスを最小限に抑える(“選別の儀式”などの大味なカードは採用しない)
・マナ基盤となるクリーチャーを多めに採用し、“適者生存”を最大限活用してインスタントタイミングでの勝利を見据える

※主な採用カード解説は後ほど

2.プレイ指針

①マリガンは控えめに

可能であれば初手からコンボパーツを抱えたいところですが、ティムナやクラム、テヴェシュと異なりケンリスは早期に手札を補充できないため、アグレッシブマリガンは控えましょう。
5枚スタートは相当厳しく、6枚スタートも避けたいので、土地2,3枚+サーチカードがあれば7枚でキープして良いくらいです。
レベル9〜10の卓では早期に勝負を仕掛けても咎められる場合が多く、リソースの消費が激しくなるため、真っ先に仕掛けることはせずに勝負の機会を伺いましょう。

②ケンリスを出すタイミングに注意

『誰かが勝負を仕掛ける→妨害される』が何度か続いた場合や、そもそも卓に速攻デッキがいない場合など、ゲームが長引きそうならばケンリスをキャストしてアドバンテージを稼ぎたいところです。
しかし、ケンリスのキャストはこのデッキにおける最も弱い行動であるため、タイミングを見極めることが重要です。

キャストの目安としては、
・対戦相手全員が仕掛ける様子もなく、キャストしても無事にターンが帰ってきそうな場合
・キャスト後にマナを温存できる場合(ブラフでもいいので青もしくは白1マナ以上が望ましい)
のいずれかです。

リソース戦となることが想定される卓では、コンボパーツではなく“魔力の墓所”や“ガイアの揺籃の地”などのマナ基盤を早期にサーチし、ケンリスで睨みを利かせるのも手です。卓ごとにどのように振る舞えばよいか、対戦を重ねて体得していきましょう。

3.対戦における心得

ここでは、対戦時に心掛けるべきことを列挙しています。ケンリスに限らず、あらゆる統率者に共通する内容ですので、ご参考いただければ幸いです。

※統率者歴2年弱の若輩者の考えですので、偏見も多分に含まれていると思います。「それはちゃうやろw」と感じる部分もあるかもしれません。その際は優しくご指摘ください。

①妨害札は温存しよう

デッキリストをご覧いただければわかるとおり、本リストでは打ち消しや除去といった妨害札の枚数を絞っております。同じ5色統率者のナジーラのテンプレ構築と比較しても、妨害札の枚数差が目立ちます。
理由は単純で、置物などで妨害されたらそれを掻い潜るコンボにシフトすればいいですし、除去されて困るパーマネントや打ち消されて困る呪文も特段無いためです。
よって、自身がコンボを決める際に対戦相手から繰り出される妨害や、自身のコンボを阻害しているカードの対処札のみを採用すれば良いので、空いたスペースにリソースを稼ぐカードを投入することができます。

一方で、他の統率者だから妨害を連発して良いわけではありません。先ほど例に挙げたナジーラは、自身のトークン生成能力でアドバンテージを稼ぐ統率者なので、自身への除去対応や対戦相手の大型クリーチャー除去が求められます。
そのために多く採用している妨害札を他者の妨害にばかり当てていては、すぐには負けないかもしれませんが勝つことはできません。なぜなら、その妨害を涼しい顔をして眺めている対戦相手が2人もいるためです。

卓を囲んでいると、「あのリス研ジャマやな〜」とよく耳にしますが、なぜジャマだと感じるのでしょうか?(リス研…リスティックの研究)
カードを沢山引かれそうだから?自身が勝負を仕掛けられないのであれば律儀に1マナ多く払い続ければ良いのです。下手に除去しようとして打ち消し合戦になり、マナを払えず結局ドローを許す、というような場面を何度見たことでしょうか。これでは本末転倒です。このようにして溜め込んだ手札からコンボに走られるようならば目も当てられません。

リス研やその他パーマネントを除去するならば、自身が勝負を仕掛けられる状態で、相手の打ち消しを釣ることを目論むなど、『目先で負けないため』ではなく、『自分の勝ちを近づけるため』に妨害札を使用したいものです。

②感想戦を忘れずに

4人それぞれが自身の勝利のために行動する統率者戦では、対戦相手の行動によって自身のプレイを曲げざるを得なかったり、考えることが多くミスしてしまったり、ということがよくあります。
このような状況が実は統率者戦の醍醐味だったりするのですが、複雑さゆえに最適な選択をとれないことは誰しもが経験しているはずです。

プレイの練度を上げるために、対戦の後は感想戦をする習慣を身につけましょう。対戦相手から見た自身のプレイの良し悪しや、対戦相手の戦略や考えを聞くことで、少しずつですが大局観を磨くことができます。
上手な方は指摘も的確なので、可能ならばどんどん卓を囲んで場数を踏み、指摘も取り入れてどんどんステップアップしていきましょう。

そのかわり、対戦中の相手からの指摘や提案(いわゆる口プレイ)は聞き入れなくて問題ありません。
対戦中は、「自分のデッキの強み弱みは自分が一番理解している」と自信を持ってプレイしましょう。
よく、『卓の平和を守る』と聞きますが、そもそも卓の平和など必要ありません。ケンリスでは他人の行動の邪魔をするより自身がコンボを決めるほうが早いです。その他の統率者においても、誰かが勝負を決めれば無くなってしまう平和を守るためにリソースを吐きすぎるのはナンセンスです。

口プレイを仕掛けてくるのは、勝負が長引くほど有利になるコントロールデッキやスタックスデッキ使いが多いイメージですが、ミッドレンジ以上のスピードを持つデッキでこうした口プレイに乗って良いことはほとんどありません。コントロールデッキ側からリソースを吐かせるように仕向けましょう。
(そもそも私は口プレイをオススメしません。口プレイで上手くなるのは口だけです。プレイは上手くなりません。卓上での会話はボードの情報やカードの応酬で行うようにしましょう。)

また、『黒対面はライフを詰めろ』などといったセオリーも無視で結構です。将棋や囲碁には互角の展開を望める定跡(定石)がありますが、それは試合を進めるうえで必要な情報が全て開示されているからこそ成立するものです。
カードゲームでは手札が非公開情報となるため、セオリーを守ってプレイしても自身の得になる保証はどこにもありません。黒いデッキが複数いる場合や、黒くないがコントロールデッキで後半の制圧力が高いと推定できるデッキの扱いなど、常に盤面の状況を考慮しながらプレイを進めていきましょう。

③強い人ほど負け慣れている

色々書いてきましたが、多人数戦である統率者戦は席順や運の要素も大きく、自身が最良のプレイをしても負けてしまうことが珍しくありません。強いプレイヤーでも4割勝てれば良い方でしょう。
統率者戦で重要なのは、負けないことでも勝つことでもなく、『勝てる試合を勝ち切ること』です。
半分以上を占める負け試合から気づきを得て、勝てる試合に活かせるということが、強い人の共通点だと思います。

私も道半ばのため、皆様と切磋琢磨できればこれ以上の喜びはありません。

4.採用カード解説

タッサの神託者
自身の能力誘発にスタックして“Demonic Consultation”か“汚れた契約”を唱えて山札を追放し、青の信心が山札の枚数以上となり特殊勝利が可能です。
青青黒の3マナで始動可能かつ除去も刺さらないため、統率者戦で最も有名な即死コンボです。打ち消しには注意が必要ですが、それに加えて気をつけたいのは、
 ①相手の場にあるドローを強制するカード
 ②自分の場にある“エスパーの歩哨”
の2点です。
いずれも山札を追放した後にスタックに乗ると敗北するため、特に警戒するようにしましょう。(“忍耐”と“天使の嗜み”は割り切りましょう。これらを咎める“沈黙”を添えてコンボ始動できることが望ましいです。)
また、対戦相手目線ではケンリスが①に該当するため、ケンリスをキャストして青含む4マナを構えているとコンボを牽制することができます。

セヴィンの再利用
墓地を手札のように扱うことのできる“死の国からの脱出”を“直観”経由で場に出す際に使用します。(いわゆるブリーチコンボ)
フラッシュバックで墓地から唱える際は、5マナで唱えて3マナ以下のパーマネントを場に戻した後、呪文をコピーしてもう1枚を場に戻す所作となります。
“直観”から早期に始動する場合は残りマナが潤沢でないことが多いため、“ライオンの瞳のダイアモンド”→“死の国からの脱出”の順に場に出すほうが良いです。この順番だと“偏向はたき”で対象を変えられてコンボが失敗する裏目がありますが、除去が刺さりづらくなるためこちらの順番がオススメです。

波止場の恐喝者
ライオンの瞳のダイアモンド

いずれも無限マナコンボのパーツです。
前者は“祝福されたエミエル”+宝物が4つ以上生成できる状態で、後者は“オーリオックの廃品回収者”で無限マナとなります。
数ある無限マナ生成ギミックからこの2種類を採用しているのは、これら2枚が単体でも活躍できる性能を持っているためです。前者は大量マナ加速、後者はケンリスが場にいる状態で能力起動すると、+2マナで手札のクリーチャーを唱えずに場に出すことができるため、前者の無限マナコンボをインスタントタイミングで仕掛けることができます。

雨ざらしの旅人
税収

本リストではマリガン基準を可能な限り引き下げるため、サーチカードをふんだんに採用しています。
高レベル帯だとあまり見かけることのないカードですが、初手7枚と6枚とで雲泥の差となるケンリスではこういったカードも採用圏内に入るかと思います。

ディレイド・ブラスト・ファイアーボール
上記のとおりサーチカードを多用しているデッキのため、“敵対工作員”は天敵です。
以前は“Fire Covenant”を採用していましたが、こちらは“偏向はたき”で対象を曲げられるリスクがあり使用感は良くありませんでした。
インスタントタイミングで使用できること、2点を対戦相手と相手の各クリーチャーに飛ばせること、対象を取らないため“偏向はたき”で無力化されないことを評価して採用しました。

マナ吸収
コントロールデッキの多い卓で、相手のテンポを崩しながらケンリスの早期着地に貢献するカードとして採用しています。自身の直前の番手で打つことが望ましいですが、卓のバランスを見ながら使用タイミングを判断しましょう。

適者生存
手札のクリーチャーを墓地に送りながらクリーチャーをサーチできるエンチャントです。序盤はサーチをメインに使用し、中盤以降はサーチしたクリーチャーを墓地に送り再度サーチを繰り返すことで、手札を整えながらケンリスで蘇生させてコンボに走る準備を整えましょう。
本リストではクリーチャーを25枚採用しているため、おおよそ手札が4枚あればサーチが可能です。

色あせた城塞
3点のライフと引き換えに好きな色マナを出せる5色土地です。“風変わりな果樹園”を代わりに採用しているリストも見かけますが、対戦相手依存ゆえにマリガン基準とならない点でこちらに優位性があると考えます。初期ライフ40点の統率者戦においてマナ基盤を整えるためにライフを惜しんではいけません。9点くらいまでは喜んで払いましょう。
(たまに“魔力の墓所”と合わせて20点くらい持っていかれますが…)

繁殖池
Tropical Island

青と緑のいずれかを出せる2色土地です。本リストではデュアルランド10枚に加えて、ショックランドは繁殖池を1枚だけ採用しています。(本リストにおけるスタートカラーのため)
私がケンリスを統率者に据えた(統率者戦をはじめた)のは2年ほど前ですが、当時のリストはショックランド10枚+森でした。デュアルランドは高すぎて手が出せませんでした。いつの間にか揃ってしまいましたが…
5色統率者の利点として、デュアルランドとショックランドがほぼ競合しないことが挙げられます。cEDHにおいてマナ基盤はなかなか妥協できないため、3色や4色統率者ではショックランドとデュアルランドが必須ですが、5色ならばショックランドでも代用可能です。パーツ集めが金銭面でも比較的容易となるため、cEDH参入デッキとしてもケンリスはオススメです!

幻影の像
ケンリスにおいて最も存在感を発揮するクリーチャーです。序盤は相手の場にある“波止場の恐喝者”や強力なシステムクリーチャーをコピーしてテンポを稼ぎ、ケンリス着地後はコンボパーツとして使用することができます。
“幻影の像”には、自身が能力や効果の対象になると、自身を生け贄に捧げる能力があり、これをケンリスの緑含む2マナの起動能力を用いて誘発させることで、宝物を8個以上生成できる状態であれば、相手の場にいる“波止場の恐喝者”をコピーし続けてマナを無限に生成してそのまま勝利することが可能です。
対戦相手目線からも警戒されづらいコンボルートのため、チャンスがあれば積極的に狙っていきましょう。

5.おわりに

ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。ご意見やご指摘は下記Twitterアカウントへお願い申し上げます。ご感想等も頂戴できれば嬉しいです。

https://twitter.com/kenrith_edh

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