憲法審査会 2023年6月8日 議事録

◆各会派代表の発言
新藤義孝(自由民主党・無所属の会)
自由民主党の進藤義隆です。本日は国民投票法に関するいくつかの論点について意見を述べます。2021年6月に成立した国民投票法改正の附則4条では第1号で、投票の外形的事項である投票環境の向上について、第2号で投票の質に関する事項であるCM規制等について、検討条項が設けられています。まず第一号で規定されております、投票の外形的事項につきましては自民・維新・公明・有志の4会派が昨年4月にいわゆる3項目案を提出し、主旨説明済みでございます。その内容については公選法で既に設置されている事項であり審議でも異論はなかったものです。主旨説明済みの法案を審議するのは国会の当然の責務ですが、提出依頼、立憲民主党と共産党の理解を得ることができず1年以上審議が行われていません。速やかに審議を行い採決すべきということを改めて申し上げます。
次に、附則4条2号に規定されている投票の質に関するCM規制の問題に関しては、まず国民投票法制定時の基本的な考え方を確認しておく必要がございます。法制定時の国民投票運動に関する基本的な考え方は、国民投票は国民主権最大の発露の場であり国民投票運動はできるだけ自由にというものです。これは当時の民主党自身が強く主張したものでありその結果CM規制は、法的な規制をできるだけ避け自主的な規制によって国民投票の公正公平を確保するとの整理がなされ、放送CMについては期日前投票が始まる2週間前からの禁止に落ち着いた、という経緯があります。
これに対して、放送CMの規制に関し、勧誘CMは個人、団体、政党等問わずに全期間禁止。政党については意見表明CMを禁止といった法規制を導入すべきという意見があります。しかしこれらの点は国民投票運動はできるだけ自由にという基本原則に照らし問題があると思われます。そもそも政治的な表現活動である放送CMに関し、あらゆる主体について禁止するというのは憲法で保障された表現の自由に対する必要以上の制約になる恐れがあります。
また発議された憲法改正案について国会における議論を1番よく把握しているはずの政党に対して、意見表明CMまでも禁止する事は、国民が判断する際の議論の経緯や内容に関する重要な材料を奪ってしまうことになりかねません。慎重な議論が必要と考えているわけです。さらに近年、市場規模において放送CMを上回っているネットCMについて、政党による有料ネットCMを禁止すべきとの意見もあります。しかし放送CMはあらゆる主体について禁止とする一方、ネットCMは政党のみ禁止とする政策判断の合理的な説明、これまた困難と思われます。なおネットCMのみならずネット空間における表現活動全般については、フェイクニュース、マイクロターゲティング、フィルターバブルなど様々な課題が指摘されております。これらは国民投票に限った課題ではなく、むしろ頻繁に行われている一般選挙において検討が必要な課題であり、倫選特における議論や、情報通信分野、その他の社会的課題全般として総務委員会やデジタル社会形成に関する特別委員会における議論も必要と考えております。また国民投票運動に係る資金規制に関し支出が1千万円を超える団体の届出、支出金額の上限の設定、収支報告書の提出の義務付けなどの法的規制を行うべきとの意見があります。団体の届出制の導入については、そもそも国民投票運動を行っている団体の支出が1千万円を超えるかどうかを判断する事は、団体の実態を把握できることが前提と思われますが、これを正確に把握することは困難ではないでしょうか。加えて国民投票運動とその他の活動を行っている団体については、国民投票運動に関する支出だけを切り分けて把握する必要が発生しますが、実態の把握はさらに困難と考えます。
次に支出金額の上限規制については、1つの団体の上限を規制しても資金提供者は複数の団体に支出できることから、総括的な資金提供の上限規制を担保する事はこれまた困難であります。さらに届出団体の数が多数にのぼる場合、それをチェックするのは国民投票広報協議会ですが、すべての事務を広報協議会が行う事は無理があり、実質的には中央選管や都道府県選管等に事務的支援を依頼することになると思います。その場合にはこの中央選管、都道府県選管等に過度な事務負担が生じる恐れが出てくるわけであります。
そもそも収支報告書の提出や公表は、国民投票運動期間が終了した投票期日後とならざるを得ないことから、収支報告書のチェックは事後的なものとなり、資金規制の実効性は低いものになると言わざるを得ません。
以上、国民投票運動に関する団体の活動や資金について法的規制を行う事には様々な問題があり、困難が伴うと思われます。とは言え、国民投票運動に関わる政党や団体の活動に対しては、公平公正を確保するための何らかの措置が必要とも考えており、厳密な法的規制は難しくても、例えば政党間の申し合わせによる自主的な取り組み等について検討してはどうかと考えております。放送CMの受け手である民放連及び民間放送事業者の自主的規制ガイドラインが、量的なものを含め、既に準備されているように放送CMの出し手である我々政党側の自主的取り組みについても、
今後議論を深める必要があると思っております。またこれとは別に、国民投票法では正確な情報提供するための取り組みとして国民投票広報協議会を設置することが定められています。憲法改正案の国民への周知広報を行う協議会がどのような活動をするのか、公平公正をどう確保しようとするのか、協議会の内容を詰める事は、我々政党側の取り組みと密接な関連があります。協議会は憲法改正を発議した賛成・反対の政党から構成されており、この協議会がどのような活動をどの程度行うかという事はそれぞれの政党が独自に展開する国民投票運動にも大きな影響を及ぼすからであります。そうした観点からも、広報協議会の内容を速やかに詰めるべきと考えています。そのため広報協議会規定、事務局規定、放送及び新聞広告規定と、国会職員法、国会職員育児休業法等の関連法律の改正が必要となってくるわけであります。これらは事務的な法整備であり、まずは規定案や改正案についてのたたき台の作成を法制局及び事務局に依頼し、審査会として広報協議会規定の整備に向けた具体的な作業の促進を図るべきでは、と考えております。会長におかれましては、こうしたたたき台の作成について事務方へ要請いただきますよう、お取り計らいのほどお願いいたします。
最後に緊急事態条項についても意見を述べます。審査会が現在のように毎週開かれるようになった昨年の常会以降、緊急事態条項についてはかなりの議論が積み重ねられ今国家においても参議院の緊急集会の位置付けをはじめ、緊急事態条項全般についての議論がさらに深められております。ここまで議論が積み重ねられた現状を踏まえれば、各会派、委員の意見の概要を事務的に取りまとめるため、法制局に客観的な論点整理資料を作成してもらい、今後の討議に活かしては、と考えております。すでに複数の会派委員からも会長に対し要請がなされておりますが、改めて私からも会長に要請をさせていただきます。お取り計らいの程よろしくお願いいたします。
今朝の幹事会におきましては、来週15日に審査会を開催し、緊急事態条項についての論点整理資料の説明を法制局に聴取し、これを踏まえた討議を行っては、と提案をしております。今後も憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い論議が行われるよう、委員各位のご理解とご協力をお願いして私の発言といたします。

奥野総一郎(立憲民主党・無所属)
立憲民主党の奥野総一郎でございます。本日は国民投票法の改正について述べます。2021年国民投票法改正の際、附則4条の主旨説明で、私はCMの扇情的な影響力や、インターネット広告を含めCMに投じる資金の多寡が、投票結果に与える影響等踏まえると、CMや運動資金等について一定の規制を設けられなければ、公平公正な国民投票の実施には期待できません。このような積み残しの課題についても、早急に具体的な検討を開始し、一定の結論を得る必要があると考え、本修正案を提出しましたと述べました。
運動資金規制により、CMへの質も抑制されることになり、間接的にCM規制にもなりえます。また外国政府の干渉も防ぐことができます。運動資金規制こそ最優先に導入すべき問題であります。ところがこれまでほとんど議論が行われていません。先日も述べましたが、実際に国民投票が行われたイギリスなどの国々を参考に、それらの問題点も含めて早急に運動資金規制を議論して、国民投票法を改正すべきであります。
イギリスなどは期間中に、収入報告、投票日前でも収入についてはしっかり報告させることにしています。こういった点も参考にすべきであります。運動資金規制について、集中討議及び参考人質疑を求めます。
一方、CM規制については、これまで一定の議論が積み重ねられてきました。放送CMについては民放連の考査ガイドラインより、投票期日14日以内についてでありますけれども、意見表明CMについても取り扱わないこととする自主規制が導入されることになったなど、評価できる点もあります。しかし発議後から投票期日15日前までは、賛否の勧誘のためのCMも意見表明CMも自由に放送でき、先程申し上げたような運動資金の多寡や外国政府の介入で投票結果が左右される可能性がいまだにあります。この期間は政党が紳士協定を結び、CMの出稿を抑えるという議論もされていますが、CMを出稿するのは政党だけではありません。政党関連の政治団体、外国政府のダミー団体などからが自由にCMを出稿できるとすれば自主規制の意味は乏しいといえます。
また国民投票法第104条は放送事業者は国民投票に関する放送について、放送番組の政治的公平性を定めている放送法第4条第1項の主旨に留意することを定めています。つまりこの規定によれば、発議後すべての期間において放送の量的な公平が求められていると解することもできます。ところが民放連は量的な__はできないと途中で明言をしており、この制定時と異なって、国民投票法104条に触れる可能性が出てきているわけであります。自主規制ができないのであれば、放送の政治的な公平を維持するため、我々の案にあるように国民投票運動のすべての期間について賛否勧誘のためのCMを禁止し、また、意見表明CMについても政党は全期間を禁止をして、全て国民投票広報協議会の広報放送に委ねるべきではないでしょうか。イギリスブレグジットの際の、イギリスの国民投票は、政治的公平、政治目的の広告放送の原則禁止と通信庁の規則による賛成反対双方への公平な割り当てが行われました。わが国も同様の仕組みをとるのが、この国民投票法104条の主旨にかなうといえます。一方で放送に規制をかけることがネットCM等に規制はかけられないことを念頭に、慎重であるべきとの意見があります。民放連の長原参考人は審査会の場で玉石混交のネット広告の審議を国民自身が取捨選択すると言う観点からは、放送CMの規制は逆効果ではないか、と指摘をされました。我々は、放送と同様、政党等によるインターネットCMを禁止し、この部分についても、広報協議会にあるインターネットを利用した広報に委ねる案を持っています。さらに政党以外の主体によるネットCMについては広告主体の表示義務を課すこととしています。この表示義務規制についてはイギリスでも近年法制化されており、充分実現も可能だと思われます。
CM規制については今述べたように広報協議会の広報を活用することは必須となってきます。放送広告については未だ期間、時間、回数と何も決まっていません。また国民投票広報協議会によるインターネットを利用した広報については玉木委員も指摘したように、具体的な法整備が必要となります。先日新藤筆頭からも提案がありましたが、こうした観点から法制度の整備とセットで広報協議会の規定を整備することを急ぐべきだと、この点については同意をします。考えます。その上でなお残された課題もあります。政治的中立性をどうプラットフォーマーに求めるのか。もう少し言えばこれも玉木委員が指摘されたように、放送法4条のような一般ルールを課すのか、あるいはフェイクニュース対策をどうするのか。わが方の案は、ファクトチェックを行う民間団体と広報協議会との連携を求めていますが、これで本当に十分と言えるのか。ネット規制については、表現の自由、検閲の問題もあり諸外国でも内容規制に及び腰であります。こうした整理の困難な部分については、表現の自由、公職選挙法との関係で、総務委員会や倫選特とも連携をして議論を進めていくことを提案致します。
最後に選挙困難事態について少し申し述べます。定足数を満たせなくなるような選挙困難事態を長期にわたる場合をどう捉えるのか、と言う問題です。現行憲法を改正せず、国家緊急権を発動して緊急集会を長期にわたり続けるのかそれとも憲法を改正して備えるのか。この場合、選挙困難事態の認定を厳格に行う期間、要件を厳格にしたうえで、そういう仕組みを作った上で、1つは議員任期の延長を図る、あるいは70日間以上、緊急集会が開会できることを前提として、緊急集会の権限を広げるような憲法改正というのも選択肢となりえます。いずれを取るかは、選挙困難事態がどの程度起こり得るか、いずれを取るかというのは国家緊急権を発動するかどうかという問題ですが、どの程度選挙困難事態が起こり得るかということだと思います。
例えばシン・ゴジラと言う映画がありましたが、あれはゴジラが国会を襲って放射能が入って、首相がやられてしまうんですね。そういう事態が、国会が壊滅する、政府も国会も壊滅する事態が起きれば、これは国家緊急権を発動して残った人間で超法規的に戦うということになると思います。これは国家緊急権だと思います。
私は立憲主義の立場からは想定し得る事は権力抑制の観点、分立の観点から憲法にあらかじめきちんと規定しておくべきだと考えています。そしてそれは民主的な正当性の観点からよりふさわしい制度であるべき。議員任期の延長で行くのか、あるいは緊急集会で行くのか、どっちが民主的正当性があるのかと言うことから検討すべきであります。この問題は純粋に制度論として論じて結論を得る必要があります。論点についてもこうした観点から公平に論点を整理するべきだと言うふうに思います。以上であります。

小野泰輔(日本維新の会)
日本維新の会の小野泰輔です。会期末も迫ってきましたので、私は今後の進め方について2点申し上げたいと思います。まず一点目ですけども、緊急事態における国会議員の任期延長の取りまとめを会期末に向けて行っていきたいと言うことであります。既にかなりの議論が行われ、論点も出尽くしており、細かい詰めや決めの段階に来ていると思います。大きな論点であった参議院の緊急集会を有事に活用することについても、参考人質疑を行い、検討を行ってきましたが、緊急事態においては完全とは言えない民主的正当性の中、二院制の原則の維持や、選挙困難事態の長期化の可能性、さらには緊急集会の限定的な権能からすると、その活用には一定の限界があるという事は、大方の会派が一致した見解を示しております。
先週は自民党の新藤幹事から、参議院の緊急集会についての参考人質疑の論点整理を表にまとめていただきましたが、他の論点も含めた緊急事態条項に関するこれまでの議論も、当審査会として取りまとめを行い、今後議論していくべき項目について、詰める、決めるという作業を行っていく羅針盤を作っていくべきだと思います。
事務局には大変な負担をお願いしますけども、秋の臨時国会に向けて議論をスタートダッシュするために、必要な事と考えておりますので、森会長、よろしくお取り計らいをお願いいたします。
二点目は国民投票広報協議会の規定について、具体的な内容を詰める作業を行っていくべきであると思います。これも自民党の新藤幹事が5月25日に資料を提示されましたが、広報協議会の組織とその権限、そしてそれをサポートする事務局についての規定や関連法律の改正等、具体的に定めるべきことを整理いただいています。
まずはこれらの項目について規定の整備を進め、その内容の確認作業を行うとともに、他の検討すべき事項についても規定の充実を図っていくというプロセスを取っていくべきだと思います。これも大変な作業となりますけれども、今通常国会が閉会した後、臨時国会召集までの間で、ぜひ事務局には夏休みの宿題としてたたき台の作成作業を進めていただきますよう、森会長よろしくお願い申し上げます。
しかしながら、事務局が規定のたたき台を作っていくにあたっては、今国会の会期末までに定めるべき内容について具体的な項目出しを出来るだけ行っておく必要があると考えております。そこで決して網羅的ではないとは思うものの、考え得る限り国民投票広報協議会の規定として備えるべき項目について、私の意見を申し述べます。
新藤幹事が5月25日に配布された資料に沿って進めていきたいと言うふうに思います。
お手元にないかもしれませんが、まず①の「組織」については、委員や会長の選任方法や議事の手続きなど事務的に案の作成は進められるものと思っております。次に②の「権限」ですが放送や新聞における広報や広告に関する規定については公職選挙法で定められている内容に沿ってまずは作成を行うことができるものと考えております。しかしながら通常の国政選挙と憲法改正国民投票で大きく異なる点があり、この点を留意しながら制度設計していく必要があると思います。
一点目として、憲法改正の場合には、複数の条項に関する改正案が発議され得ると言うことであります。例えば政党等が行う新聞市場での広告については、新聞の寸法や掲載回数等を条項ごとに賛成側と反対側とで平等に分けて割り当てていくことになると思いますが、そもそも当該憲法改正の国民投票において、トータルで何項目の改正が提案されているのかなどを示され、さらにそれぞれの項目について各政党等の賛否がどうなっているのかについて、◯×の一覧表で示すサマリを設ける旨、定めておくなど、国民にとって分かりやすく混乱を防ぐ、そういった取り組みも非常に重要かもしれません。また複数の条項の改正案に関する賛否の広告のスペースは、同一の寸法でなければならないのは当然ですが、複数の条項間においては、国民の関心や賛否の主張の熱量が異なることが考えられるので、協議会の中でスペースを十分に割くべき条項や、少なめにする条項を、協議の上定めることができるなどの規定を、備えておくべきと考えます。またニ点目ですが、国民投票法106条6項において、同条1項で定める憲法改正案の広報のための放送を行うにあたり、憲法改正案に対する賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して同一の時間数及び同等の時間帯を与える等、同等の利便を提供しなければならないと定めています。通常の国政選挙の場合は、小選挙区の場合には各候補者ごと、比例代表の場合には政党ごとに公平に時間が与えられているので混乱が生じにくいですが、憲法改正国民投票の場合には賛成派または反対派の中で、それぞれ広報する内容をどうするかや、政党ごとに持ち時間を配分するのかなどをめぐって調整が難航することも想定されます。一方が既に広報の内容が固まっているのに、他方がまだ調整できていないために広報が行われないようでは、準備が終わっている側の広報の機会を奪うことになる反面、調整ができていない側への配慮が欠如していれば、広報の平等性が失われることとなります。そこで広報の作成に要する一定の期間をあらかじめ規定で定めた上で、その期限が過ぎたら相手方の内容の作成が完了していなくても広報を開始するなどのルールを明確に定めておく必要があると考えます。これ以外にも規定すべき点があろうと思います。新藤幹事の資料の③の「事務局」に関する項目として、事務局規定の制定や国家職員法等の改正が挙げられていますが、これらは森会長からのご指示があれば事務的に作業が進めることができると思います。新藤幹事の資料には掲載されていませんでしたが、ネット広告における国民投票広報協議会の役割等の詳細の規定についても、これまで各委員が提言した内容を参考にたたき台を作成すべきだと考えます。森会長よろしくお願いいたします。
最後に新藤幹事にお願いです。今国会の最後の審査会において来年9月の岸田総理の総裁任期を期限とした憲法改正国民投票の実施を見据えた工程表をそろそろお示しいただきたいと思います。
我々が毎週集まって議論しているのは、議論だけをすると言う事のためではありません。時代に適合した憲法を国民の手で作るための一大プロジェクトを成功させるためには、ゴールから逆算したロードマップを作るべきだと考えます。改正項目の検討と条文案の作成、国民投票法の改正及び手続きの整備等、憲法改正に必要な事項について進捗状況を管理しながらやっていかなければ、岸田総理の国民に対する約束を果たす事は難しいと考えます。会期末まで残る検討課題について具体的な成果を追求するため、ギリギリまで当審査会を開催することを求め私の発言を終わります。

吉田宣弘(公明党)
公明党の吉田宣弘です。本日も意見表明の機会をいただきましたことに、会長はじめ皆様に感謝を申し上げます。
国民投票法について意見表明を行います。まず国民投票法改正附則4条1号に規定されている投票環境の向上についてでございます。この点、昨年4月に本審査会に付託されております3項目の国民投票法改正案は、投票環境の向上、有権者の利便性向上に資するものであり、公職選挙法にも既に措置されている内容でありますので、内容においていささかも問題はなく、速やかに成立をお測りいただきたく、私からもまずお願い申し上げたいと存じます。
次に附則4条の第2号に規定されているCM規制について申し述べさせていただきますが、その前提として、偽情報ないしは誤情報に対して、どのように対応していくべきかについて、申し述べたいと存じます。
偽情報ないしは誤情報を野放しにしてはならない事は言うまでもないことですが、国民投票に限らず以下に述べる点に留意をすることが必要であると考えます。1つ目は偽情報・誤情報に対して、公権力が直接介入する事は好ましくないと考えている点です。偽情報・誤情報これらフェイクニュースとも呼ばれるものといえども、表現行為であり、それに先立ち公権力がその内容を事前に審査し、不適当と認める場合にその表現行為を禁止してしまうことになれば、最悪、その公権力の介入は、憲法21条2項が禁ずる「検閲」に当たりかねないからです。表現の自由は最大限尊重されなければならず、まずはデジタルプラットフォームの自主規制が基本となると考えます。2つ目は、昨年6月2日に憲法審査会に参考人としてご出席いただいた楊井人文参考人がお述べになられた通り、複数のファクトチェック団体が活動している状態をいかに作り出していくのかという点です。複数必要であるという理由は、ファクトチェックそれ自体が、価値判断に基づくものであり、2つの価値が対立している場面では、どちらの価値に重心を置くかで結論が異なってくると考えるからです。楊井参考人によると、世界では活発に行われているファクトチェックが、日本ではまだまだのようでございますが、報道によりますと日本ファクトチェックセンターJFCは先月31日に楊井参考人も紹介された誤情報対策の分野で、世界的に影響力がある国際ファクトチェックネットワークIFCNの加盟団体として、認証されたとのことでございます。憲法審査会としてもこれからの動きに注視していくべきと考えます。
三つ目には、正しい情報をいかに多く発信していくかという点です。悪貨(悪い貨幣)は良貨(良い貨幣)を駆逐する、と言うグレシャムの法則、ここにグレシャムの法則とは、1つの社会で、名目上価値が等しく実質上の価値が異なる貨幣が同時に流通すると、良貨は仕舞いこまれて市場から姿を消し、悪貨だけが流通すると言う法則ですが、この法則の逆のトレンドをいかに形成していくかということです。この点、国民投票広報協議会の存在が重要になると考えますが、後述します。四つ目は、5月25日の憲法審査会において、わが党の國重委員の主張にもございましたが、国民のリテラシー能力の向上をどのように図るかと言う点でこれも重要です。
私はこの点においても国民投票広報協議会がやはり重要になってくると考えております。そして今申し上げた4つの偽情報ないしは誤情報対策のポイントは、国民投票についてネットの場面における公平公正を検討するにあたっても共通するように思います。まずは国民投票における適正なネットCMのあり方や、偽情報誤情報対策を検討する際には、業界団体事業者側や広告主である政党等による自主的な取り組みに委ねることを基本とすべきと考えます。
その上で国民投票広報協議会のあり方が極めて重要であると考えます。国民投票広報協議会の役割や権能につきましては5月25日の新藤筆頭の意見表明の中で、詳細に説明されましたので重複は避けますが、一言で申し上げれば、憲法改正に対する少数意見、反対意見といっても良いかと思いますが、反対意見についても実に公平公正に配慮されている点に注目したいと存じます。特に国民投票広報協議会による①広報の原稿の作成②放送及び新聞広告加えてその他憲法改正案の広報に関する事務、これにはネットCMも含まれなければならないと考えますが、これらが賛成反対ともに公平公正に行われますので先ほど申し上げた正しい情報の提供の観点、国民のリテラシーの観点から大変に重要な意義を要していると考えるわけです。
繰り返しですが、国民広報協議会の行う広報活動の役割が極めて重要です。そこで、できれば事務方によるたたき台の案を作成していただき、そのあり方を具体的に検討し、規程等の策定の議論を前に進めていただくように、森会長を始め幹事会の皆様にご要望申し上げたいと存じます。次に国会図書館が作成しているレポートを参考に、立憲民主党から、欧州各国が国民投票においてオンライン広告規制を実施していることを強調する主張がなされております。しかしこの点については留意が必要であると考えます。一見すると各国が国民投票において強度のオンライン広告規制を実施してるように見えます。しかしレポートの掲載国は、選挙における規定を国民投票に準用すると言うように選挙においても国民投票においても同様の規制を行っている国が多いように見受けられます。わが国は、「橋の上げ下ろしまで規制する」と言われるほどに強度な選挙運動規制を行うのに対し、国民投票運動は原則自由という点が特徴であり、諸外国とはベースが異なると考えます。各国で強度のオンライン広告規制を実施しているという事実だけを強調するのではなく、基礎となる仕組みが異なっていることや、各国では選挙運動と国民投票運動を同等に規制しているなどを踏まえて検討する必要があるのではないかと申し上げて私からの意見表明とさせていただきます。

玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)
国民民主党の玉木雄一郎です。現在の憲法改正手続法には、インターネットを利用して行う国民投票広報協議会による広報についての規定や、協議会の費用で行う政党のインターネット広告についての明文の規定がありません。インターネットはこれだけ影響力のあるメディアになっている以上、協議会がインターネットを利用した広報や、禁止期間における政党等の広報を、広告を行うための法整備が必要だと考えます。協議会がインターネットを利用した広報・広告に関して、何がどこまでできるかを明らかにしないまま、政党等のインターネット広告を禁止してしまうと、過度な規制になり、国民は正確な情報に接する機会を失い、政党等の広告の禁止期間中、国民はフェイクニュースばかりにさらされることにもなりかねません。さらにテレビ広告と異なり個人がSNS等で発信する意見については規制は困難だと考えます。そして個人の発信を制限できない以上、膨大なフェイクニュース情報の発信が予想され、そうしたフェイクニュースの嵐に対して協議会の発信だけで果たして対抗できるのかといった検証も必要です。
例えば前回も言いましたが、「国民民主党の緊急事態条項はナチス時代の緊急事態条項と同じだ」といったフェイクニュースが流布した場合に、それを防止したり停止するために、有効な対策は打てるのでしょうか。協議会から正しい情報を大量に出すようなカウンター攻撃も1案ですが、同時に協議会に何らかのファクトチェック機能や是正措置の機能を持たせることも検討すべきです。例えばフランスには、ビギヌムという政府組織が2021年7月に創設され、外国勢力を含むプラットフォーム上の虚偽または敵対的なコンテンツの電波を監視し検出する組織を創設しています。ただしこの機関は、国民投票の公正性の確保のためだけの組織ではなく、広く外国からの虚偽情報によるデジタル干渉に対抗する機関であり、国家安全保障部局の一部に位置づけられています。
次にフェイクニュース対応に関するプラットフォーム事業者への規制のあり方について一言申し上げます。
フランスでは投票日の3ヶ月前に、偽りの情報、フェイクニュースが拡散されている場合、検察官、候補者等、利害関係者から求めを受けた裁判官は、プラットフォーム事業者に対して、送信停止を命じることができ、裁判官は申し立てから48時間以内に停止に関する判断をおこなわなければならないとされています。その一方でEU全体としては、欧州委員会はデジタルサービスをDSAにおいてもその位置づけが確認された偽情報に関する行動規範、The Code of Practice on Disinformation を更新し、事業者の自主規制にゆだねています。署名者は計34社となり、今年の2月にはMeta、Google 、Microsoft、ティックトックなどを含む30の署名者が署名後初のレポートを提出しています。わが国においても、自主規制と公的規制を適切に組み合わせていくことが現実的なアプローチだと考えます。例えば2020年に成立したデジタルプラットフォーム透明化法のような間接規制の枠組みは参考になると思います。
同法の規制の枠組みは、特定デジタルプラットフォーム提供者に対して自主的な体制整備を自己評価した報告書の提出を義務付け、それを行政庁がレビューする仕組みです。規制の大枠を法律で定めつつ、詳細を事業者の自主規制に委ねる、共同規制これを英語で言うと Co regulatory agreement の手法を採用し、国の関与や規制を必要最小限のものにしています。これは参考になると思います。いずれにしても、誰でもどこからでも発信者になれるインターネット空間においては、このテレビと全く同じ規制は現実的ではないと思われますので、インターネットの特性を生かした規制とすべきであり、その際このプラットフォーム事業者に対する規制のあり方をどのようにするのかと言う大枠についての合意を当審査会でも得ることが必要だと思います。その上で今後の当審査会の運営について、3つ提案したいと思います。まずインターネットを使った広報広告に関する規定や、ファクトチェック機能の創設などをも含む国民投票広報協議会の具体的な役割について定めた国民投票広報協議会の規定案の作成を、ぜひ事務局にお願いしたいと思います。次に、次回が今国会最後の憲法審査会であると思われますので、これまで議論が積み上げてきた緊急事態条項、とりわけ議員任期の延長等について、改めて各党・各会派の意見をまとめた論点整理を行い、今国会における衆議院憲法審査会としての意見の集約を図るべきです。事務局への作業の指示、森会長の取り計らいをお願いしたいと思います。最後に、緊急集会のあり方については、参議院の意見も重要だと思います。ですから国会法102条の8に規定する、参議院との合同審査会をぜひ開催して合意形成を図っていくべきだと考えます。しかし同法3項で、合同審査会を開催するためには両議院の決議によって合同審査会規則を定めることになっていますが、この規則が空振りになっています。ですのでこの規則案の策定についても森会長から事務局に案の策定を指示していただきたいと思います。
次回は今国会最後の憲法審査会です。せっかくこれだけの時間をかけて議論を積み上げてきたわけですから、言いっぱなしではなく、緊急事態条項について改めて論点を整理し、合意を確認し、成果を1つ1つピン止めすることを改めてお願いしたいと思います。私はこの点に関して、前回の階委員からの指摘は、全くその通りだと思います。選挙ができないような事態に備える改憲を議論しているわけですから、次の総選挙前に緊急事態条項の発議や改憲が間に合うようなスケジュールでの審査会運営を行うべきだと思います。この憲法審査会規定の8条では、実はこの審査会は国会の開会閉会に関係なくいつでも開会できると、実は規定されています。ですから事務局に夏休みの宿題をお願いするだけでなくて、我々も働いてしっかりと議論を前に進めて、いつ起こるかわからない緊急事態に対する備えを万全にすることを我々自体がやるべきであることを申し上げて発言を終わりたいと思います。

赤嶺政賢(日本共産党)
日本共産党の赤嶺政賢です。はじめに国民投票法について発言します。私は現行の国民投票法については国民の民意を汲み尽くし、正確に反映させるという点で重大な欠陥があると述べてきました。具体的には、最低投票率の規定がないこと、公務員や教育に携わる者の投票運動を不当に制限していること、改憲案に対する広告や意見表明の仕組みが公平公正なものになっていないことの3点を指摘していました。
自民・公明・維新・有志の4会派が提出した公選法並びの改正案を速やかに処理すべきとの主張が行われていますが、こうした投票法の根本的欠陥を放置したまま拙速に結論を出す事は許されないということをまず指摘しておきたいと思います。そもそも国民投票法は改憲作業と地続きのものです。私たちは2007年の制定当時から国民が憲法改正を望んでいないもとで改憲のための手続法を作る必要はないと主張してきました。今の改憲議論は、安倍元首相が2020年と期限を区切って9条改憲を提示したことが発端です。しかし国民の間に改憲を求める声は広がらず、安倍首相自身が辞任会見で、「国民的な世論が十分に盛り上がらなかった」と認めざるを得なかった事は、この間指摘してきた通りです。5月3日の憲法記念日に合わせて、共同通信が行った世論調査でも、改憲機運が高まっていないと答えた人が7割を超えています。毎日新聞の調査でも、岸田首相の在任中の改憲に反対が47%で賛成の35%を上回っています。国民が改憲を政治の優先課題と考えていないもとで改憲のための議論を行う必要はありません。憲法審査会は動かすべきではないのであります。今、政治が行うべきは、憲法を変えるための議論ではなく、憲法から乖離した現実を正すための議論です。その最大の問題の1つは沖縄の米軍基地問題です。日米両政府が普天間基地の全面返還に合意してから27年が経過しました。普天間の危険性は何も変わっていません。放置されています。2004年に同基地所属の大型ヘリが沖縄国際大学に墜落し、2016年にはオスプレイが名護市に墜落しました。2017年には基地周辺の保育園や小学校にヘリが部品を落下させました。ところが日本政府は事故原因も明らかになっていないのに、米軍による飛行再開を次々と容認してきたものであります。しかも軟弱地盤が見つかり、辺野古の基地の完成には政府の試算でも12年を要することがわかっているのに、それまで普天間の使用を認めるというのが日本政府の態度です。深夜早朝の米軍機の飛行を規制する騒音防止協定があるにもかかわらず、それを守らせるためのまともな交渉も行っていません。発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFASが高濃度で出されているにもかかわらず汚染源を特定するための県の立ち入り調査は米軍が応じないとして実現しないままです。問題の大元にある屈辱的な日米地位協定は、アメリカ政府に改定を提起すらしようとしません。政府の対米従属姿勢のもとで、県民の人権は脅かされ続けているのであります。
そもそも沖縄県民は選挙や県民投票で辺野古新基地建設に反対の意思を何度も表明してきました。民主主義の国の政府と言うのであれば、民意を受け止め計画を再検討するのが当然のことです。ところが政府はアメリカの合意を優先し、辺野古が唯一の解決策と繰り返し県民の民意を踏みにじって埋め立て工事を強行しているのであります。沖縄県は、公有水面埋立法に基づき、沖縄防衛局が提出した設計変更申請を不承認としました。普天間の早期返還につながらず十分な調査さえ行っていなかったからです。ところが政府はまたしても行政不服審査制度を乱用し、同じ政府機関による自作自演で県の決定を取り消しました。このようなことがまかり通れば、憲法が保障する地方自治は破壊されてしまいます。沖縄だけではありません。今国会ではまるで原発事故などなかったかのように、福島県民を置き去りにして原発推進に舵を切る関連5法が強行されました。保健証情報の誤登録等が相次いで発覚したにもかかわらず、医療事故を招きかねない重大問題を放置して、健康保険証を廃止するマイナンバー法も強行されました。非人道的な入管・難民行政を改めず、難民申請中でも3回目以降は送還を可能にする入管法の改悪も押し通そうとしています。憲法がないがしろにされるこうした現実を改めることこそ、政治が最優先で取り組むべき課題だということを強調いたします。最後に先ほどから次期憲法審査会について緊急事態についての論点整理を行うと、このような主張が展開されておりますが、今国会は多岐にわたる自由討議が行われ、論点は緊急事態条項だけではありませんでした。論点整理は行うべきではないと言うことを主張し発言を終わります。

北神圭朗(有志の会)
有志の会の北神圭朗です。本日私からも国民投票法について発言をしたいと思います。まず前提として、国民投票法改正附則4条の検討状況について、私なりの整理をしたいと思います。立法意志については、これは当事者間でも意見が異なっているようなので、ひとまず触れません。むしろ法的にこの条文を見ますと、まず1つは施行後3年を目途とあるので、きっちり3年を期限と考える必要はないと。2つ目は必要な法制上の措置その他の措置を講じるものとするとありますので、当然検討の結果必要なものがなければ措置もいらないと。また法制上の措置その他の措置と、法制上の措置があくまで例示となっていますので、法改正に限ることではないと理解しています。こうしたことから少なくとも国民投票法上、法的に措置する必要性があるのかどうかについては、本審査会でそれなりの広い合意が必要だというふうに思います。私はこれまで発言している通り、外国人の資金については規制をすべきだと考えています。これは法改正を必要とするものですが、ただ議員や政党という限定されたものに対する規制とは異なり、一般人への資金提供を把握することは困難が予想されます。こうした実務面の課題を含めて、引き続き検討しなければいけないと提言したいと思います。次に立憲民主党さんから放送CMの規制に関し、勧誘CMは主体を問わず前期間禁止、意見表明CMは政党等について禁止すべきだという意見が出ています。またネットCMについては政党等による有料広告も禁止とされています。これらも法的措置を伴う話ですが、以前から申し上げている通り、このように規制を加えてしまいますと国民投票運動の自由と国民の判断形成に係る公平公正性との均衡、また表現の自由等への配慮からもやはり慎重にならざるをえません。むしろ憂慮するのは政治活動までが制限されますと、逆に偽情報がどんどん蔓延し、悪貨が良貨を駆逐する恐れが生じることです。この点については、先日の本審査会でも可能な限り民間団体による事実確認、ファクトチェックで対応することが望ましいと申し上げました。ただし同時に、民間団体といってもわが国の場合は体制能力面で必ずしも充分ではなく、また数も少ないため多様性も確保されないことも明らかにしたつもりであります。他方で、諸外国ではこの偽情報対策に政府そのものが取り組んでいることを、ドイツで内務省の連邦選挙管理委員会が選挙過程全般に関して、ファクトチェックの権限を持っている例を挙げながら指摘をしました。本件について2019年に東京海上日動リスクコンサルティングというコンサルタント会社が、『現代の選挙介入と日本での備え』という報告書を出しています。一部を引用すると、「選挙介入は個人、犯罪集団、テロリスト、インターネット上のアナキスト集団等が実行できるが、選挙介入を行う最大の脅威は国家である。国家には他国の国政選挙に介入する政治的戦略的動機がある。また国家、具体的には軍、情報機関、治安機関は自ら選挙介入を行うが、同時に国家は選挙介入の際、代理人を使うことで関与を否定できる」と記述しています。
実際2016年の英国におけるEU離脱の是非を問う国民投票、2016年及び2020年の米国大統領選挙、2019年のオーストラリア連邦議会選挙や2020年の台湾総統選挙等は外国政府による選挙介入があったと明らかにされています。
わが国も人ごとでは済まされないのではないでしょうか。また同文書は、備えとして選挙介入対策等のための超党派委員会の設置、外国人による選挙活動を規制するための公職選挙法改正、そしてプラットフォーマーに対する規制等を提言しています。超党派委員会については、外国政府による選挙介入が行われた場合や、疑われる場合、委員会が選挙介入の事実関係等を調査する権限を与えるべきだとしています。この点については国民投票広報協議会のあり方にも示唆に富んでいるのではないかと思います。また、公選法の改正や、新たな立法等を通じて、外国政府等による選挙活動、選挙介入を明示的に禁止し取り締まるべきであるとも提言しています。民主主義の根幹である選挙において国民の自律的な意思が外国によって阻害されないためにも、我々も責任を持って積極的な姿勢で臨むべきではないでしょうか。最後に、先日新藤幹事より、国民投票広報協議会の課題として3つの規定制定についてのご提案がありました。広報協議会規定、放送及び新聞広告に関する規定、事務局規定の制定です。これらの整備は検討条項を待つまでもなく当然にやらなければなりません。閉会中に先ほどからお話がありますように、事務局にたたき台を作っていただき速やかに議論ができるように会長に采配をお願いしたいと思います。その際、今申し上げたファクトチェック体制の整備を含め、広報協議会の事務局体制を充実したものにすることが重要だと考えます。なお緊急事態条項に関しても、一言申し上げます。これについては本審査会で幾度と無く議論が行われ、論点も概ね出揃ったと言うふうに思います。来週は本審査会におけるこれまでの論点整理がなされることも会長にお願いをして、私の意見とします。以上です。

◆委員各位による発言
小林鷹之(自由民主党・無所属の会)
自由民主党の小林鷹之です。本日は私からは参議院の緊急集会を含めた緊急事態条項に関し、発言をさせていただきます。まずこれまでの討議を経て、参議院の緊急集会はその名称に「緊急」とあるために誤解されることがありますが、あくまでも一定期間内に衆議院の総選挙が実施されることを前提にした平時の制度であることが明らかになったと考えます。参議院の緊急集会の「緊急」とは過去の実例がそうであったように、衆議院解散中に国会同意人事を取る必要が発生したような、急ぎの必要がある時、という意味に過ぎません。そもそも日本国憲法は衆議院の総選挙を実施できない、いつできるか見通しが立たないというような文字通りの緊急事態は全く想定しておりません。そのような事態が発生した場合においてどのように国民の生命、権利、財産を守り抜くかという規定が欠落しております。
参議院の緊急集会について、場面の限定や期間の限定を緩和して、国会権限全般を代行する真の緊急事態に対応できる機関として運用すれば良いとの発言もありました。すなわち衆議院の解散の場面だけでなく、任期満了の場面にも緊急集会を類推適用すれば良い、あるいは憲法54条が規定している総選挙までの40日、特別会招集までの30日を超過したとしても、緊急の場合には法は不可能を知るものではないので、参議院の緊急集会で対応すれば良いといった主張です。しかし任期満了にも類推適用する、また70日を超えても臨機応変に緊急集会で対応するというような憲法の明文規定に反するような重大な判断を一体誰がどのようにして行うのでしょうか。その時衆議院は既に存在しておりませんから、参議院が自ら決めるのでしょうか。それとも緊急集会を求める立場の内閣が自分の都合で決めて良いのでしょうか。二院制国会の例外的措置として、短期間かつ権限が限定された機関として設けられている緊急集会を長期間かつ権限限定が緩和された強力な組織とすることの判断権を内閣あるいは参議院にのみ与えてしまう事は極めて重大な問題を引き起こしてしまうのではないでしょうか。しかもその時の内閣は総理を始め多くの閣僚が衆議院議員の身分を失った職務執行内閣に過ぎません。やはり明確な要件のもとで憲法に議員任期延長の規定を設けて、衆議院参議院の二院制国会が内閣の行政権行使をチェックするといった、憲法が想定している通りの仕組みを作ることが憲法の趣旨にかなうのではないでしょうか。また現行の公選法に規定されている繰延投票を活用すれば良いという主張がなされる時もあります。しかし肝心の被災地の選挙について、今週はこの選挙区、来週はあの選挙区、と五月雨式に選挙が行われることへの違和感につきましては、すでに複数の委員から発言があった通りです。参議院の緊急集会において選挙期日全体を先送りする特別法を制定すれば良いと主張されることもあります。衆議院が事後にチェックするから良いのだと言うのかもしれませんが、そのような立法が行われてしまった後で仮に衆議院が不同意とした場合どのようなことになるのでしょうか。その効力を訴求させれば、その法律のもとで行われた選挙は無効になって大混乱を引き起こすでしょう。そもそも不同意議決をした衆議院議員自身が無効な存在とならざるを得ないといった矛盾、自己否定に陥ってしまいます。他方その不同意の効力は、将来に向かってのみ生じるとすれば結局、参議院一院の議決のみで重大な事項が決定された事実を衆議院は追認するしかないことになります。いずれにしても大問題だと考えます。なお、議員任期延長等の手当てをしたとしても、国会権能を維持できない究極の事態についても想定しておくことが必要です。わが党の新藤筆頭、柴山幹事からも既に指摘があった通り、いかなる場合であっても超法規的な政策判断が行われることがないよう、緊急政令や緊急財産処分のあり方についても制度化しておくことを私は検討すべきと考えます。最後に会長にお願いをいたします。本日も既に何名かの委員からご発言がありましたけれども、ここまで討議が深まってきたことに鑑みまして、参議院の緊急集会を含めた緊急事態条項に関し、衆議院法制局により総括的な論点整理を行うことをお願いしたいと思います。以上を申し上げて私の発言を終わります。

城井崇(立憲民主党・無所属)
立憲民主党の城井崇です。今回は国民投票におけるインターネット広告規制について諸外国の実例を紹介しつつわが国の国民投票法においても導入する必要があることを申し上げます。ネット広告規制については諸外国の制度に関する報告書をまとめた国立国会図書館の参考人招致を私から求めていますが、残念ながらいまだに実現していません。そこで今回はその報告書をもとにした資料を配布して、これを参照しつつしつつお話しいたします。なお諸外国では「オンライン広告」と言う表現が一般的ですが、ここではわが国の立法例等にならい「ネット広告」と表現します。初めに資料の1の通り、諸外国のネット広告規制の内容を概観すると、規制の内容は国によって幅がありますが、透明性表示、アーカイブ設置、支出規制、外国人等規制、偽情報等拡散規制、ターゲティング等規制、商業広告禁止といったものがあります。未施行・審議中のものも含まれていますが、充分参考になる内容です。尚、各国では、国民投票と選挙で一体の規制となっていることには留意が必要です。今回は代表的なものとして表示義務、支出規制、偽情報・誤情報等の拡散規制、商業広告禁止を取り上げます。
まず資料の2「表示義務」です。これは透明性の確保を目的とする規制であり、英国やニュージーランドでは広告社等に対して、名前及び住所の表示義務を課しています。またアイルランド、米国カリフォルニア州、EUの規制案でも同趣旨の規制が設けられています。このように表示義務はネット広告規制の手段として一般的なものといえます。ネット広告の適正利用を確保するために、非常に効果的な規制手段であり、わが国においても導入すべきです。
次に資料の3「支出規制」です。これは公平性の確保を目的とする規制です。英国やニュージーランドに限られているようですが、この両国では支出額の上限を設けています。具体的な上限額等の制度の詳細は、国によって異なりますが資金力の大小によって広告料に格差が生じることを防ぎ、公平性を確保するために支出金額の上限を設定し、報告等の義務を課すという手法は合理的なものと評価されています。わが国においても国民投票法に支出規制を盛り込むべきです。次に資料の4「偽情報・誤情報等の拡散規制」いわゆるフェイクニュース対策です。フランスでは不正確あるいは誤解させる主張や批判については、急速審理裁判官が配信を中止させることの処置を命ずることができます。またアイルランドでは、選挙委員会が偽情報・誤情報の監視調査を行い、オンラインプラットフォーム等に対し削除通知等を発することができます。もちろんこの問題は、言論の自由と密接に関わるものであり、公権力による直接的な内容規制には極めて注意が必要です。先ほど奥野委員からも言及がありましたように、立憲民主党から提案している広報協議会とファクトチェック団体との連携を実現していくのとともに表現の自由や公職選挙法との関係を整理する点からも総務委員会並びに政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会等とも連携した集中的な議論を行うことを森会長に求めます。
最後に資料の5「商業広告」すなわちネット広告の規制です。フランスでは国民投票が行われる月の初日前6カ月間及び投票日までの期間、インターネットを用いた商業広告を国民投票に関する宣伝を目的として利用することが禁止されています。このような外国の例を踏まえると、政党等によるネット有料広告を禁止するという立憲民主党からの提案はネット広告規制の手法として合理的だと考えられる一方、政党等以外によるネット有料広告の禁止についてはさらなる検討が必要だというふうに考えます。
以上の諸外国の実例を踏まえ、ネット環境の変化に対応した実効的な規制は可能かつ必要であることを訴えて私の発言といたします。

三木圭恵(日本維新の会)
日本維新の会の三木圭恵です。毎週安定的に開かれてきた衆議院憲法審査会も、会期が延長なく終われば、残すところ来週のみとなりましたが、残念ながら著しく前進したとは言い難いのではないでしょうか。緊急事態条項の国会機能維持において、国会議員の任期を延長することについては、参議院の緊急集会の範疇や期間について、70日以内の平時の制度であるという主張と、平時のみならず緊急時には70日を超えて適用しても構わないのだという主張があり、参考人を招致してご意見をお聞きしましたが、結局結論は持ち越されています。国民投票に関してはCMの規制に関してこの課題が解決するまでは国民投票ができないとの主張をされる党もあります。また令和4年4月27日に提出されました3項目については、その内容が開票立会人の選任に関わる規定整備、投票立会人の選任要件緩和、ラジオによる政見放送にFM放送を追加、という案件でさえ、審議に入ることすら未だなされていません。9条についても言いっぱなしの状態です。この憲法審査会で議論の題目が「緊急事態条項の国会機能維持」「9条」「国民投票」と一つ一つ結論を見るのではなく、焦点が移り変わってしまった事は残念でなりません。一巡目で小野委員の方から、緊急事態条項の取りまとめを法制局で行うこと、国民投票広報協議会の制度設計を行うこと、この2点について提案がありましたが私からも重ねて要望をいたします。森会長どうぞよろしくお願い申し上げます。憲法改正手続に関して衆議院憲法調査会の報告書では、高見勝利参考人の意見として、金森国務大臣は第90回帝国議会において96条の規定する国民投票制度について、憲法制定権を保持するのは国民であり、また憲法制定権と国会によって行使される立法権とは観念的に区別されるものであることから、国の制度の1番基本的なものについては、国民が直接にその意思を表明することによって決するのが妥当であると考えられ、したがって国会が憲法改正案を発議し、国民が投票でこれを決めるという方式を採用したのである、という主旨の説明をしていると記されています。つまり日本国民は憲法制定権を所持しながら、戦後一度もこの権利を行使したことがないという状態が続いているといえます。世論が高まっていないとのご意見もございますが、実際に国会が真摯に課題を提示し、国民の憲法制定権をお示しすることによって、世論の喚起は起こると考えております。国民の皆様に発議を通して、現在ある課題を様々な憲法改正原案としてお示ししてこなかったことも世論の高まりを引き起こさない要因の1つであるのではないでしょうか。
日本国民の中にはこの憲法制定権を行使したい、自分も国民投票で1票を投じたいと切に願っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういった方々から見れば現状が憲法と合致していない、または憲法に加えるべき項目が発生しているのに加えられていないという事は、国会が憲法改正案を発議していないからで、我々国会議員が国会の責務を果たしていないということになるでしょう。議論の取りまとめもしない、憲法審査会も開くべきではない、絶対に憲法改正をしない、と言うご意見は現在の実情を省みて必要なものまで排除していることになりはしないのか、冷静に判断することが必要ではないでしょうか。また憲法審査会では多数決は適さないので、なるべく意見の一致を見るまで議論を続けるのだということが延々と堂々巡りをしている状態を引き起こしているのではないでしょうか。あと残り1回ですが、このような状況を打開すべく、先ほど小野委員の発言にもございましたが、次の国会の憲法審査会に向けて、今後の進め方やスケジュール等、幹事会でご検討頂き、この審査会でお示しいただけますように、また先ほど玉木委員からもございましたけれども、閉会中もこの憲法審査会を開くことを可能だと言うことでございますので、できれば法制局のほうにだけ夏休みの宿題と言うことではなくて、私たちも夏休みに一生懸命、夏期講習という形で議論を深めることも可能であるというふうに思いますので、森会長にお取り計らいをお願い申し上げまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。

國重徹(公明党)
公明党の國重徹です。本日は国民投票法のCM規制につきまして、立憲民主党の階幹事あるいは中川幹事にご質問をさせて頂いただければと思います。立憲民主党のお考えは、政党について、まず放送CMについて勧誘CMのみならず意見表明CMも禁止する、またネットCMについても勧誘CM及び意見表明CMを禁止すると、こういったお考えてあると承知しております。まず放送CMの規制についてですが、政党については勧誘CMのみならず意見表明CMまで禁止していることにつきましては、選挙の場面で政党による政治活動CMは禁止されていないと、このことを踏まえますと国民投票について選挙以上に規制するものであるように思われます。規制の厳しさが逆転してしまっており、これは国民投票運動は原則自由であるという基本的な理念、考え方に反するものではないでしょうか。また仮に特に政党について放送CMを規制すべきという理由があるのであれば、政党間で申し合わせをして、例えばその上限を規制する定めるといったより緩やかな方法も取り得るのではないでしょうか。以上について改めてご見解をいただければと思います。
次にネットCM禁止についてお伺いしたいと思います。政党のみネットCMを禁止するという点についてですが、政党以外はネットCMを自由に行えることから、ネットCMにおける情報発信の内容に偏りが生じてかえって言論空間が歪められる危険性があるのではないかという懸念があるように思います。この点につきましては5月25日の憲法審査会におきまして私も指摘をさせていただいたところでありますが、この点についてのお考えも合わせてお伺いさせていただければと思います。以上です。

森英介(憲法審査会会長)
またの機会に整理をして答弁するそうでございますので、続けてください。

國重徹(公明党)
すみません。私の答えの時間も併せて5分ということで予定してましたので特にこれ以上無いんですけど、仮に、広報協議会で代替できるというのであればですね、選挙にも公営の政見放送がありますし、またこういった広報協議会の枠があることが、選挙運動と国民投票運動の規制の厳しさの逆転現象自体を許容するのかと言う点については、検討の必要があると思いますので、この点も踏まえて、またぜひご意見をいただければと思います。以上です。

田野瀬太道(自由民主党・無所属の会)
自由民主党の田野瀬太道です。発言の機会をありがとうございます。本日は参議院の緊急集会を含めた緊急事態条項に関して発言させていただきたいと思います。まず先週6月1日審査会での立憲民主党の階幹事のご発言についてコメントをさせていただきます。階幹事は、「緊急時における議員任期延長の措置が必要と本気で考えているならば、衆議院解散中に選挙困難事態が生じても、二院制国会が機能するための措置を講じてから解散するのが筋だ」と述べられました。その上で、「現時点で衆議院を解散することを容認する方々は、選挙困難事態には緊急集会で対応すれば良いとする我々のような立場か、そもそも選挙困難事態は起こり得ないといういわゆるお花畑の立場か、いずれかであると指摘しておきます」と発言されました。階幹事、だからこそ我々は憲法改正して、憲法の明確な要件のもとに発動される議員任期延長などの措置を講じることは一刻の猶予もならないと主張させていただいてるのであって、そのことがそもそも解散中に選挙困難事態が起こり得ないというお花畑の立場とされるのは、いささか乱暴であると思います。階幹事ご本人の意図と反して、憲法改正による議員任期延長を主張するならば、憲法改正が実現しない限り衆議院解散はできないはず、という誤ったメッセージと受け止められかねず、心配をいたしておるものでございます。ぜひ引き続き真摯で建設的な議論をこれからも一緒に進めてまいりたいと思っております。
さて立憲主義は、憲法によって国家権力を縛り恣意的な権力行使を防ぐことが本質である事は確かですけども、その前提といたしまして国家機関に適切に権限を分配するということも本質であることを忘れてはならないと思います。だからこそ両院同時活動の原則の重大な例外である参議院の緊急集会についても①内閣が案件を決めて集会を求め、②参議院が審議決定し、③事後に衆議院が同意する、として3つの国家機関に権限を分配することにより、単独の国家機関への権限集中を防ぐ仕組みになっているわけであります。憲法が予定する70日を超えて、さらに権限も拡大して参議院の緊急集会でいつまでも対応するというのは憲法が衆議院・参議院・内閣に分配した権限のバランスを崩し、その結果、権限行使に対するコントロールが不十分になり、国民の権利自由が不当に侵害されることにもなりかねません。またなるべく選挙を早く実施すべきと言うのはその通りです。しかし緊急事態発生時には、選挙人名簿が作れるかどうかもわからず、選挙活動もできず選挙広報を発行できるかどうかもわからず、ポスターも印刷することができず、投票日当日に投票のみを行うという選挙になるかもしれません。このような選挙で有権者が自分の思いを託す1票を投じたということが言えるのでしょうか。実際2020年4月26日、新型コロナウィルス感染症のために、緊急事態宣言下で行われた静岡4区の補欠選挙では、投票率が34.1%となり、2017年の衆議院選に比べて約20ポイント低下いたしておるわけでございます。そうであるならば、憲法上の明確な要件に基づいて議員任期延長を行い、参議院一院ではなく、職務執行内閣でもなく、衆参両院と内閣が揃った状態で緊急事態対応を行い、平常時に戻った時点で可及的速やかにきちんとした形で選挙を行うという事の方が国民の権利を守ることにつながるものと私は考えるものであります。最後に、先程来、各委員もおっしゃっておりましたけれども、森会長に参議院の緊急集会を含めた緊急事態条項に関しまして、衆議院法制局によります総括的な論点整理を行うことを私からもお願い申し上げて発言を終わります。ありがとうございました。

吉田はるみ(立憲民主党・無所属)
立憲民主党の吉田はるみです。発言の機会をいただきありがとうございます。国民投票の意義は、国民がわかりやすく賛否を表明するものであります。2016年6月に行われたイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票。レファレンダムの際もこの1点を問うものでした。一方で、国会法の第68条の3にはこう規定されています。「前条の憲法改正元案の発議にあたっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」つまり各事項ごとに国会で採決をし、そしてその各事項がそのまま国民投票に付されることになります。この事項が複数になると、そもそも論点が多すぎて判断が難しいです。例を挙げます。憲法改正案に、9条とそれ以外の複数の各項が含まれるが、国民投票時の広告は9条の改憲案に集中して広告が展開されたとします。ここで懸念されるのが、憲法改正案の9条以外の項目に、目が向けられなくなり、結果、他の条項でも考慮すべきことが隠れてしまいます。このような憲法改正案パッケージの国民投票の賛否は果たして国民の意思が反映される公正な国民投票と言えるのでしょうか。
加えて、日本国憲法の改正手続に関する法律によると、変更する事項ごとに1枚ずつ投票用紙の賛成・反対欄に丸をつけます。一回一回投票用紙をもらって賛成・または反対に丸をつけて投票箱に入れます。
事項が複数になれば、この用紙を受け取り、ブースで投票用紙に記載し、そして投票箱に行くという往復を何度も繰り返すことになり、混乱する人も多く発生します。1回の国民投票の機会に賛否を判断する事項の数の制限について、論点を整理すべきです。また内容において関連する事項であれば、1度の投票しか許されないことも問題です。例えば緊急事態条項に関する憲法改正案が議員任期延長や緊急政令、自由権の制限等、改正事項のたくさん盛り込まれた改正案であるならば、その憲法改正案全体への賛否ということになり、変更または新設される各事項ごとの賛否は問えなくなります。この場合、国民の意思が十分に反映されなくなり極めて問題です。このような重要項が多数盛り込まれた全体に対する賛否を一度に問うような十把一絡げのやり方は絶対してはならないと思います。
国会法68-3の内容において関連する事項が、過度に広がらないようその明確な定義を設けるべきです。もしこのままの憲法審査会の運営の仕方で、仮に憲法改正発議が行われて国民投票に付されたなら、国民にしたら唐突感が否めません。であるからこそこの憲法審査会の議論を国民に広く開き、伝える必要があります。
4月20日の憲法審査会で、私はNHK中継を要求しましたところ、森会長は「幹事会等で協議します」とお答えいただきました。協議はされましたでしょうか。お伺いいたします。またこの時、馬場筆頭もNHK中継に大きくうなずいてご同意いただきました。今も大きくうなずいていただいて変わらぬお気持ちでいらっしゃるということで、ぜひ国民の皆様に伝える努力、これ無しに私はこの憲法の議論は深まっていかないというふうに思います。国会が最大限の努力をして、国民に伝える行動なくして、このままの議論が継続されるのであれば、それは国民に伝える熱意のない、責任感のない、伝わらないことをむしろ好都合と考える権力者や改憲派が恣意的に憲法改正を目論んでいると理解されても仕方がないということを厳しく指摘させていただき、私の発言を終わります。森会長、ぜひ幹事会での結果を教えてください。

森英介(憲法審査会会長)
ただいまのご質問の件につきましては、引き続き協議をいたします。一義的にはNHKが決めることでございます。

吉田はるみ(立憲民主党・無所属)
憲法審査会からはそういったリクエストは挙げられないということでしょうか。

森英介(憲法審査会会長)
それにつきましては引き続き協議をいたします。

吉田はるみ(立憲民主党・無所属)
はい。会長よろしくお願いいたします。ちょっと最後に付け加えさせていただきます。もし仮にNHK中継がダメであるなら、他のやり方でももしあれば先生方各位から、何を持って国民に伝えられるのか、ツールメディアそういったものを考えて、やはり国民に伝える努力、その行動をすべきというふうに私は考えますので、ぜひこの議論も深めさせていただければと思います。以上です。

森英介(憲法審査会会長)
ご主旨については十分理解しまして引き続き協議をいたします。

船田元(自由民主党・無所属の会)
自民党の船田でございます。去る5月25日に新藤筆頭幹事から、広報協議会の役割について、極めてわかりやすいペーパーを出していただきまして、ありがとうございました。私ども平成19年にこの憲法国民投票法のオリジナルを作ったメンバーでありましたので、その辺の議論をうまくまとめていただいたかなというふうに思って感謝いたしております。しかしながらやはり、広報協議会の運営の規定であるとか、それからどのメディアを使うか、あるいは政党の運用枠をどのようにするか、広告における具体的な規定、あるいは事務局そのものの規定というのはまだ決まっておりませんので、これはできるだけ早く規定を整備するということでぜひお願いをしたいというふうに思っております。それから今日、多くの方々から、この広告規制のあり方について、様々なご意見がありました。ただ私はやはり平成19年に加わった1人として、制度設計としまして、この国民投票運動これは人を選ぶ、あるいは政党を選ぶ、そういう選挙ではなくて、政策を選ぶ、こういう風に思っておりますので、できる限り投票運動については自由であるべきということで設計させていただきました。したがって同時にこの広告につきましても、できるだけ原則は自由でやるべきだというのが基本の原則ではないかというふうに思っております。ただ全く規制なしという事でも困る部分ございますので、そこはやはり広報協議会の役割というのをもう少し拡大をして、あるいは付け加えて様々な懸念に対応することを私はできると思ってますので、ぜひご検討いただければと思っております。
例えばテレビのCMにつきましては、民放連からはCM考査というところでかなりこの賛否の分量、バランスの調整はある程度できるという事、あるいは放送時間帯についても、うまく整理をすることができるのではないかと。総量規制は難しいけれども、一定のこのバランスを取るということについては、放送局のCM考査でできるというご返事をいただいておりますので、それに広報協議会がきちんと関与して、それをまた監視をする、あるいは監督をするこういったことによって公平公正なテレビCMができる可能性は私はあると思っています。
それからネット広告あるいはSNSを通じた意見発表、意見開陳この問題については大変難しい問題があると思いますけれども、私はこれだけのボリュームで行われている様々なネットの活動これを制限するという事は、本来難しいことだと思っております。したがって広報協議会においては、例えば制限はできないけれども、先程来出ておりますフェイクニュースを見出してそれに規制を加える。これについてはファクトチェックをする機関が既にできあがっておりますので、しかも複数ありますので、そこと広報協議会が連携をするという事は極めて重要な手段であると思っております。それから、外国勢力の侵入など、様々なことにつきましても、広報協議会がしっかり監視をし、場合によっては、勧告権を持つということも考えておく必要があるということで、この広報協議会の役割の拡大、これをぜひ私は進めていただきたいと思っております。以上でございます。

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