夏の終わりに虫と戯れる
新卒で入社した会社を年末に辞めて東京から実家に戻ったが、手持ち無沙汰の日々が続いた。手持ち無沙汰と言うよりも、何となく何も手につかず、落ち着かないと言うほうが正しいのかもしれない。何年かぶりの自分の部屋は、高校卒業後に家を出た時とほとんど変わらない。
何日かすると部屋でじっとしていることに耐えられず、ジャケットを羽織り、用もないのに家を出る。とは言っても、都会と田舎でもないこの地元に遊べる場所なんてほとんどない。それでも、少し外の空気を吸いたくて、玄関横に停めてある父の自転車