夜明け前(「森での一夜」より)
「森での一夜」より
空が白み始めた。倒木に座りながら辺りを見渡す。真っ黒だった暗闇が少し薄らいでいる。目の前の焚火は小さいが、じんわりと身体に熱が伝わってくる。夜中に目が覚め、その後はずっと眠れずに焚火の前で時間をつぶしていた。頭がぼんやりとして鉛のように重い。唇はかさついて、少し痛い。昨晩、歯を磨けていないから、口の中が妙に粘つく。気持ちが悪い。バックパックからペットボトルを取り出し、口に水を含む。ペッと勢いよく吐き出す。バスの集合時間は6時だったが、帰り支度をもう始めよ