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身体の中に残っている眠気を追い出すように、冷たい水で顔を洗う。ザァァと蛇口から出る水がいつもよりも冷たく、気持ちが良い。タオルで顔を拭き、鏡の前に立つ。喉ぼとけの周りを何度か触る。髭の剃り残しがどうにも気になって仕方がない。チクチクとする短い髭をつまむ。どうせ、すぐに生えてくるからまあいいか。まだ剃ったばかりの髭が青々としているのを見ると、げんなりしてしまう。この髭の濃さは、父親譲りである。「お父さん、この前来てくれたけど、あの髭の濃い人だろ?」と小学校の頃に通っていた床屋で