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「求職者支援訓練」という国の制度に人生を救って貰ったはなし

緊急事態宣言の延長が決まり「○○が倒産しました」というようなニュースをよく見聞きするようになりました。多くのお店が閉まり人通りがまばらになった小田原の街を歩いていると「20年続けてきたお店を閉店する事になりました。」といった張り紙が貼ってあったりして、自粛による経済的な影響の深刻さを身近なものとして感じています。

私はWebディレクターをしていてもともと週に1、2回小田原でリモートワークをしていたので、打合せが全てオンラインになり東京に行く機会が無くなった事以外にはあまり影響がないのですが、「Webサイトを作って欲しい」という、我々に仕事を発注する側のお客様の経営状態が悪くなれば当然我々の仕事も減っていくので、影響が表に出てくるまでに少し時差がある業界という所かと思います。

そんな中、何か今noteに書くべきこと、誰かの役に立てる情報があるかな?と考えていて、表題の「求職者支援訓練」という制度を5年前、30才の頃に活用してWeb業界でのキャリアをスタートした時の事を書いてみようと思いました。

30才目前の29才で転職に失敗し無職になり、途方に暮れていた自分が今こうしてなんとかやれているのは確実に「求職者支援訓練」という素敵な制度のおかげなので、現在進行形で転職などを検討している人にとって少しでも有益な情報になれば嬉しいです。

まずは簡単な自己紹介と経歴から

35才、妻と娘の3人で神奈川県の小田原に住んでいます。普段は都内の零細Web制作会社(社員数5人)にロマンスカー通勤しながら、週に1、2回小田原でリモートワークするような生活を送っています。

Web業界に入ったのは30才からで、20代はアパレルの企画会社でデザイナーアシスタントの様な仕事をしていたのですが、毎日終電、残業5時間、土日も仕事(全てサービス残業…!)な日々に耐え切れずに逃げるように会社を辞めたのが28才。その後転職に失敗し29才の時に「死にたいな…」と思いながら藁にもすがる思いで飛び込んだのが訓練校のアジャストアカデミーという学校でした。
https://adjustacademy.com/shien/index.html

以前のnoteにも書いたのですが、Web業界に入る前と後では年収が倍以上になりましたし、何よりも「会社に行くのが嫌じゃない!」という20代の頃の自分には信じられないくらい恵まれた環境で働くことが出来ています。何度も言うと怪しい感じがしちゃうのですが、そんな大きな変化のきっかけをくれたのが求職者支援訓練という制度なので、タイトルに「人生を救って貰った」なんていう大袈裟な感じのタイトルをつけました(本当の事なので)。

公共職業訓練と求職者支援訓練の違い

ググって貰ったらいろいろと詳しいサイトが出てきますが、ざっくりいうと「職業訓練」という括りの中に「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」という2つの制度があります。2つの一番の違いはその対象者で
「公共職業訓練=雇用保険の受給資格のある人
「求職者支援訓練=雇用保険の受給資格のない人
となります。細かく言ったらいろいろな違いがありますが、両方とも無職の人がこれから仕事をする為の知識、スキルを身に付ける機会を国や都道府県(認定された企業)が提供しており、基本的に無料で勉強することができます。

無料で学べて月10万円+交通費が貰えちゃう神制度!

私が29才でアジャストアカデミーに通い始めた時、まったくお金が無かったのでこの制度に本当に助けられました。10万円を貰うには細かい条件があるのでそれをクリアする必要があるのですが、一人暮らしで経済的に余裕が無い人ならだいたい当てはまるかと思います。

1.本人収入が月8万円以下
2.世帯全体の収入が月25万円以下
3.世帯全体の金融資産が300万円以下
4.現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
5.全ての訓練実施日に出席している
(やむを得ない理由がある場合でも、支給単位期間ごとに8割以上の出席率がある)
6.世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
7.過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない

詳しくは厚生労働省のページ(職業訓練受講給付金(求職者支援制度))を参照ください。

私は半年間「WEBデザイナー・ディレクター養成科」というコースに通っていました。専門学校でWebデザインの勉強をしようと思ったら年間150万円はかかるので、半年分としても75万円。そして6カ月間10万+交通費を貰えれば60万円以上。合計で140万円程度の金額になります。

すごくないですか?140万円貯金するのってとても大変ですよね。それを国が支援してくれるなんて本当に神制度だな!と今でも感謝しています。ちなみに月8万円を超えなければアルバイトも出来るので、私は給付金の10万円とアルバイト代で一人暮らしをしながら学校に通っていました。

ネットでとても評判の悪い職業訓練

今回このnoteを書こうと思った一番の理由はココです。「職業訓練 口コミ」みたいなワードで検索すると「学校のレベルが低い」「受講生のレベルが低い」「設備が古い」みたいなネガティブな口コミが溢れています。

私が通っていたアジャストアカデミーは、運営母体がアジャストというWeb制作会社で、そこがアカデミー事業をやっているという学校だったので設備も人も全然問題無い(むしろとても恵まれていた!)のですが、実際あまりよろしくない環境の学校も多いようです。

アジャストアカデミーの先生が「いぜん自分が働いていた学校は…」という形で話をしていたのですが、「公共事業なので最低限国のルールに則って授業をしていれば安定的に金が入る。」というようなスタンスの学校もあるようで、生徒を成長させようとか、本当に職場で役立つスキルを身に付けさせよう、みたいな意識が無いという話をしていました。

そして当たり前ですが学校に通う人は皆仕事をしていない無職の人たちなので、基本的な知識のレベルや年齢層もバラバラですし、給付金目当てでたいして勉強する気の無い人たちがいたりと、混合玉石(石が多い)になりますよね。受験して入学するような学校とは違うので当然といっちゃ当然なんですが。

そんな評判が悪い職業訓練ですが、事実として私はこの制度のおかげで30才から人生をやり直す事ができましたし、上手く活用すればとても有益な制度だと思っているので「学校の選び方」とか「利用の仕方」についてもう少し深堀してみたいと思います。

学校の選び方

① 学校の見学会、説明会には必ず行こう
→ 当たり前の話ですね。ネットで噂ばっかり見ていてもしょうがないので、自分の目でどんな学校か確かめにいきましょう。
② 学校の倍率を聞こう
→ 見学会、説明会に行ったら倍率は確認しましょう。アジャストアカデミーは2倍程度のようですが、倍率は高い方が生徒のレベルが上がるので良いです。試験は面接なので学力とかは分かりませんが「明らかにヤバい人」は面接で落ちます。
③ 学校が本業のところはあまりおススメしない
→ アジャストアカデミーの良いところは母体がアジャストというちゃんとしたWeb制作会社だという事です。現役で働いている人たちがすぐ横で普通に働いているからこそ学校側の情報も常にアップデートされますが、学校だけのところは情報が更新されず古くなりがちです。

基本的にこういう学校の「講師」という職業は「現場」で通用しなくなった(半分引退した人)がやるものなので、特にWeb業界の様な変化の大きい業界では「現場に近いこと」はとても大切です。
④ 学校の就職率とか気にしてもしょうがない
→ 専門学校の「就職率が99%です!」みたいなのと同じで、職業訓練校の就職率なんて全然当てになりません。統計は分母を弄ればいくらでも自分達の都合の良い数字にできるので(例えば、就職できなかった人を「就職希望者」にいれないで計算するとか)、この手の数値は意味がありません。

問題なのは「あなた」が就職できるかどうか?です。そしてあなたが就職できるかは、あなたが会社がお金を出して雇いたいと思うスペック、スキル、マインドを持っているか?にかかっています。

「東京大学を卒業しました」だったら意味がありますが「訓練校A」「訓練校B」どちらを卒業しても意味はありません。

受講期間を「修業期間」として最大限利用しよう

ネットで職業訓練の口コミを見ると「受講生がアホばっか」とか「学校のレベルが低い」みたいな書き込みが多く存在します。それは事実としてあると思いますが「レベルが低い→行く意味ない」は違うと思っています。

まず先ほど①②③のポイントで上げたようなところを気を付けながら「なるべく良い環境を選ぶ」という事が大切です。

その上で、仮にレベルが低い学校に通う事になってしまっても、④で書いたように学校のレベルなんてあなたの就職には関係ありません。例えば半年間学校に通うとして、その半年間金銭的な補助を受けながら勉強に集中できる「時間」が手に入れられる、というのが職業訓練の最大のメリットです。

私がアジャストアカデミーに通っていた時のクラスメートでKさんという男性がいました。Kさんは当時36才?でずっとプロのミュージシャンをやっていて正社員としての社会人経験が全くありませんでした。

「36才、正社員経験無し」こんなかなり詰んでる経歴のKさんでしたが、給付金の制度を活用しながら、半年間プログラミングの勉強だけに集中する為に最低限の支出で生活し、寝る間を惜しんで勉強していました。

圧倒的な勉強量で学校で習うような内容は1カ月もせずに終わらせ、その後は独学でプログラミングを勉強したKさんは、学校卒業後すぐに正社員のフロントエンジニアとして就職。その後も順調にキャリアアップをし、今では知らない人はいない超有名IT企業でエンジニアとして働いています。

Kさんはかなり特殊な例だと思いますが、私がここで言いたい事は「真面目に学校に行って授業の内容を理解すれば就職できる。」なんて甘い話はそりゃあ無いよ、という話です。

22才で大学卒業した若者は「若い」という圧倒的な才能があるのでそれが可能ですが、30才を越えておじさん、おばさんになった私たちには当然そんな素敵な事は起きません。学校で学ぶ事に加えてどれだけ自分で努力できるか?しかもその努力を就職活動で見える形、アピールできる形にできるか?が全てです。

大人になったら一つの事を集中して学ぶ「時間」を作る事はとても難しいです。子供と違って「生きる」ために必要なお金を稼がないといけないですからね。でも、上手く国の制度を活用すればその貴重な「時間」を手に入れる事ができます。職業訓練の最大のメリットはここなので、学校に対して過度な期待をせず、自分に必要な知識、スキルを貪欲に身に付けていく姿勢が大切です。

リアルな採用基準について

この文章を読んでる方で「Web業界いいな!」と少し興味を思ってくれた方がいるかもしれません。実際私はWeb業界に入ってとても良かったなと思っていますし、Afterコロナの世界においてインターネットがますます私たちの生活の中で重要度を高めていくことは間違いないと思います。

他の業界と比べて若い業界で、業界内での移動も多いので「転職」に対するネガティブなイメージが少ないのもこの業界の特徴かと思います。転職なんて当たり前、みんなそう思っています。

でも、職業訓練を受ければ誰でもWeb業界で仕事ができる!という夢みたいな話では無いことは上に書いた通りなので、最後に訓練校を卒業した人たちを採用する側になった私が考える「リアルな採用基準」について少し書いて終わりにしたいと思います。


▼年齢
→ 未経験では20代までが基本。もともとグラフィックのデザイナーとか雑誌の編集をやっていた、というような求められるスキルが近い人なら35才前後まで可能性がある。40代になって未経験は難しい。もともとの経歴×Webというような形じゃないと。

▼作品&スキル
→ Webデザイナー、プログラマーになりたいならこれが一番大事。作ってすぐに見せられるのがこの業種の良いところ(厳しいところ)なので、年齢が高くなればなるほど「若さ」という圧倒的な才能を補えるレベルの作品を作る必要がある。数も大切。1つじゃなくて、最低3つは「おぉ!」と思えるものが欲しい。

▼コミュニケーション能力
→ Webディレクターの方はこっちが一番大事。もともと営業とかでバリバリやっていた人なら35才ぐらいまで可能性があると思う。

面接する側になって分かるのはやっぱり「年齢」ってかなり大きいよなぁ、という事です。年齢を重ねていればその分求める経験やスキルも高くなるし、会社にとってはコストが高いので採用に慎重になります。20代、30代の方、動くなら時代の流れを読みながら早めに動いた方がいいよ!

長くなってしまいましたが、職業訓練に対するネットの悪い口コミを見て「やめとこ…」と思っていた方に、少し違う視点からの情報を提供できていたら幸いです。必要な状況にならないのが一番ですが、国が提供しているすごくお得で頼れるセーフティネットなので、もし必要になったら上手く活用してみてください。

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