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二十二作目 閉じた花弁の中で 親子百合SSシリーズ

「あなたの母親であれて良かった。と思うと同時に、後悔しています」
「それはどうして?」
「他人なら、この恋は許されたから」
「許されないよ。親子じゃなくても、私たちは女同士だから」
「それも、そうね。こうして人目をはばかるのにも疲れたわ。いっそおおっぴらに……」
「お母さんは私と離れてもいいの?」
「残酷な子ね。どちらを選んでも、私は苦しいわ」
「だから、私の何倍も感じるんだね」
「そうなのかも。だからもう少しゆっくりしてくれる?」
「いや。可愛いお母さんが見たい」
「こんなおばさんでよければ」
「こんな小娘でよければ」
「ふふ」
「あはは」
「こんなに愛していても、難しいものね。好きでもない人との夫婦生活はいつまででも続けられるのに」
「好きだから、つらいんだよ。私たちは、うれしいことを人に聞いてもらえない」
「そうね。あなたはこんなにかわいいんだって。みんなに教えてあげたいわ」
「うん。お母さんはこんなにきれいなんだって。みんなに教えてあげたいよ」
「似たもの同士で」
「だからこそ苦しいんだね」
「愛してるわ。誰よりも」
「大好きだよ。誰よりも」
「終わりが来るまで、いっしょにね」
「約束。だね、大好きだよ。お母さん」

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