36番 木防已湯(もくぼういとう)

漢方薬にはそれぞれ出典があります。例えば、有名どころでは、葛根湯なら「傷寒論(しょうかんろん)」大建中湯なら「金匱要略(きんきようりゃく)」です。ちなみに「傷寒論」も「金匱要略」も、もとは1冊の「傷寒雑病論」。「傷寒雑病論」のうち、急性疾患(≒感染症)を対象としたのが「傷寒論」、慢性疾患(=雑病)を対象としたのが「金匱要略」です。

そもそも「傷寒雑病論」とは、「神農本草経」「黄帝内経」とならぶ、中国医学三大古典の1つ。いずれも漢の時代に作られたもの。ちなみに「神農本草経」は、各生薬を解説した本。「黄帝内経」は生理学、病因・病理学、摂生・養生法などをまとめた総論です。

時代が進み、明の時代になると、李時珍が「本草綱目」という生薬の解説書を、龔廷賢(きょうていけん)が「万病回春」を書きます。六君子湯の出典がこの「万病回春」です。

今後は漢方薬の勉強の時に、出典も気にしてみます。

使用目標(証)

本方は、比較的体力が低下した人の、呼吸困難、浮腫、動悸などを目標に用いる。腹部では心窩部に苦満感と他覚的な抵抗・圧痛(心下痞堅)を著明に認める。脈は結代、不整などを呈することが多い。一般に、咳嗽、口渇、尿量減少、顔色不良などを伴う。

組成

防已(ぼうい) 石膏(せっこう) 桂皮(けいひ) 人参(にんじん)

勝手にポイント

木防已湯は「心不全治療薬」。防已が利尿薬、石膏がβブロッカー、桂皮が血管拡張薬、人参が強心剤… のイメージ。

木防已はアオツヅラフジ、防已はオオツヅラフジ。日本では木防已と防已は同じものと解釈される。利水薬。

桂皮は血管拡張作用。

石膏は鎮静薬。

人参は脾胃の気を補う薬。