37番 半夏白朮天麻湯(はんげぎゃくじゅつてんまとう)
「酒は百薬の長」といったことはよく耳にしますが、まあ額面通りには受け取れないと思ってます。一時期、ポリフェノールは身体にいいから赤ワインを飲む、といった言説が流行りましたが、大切なのは量の問題。有効だと言われるポリフェノールを摂取しようとすると、ワイン何倍飲んだら良いのって話です。
「ワインが(健康には)いい。」「いや、焼酎がいい。」「蒸留酒ならなんでもいい。」とポジショントークをききますが、「ビールがいい。」はあまり聴きません。ビールと言えば、麦芽。では麦芽がはいった漢方薬ってあるの?! そので登場するのが、今回は半夏白朮天麻湯です。(ちょっと、無理矢理のイントロかしら…)
使用目的(証)
本方は、比較的体力が低下し、消化機能が虚弱で四肢冷感がある人が、中等度の持続性頭痛・頭重感・頭冒感、めまいなどを訴える場合に用いる。腹部は腹壁の緊張がやや弱く、心窩部に軽度な抵抗と振水音を認めることが多い。一般に、悪心、食後のねむけ、食欲不振、全身倦怠感などを伴う。
組成
天麻(てんま) 半夏(はんげ) 白朮(びゃくじゅつ) 陳皮(ちんぴ) 茯苓(ぶくりょう) 沢瀉(たくしゃ) 黄耆(おうぎ) 黄柏(おうばく) 麦芽(ばくが) 乾姜(かんきょう) 生姜(しょうきょう) 人参(にんじん)
勝手にポイント
天麻はラン科のオニノヤガラの根茎。めまい、頭痛の薬。半夏白朮天麻湯にしか登場しない。
半夏は湿を取り除き、上に上がった気を下ろす。
白朮は利水剤。
陳皮は柑橘系の皮。理気で湿をとる。
茯苓・沢瀉は五苓散にもあった利水剤。
黄耆は止汗、利尿。血圧降下作用もあり。
黄柏は熱を下げる。
麦芽は大麦を乾燥させたもの。ビール、ウイスキーの原料。胃薬。麦芽が入っているのも半夏白朮天麻湯のみ。
生姜、人参は脾胃に作用。
真武湯との使い分けは、冷えが強い患者さんには真武湯。めまいが強い患者さんには半夏白朮天麻湯。