見出し画像

「ナッジ」って知ってますか?

「ナッジ」とは、人間の特性や行動原理に着目し、自発的な行動を促すきっかけを提供する手法。健康経営では、無関心層の健康増進や働き方改善といった場面で有効だ。但し、施策をする側の利益を優先するのではなく、行動する本人の利益を重視する必要がある。現場における、理想と行動ギャップを乗り越えるために役立つ手法の1つであるといえる。

ナッジは人間の行動や意思決定の特性に着目して、望ましい行動を後押しする。必ずしも正論だけで動かない人間らしさを踏まえた「人間志向のアプローチ」といえる。

例えば、人は選択肢が3つになると、真ん中を選択する人が増える。日本では「松竹梅の法則」心理学的には「極端性の回避」として学術的にも確かめられている。このように人間は案外、直感的に判断して行動を決めており、必ずしも熟慮をしているわけではない。行動経済学も同様だ。

ナッジの使い方としては、例えば、「認知」に関する行動特性で、「興味がなければ認知しない」という場合、顕著性を向上させ、とにかく目に留まるようにさせる。「理解」に対しては、時間をかけて理解するにはストレスが発生してしまうので、ラベルやグラフで可視化して、わかりやすいようにする。「選択」という行動特性には、今のままでいい(現状維持バイアス)、得る喜びよりも失う痛み(損失回避)、みんなで通れば怖くない(同調効果)があり、それに対しては、選択肢を減らしたり、表現を変える、多くの人がその行動をしていることを伝えるようなことがナッジとして有効だ。「意思決定」には、約束は守りたい(一貫性の原理)、自分を守りたい(認知不協和)ということに対して、行動することを宣言する、予定を書くなどしてコミットメントを促す、人格に訴える、人格訴求を行うということが有効であると考えられる。

健康経営において、まさに、関心のない経営者、動こうとしない従業員(無関心層)に対して、どのようにアプローチするか。上述したナッジの手法をうまく利用することが望ましいといえる。

例えば、働き方改革にも有効だ。日勤と夜勤の看護師の制服の色を変えるといった「直感的デザイン」のナッジ手法を取り入れたことで、夜勤明けの看護師の残業が減った事例もある。また、長時間残業を希望する場合、事前申請制度を導入するといった、「わざわざ変更する」というコストを負わせることで、望ましい選択・行動を促す「デフォルト設定」「オプト・アウト方式」と呼ばれるナッジ手法は、ナッジを知らずとも、日々の仕事の中で、活用しているのではないだろうか?(36協定の特別条項適用申請方法を結構面倒な手続きを設定しており、現場の管理職から方法を変えてほしい、面倒だという声が多い。残業を減らすためにはそのままにしておくか、それとも本当に会社としての効率性を失っているのか、微妙なラインであり、悩ましいといった実体験もある)

ナッジを活用する注意点として「本人によってよりよい選択を」というナッジの目的が見失われ、結果的に悪いナッジになりかねない。誘導者の利益を優先し、誘導したい選択肢以外を目立ちにくくして極端に選びづらくしたり、特定の選択肢に誘導したりする等の倫理的に問題があるナッジを「スラッジ(ヘドロ)」という。

スラッジにならないためには、

①誘導する行動は、対象者の利益・健康・幸福を増進するものであるべきで、誘導者の利益を優先してはならない。

②透明性(説明責任)を確保する必要があり、対象者を誤解させるような誘導をしてはならない。

③対象者が望まない時の離脱は、容易であることが望ましい。

また、ナッジ導入後の効果分析、次なる打ち手等、改善を繰り返すことが重要だ。

ナッジは内発的動機付けである

ナッジは心理的要因に対して、望ましい行動へと「そっと後押し」する内発的動機づけとしての仕掛けである。心理的要因以外の環境要因への対応が行動を促すことに有効であれば、ナッジにこだわらないことも重要(要するにシンプルに考えられるケースは、そのように実践すればいいだけ)。

行動を促したいというときの手段の1つとして、ナッジが有効だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?