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映画メランコリックの感想

一部でそこそこ話題の映画「メランコリック」をアマプラで観ましたのでネタバレ有感想を書き留めます。

正直めちゃくちゃ面白かった!という訳ではないんですけど、この映画のテーマはなんだろうかと考えた時に人によって色んな解釈がありそうだなぁと思ったので、そういう意味でレビューを書くのは面白いと思いました。ので書きます。


あらすじは以下、Wikipediaからの引用。

『メランコリック』は、2019年公開の日本映画。 閉店後に殺人の場所として使われる銭湯を舞台とした、サスペンス・コメディー。 監督は田中征爾、出演は皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹など。

この映画、監督はサラリーマンとして働きながらも土日を使い低予算で作られたという背景がありながらも非常によくできていて、じわじわと人気が上がり、その様は第二の「カメラを止めるな」と言われていたようです。

内容について細かく解説するのは大変なので、申し訳ないですけどそこは観ている前提ということで割愛して、いきなり本題のテーマの話から。

この映画のテーマを僕は就職への恐怖感をなくし、自分を固めていく成長物語だと思いました。

そしてこの映画を語る上で、キーワードが3つあると思います。


◆他者の目

劇中で主人公・鍋岡が繰り返しされる質問があります。それが「東大出たのになんでアルバイト?」主要登場人物である松本、東、ヤクザの田中までこの質問をします。
映画の冒頭では同窓会に行くか迷うシーンがあり、そこでもフリーターである鍋岡は肩身を狭そうに隅っこにいます。会社を起こし成功している同級生は女子からチヤホヤされているシーンが対照的です。
このように映画冒頭では他者からの目を気にして生きている鍋岡の姿がよく描かれています。
しかし、紆余曲折を経て物語終盤では社長となった同級生に堂々と銭湯事業の経営を相談しにいくシーンがあり、自分の中で折り合いがついて成長している様が描かれています。


◆幸せとは

暗殺前日に松本と居酒屋に飲みに行く印象的なシーンでは、幸せとは何かについて語り合う場面があります。学校を卒業し、社会に解き放たれて幸せとは何かについて一考するということは誰しもが通っている所だとは思うので、非常に共感できる名場面です。ここは是非映画本編を観ていただきたい。
思い悩む鍋岡に対し、松本は毎日生きるのに精一杯で幸せについて等考えていなかったと言います。幸せにならないと生きていっちゃいけないんすか?という本心の言葉が重く響きます。
映画の最後に鍋岡は幸せとは何かという結論を一旦出すのですが、そこは実際映画を観て確認して欲しいです。


◆仕事感

東大を卒業して鍋岡が始めた仕事は銭湯の清掃のアルバイトというとても誰もが憧れる仕事ではありませんでした。それどころか、死体の処理という正直最底辺とも言える仕事についてしまいます。
しかしここが面白い所なんですけど、死体の処理の仕事をいざ始めると、結構乗り気なんですよね。これは報酬が良かったからだという考えもあるとは思うのですが、仕事あるあるを表現してるのだと感じました。
仕事に就く前はこんな仕事したくないとかこんなのは底辺の仕事だとか色々思うことがあるのですが、いざ始めてみるとその仕事にはそれなりの面白さややりがいがあったりで、意外と自分に合っていたという経験があると思います。一方最高の仕事につけたと考えていてもいざ始まるとそうでもなく辛くてやめてしまう等の逆のパターンもよくありますよね。
仕事とは自分に向いているかどうかは意外と分からず、その環境や人間関係が大事なんだという表現だと私は感じました。
また、東大卒のガリ勉である鍋岡とヤクザに使われるヒットマンである松本が同じ仕事を通じて親友になるシーンは感慨深く感じます。

就職という形で自分の将来を固定することに恐れていた鍋岡が、なし崩しではあれど紆余曲折を経て銭湯の雇われ店長という立場になるという結論はとても共感できるものがありました。現実はドラマや映画のように綺麗ではなく、誰もが仕事において大成功するわけではない中で、それでも自分の将来を選択し成長する姿に心を打たれます。


物語の顛末を知ると、何も知らない人は思うでしょう。東大出て銭湯の雇われ店長かよ…と。しかしそこに至る過程を知っていると見方が180度変わり、顛末が最高のハッピーエンドに思えるのです。

つらつらと書きましたが、アルバイト先の銭湯が人殺しの現場でその解体作業をさせられるというめちゃくちゃなシチュエーションでありながらも感情的には非常に共感できるものであるという稀有な映画だと思いました。
観たことない人はグロテスクな表現も少なくとても観やすい映画なので是非一度観てみて下さい。皆様はどのような感想を抱くでしょうか。ではまた!

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