【正答率76.3%】保有耐力横補剛の配置間隔に関する問題【一級建築士試験】
【問題】
保有耐力横補剛の間隔は、400N/mm^2級に比べ、490N/mm^2級の鋼材による梁の方を長くする必要がある。
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【解説】
答えは「×」。
「400の時は○○、490の時は△△…」 なんて念仏のように唱えて暗記しようとするのはエネルギーの無駄だ!
この解説を読んできちんと理解すれば、この問題はラッキー問題に変わるだろう!
保有耐力横補剛とは?
鋼材の種類で横補剛の間隔が変わるの?
❶保有耐力横補剛とは?
既に学習を進めているみんなはこの「保有耐力横補剛」という言葉は聞いたことがあるかもしれないね。
知っているかもしれないけど、この横補剛材って鋼材の座屈を防止するために入れているんだよ。
座屈については、他のnoteでも解説しているけど、座屈って確か30cm定規を机と手の平で挟んで、手の平に力を入れるとぺこってなってしまう現象だったよね?
では、この定規の真ん中を、もう片方の親指と人差し指でつまんで、もう一度ぐっと力を入れてみよう。
すると定規はペコっとはしなくなるはずだ。
この親指と人差し指が、いわゆる「補剛材」の役目を果たしているんだ。
今度は、定規に圧力をかけていた手をどけて、今度は定規の上に車を乗せてみよう。
人差し指と親指で定規をつまんだだけでは、車の荷重に耐えられずに定規は座屈破壊してしまうはずだ。
この座屈破壊は本来、定規が持つ軸耐力を発揮する前に生じてしまう。 最大限の耐力を発揮するために、家族総出で定規のあらゆるところを指でつまんで、その補剛間隔を狭くしてあげることが有効だ。
つまむ箇所が多ければ多いほど座屈がしにくくなるってことだね。
もうわかっているかもしれないけど、この保有耐力横補剛は、
「保有」している「耐力」を存分に発揮するために梁の「横」っぱらに入れる「補剛」材
を略したものなんだ。
なんだか「あけおめ~、ことよろ~」みたいだね!
❷鋼材の種類で横補剛の間隔が変わるの?
定規がぺこっとしないように親指と人差し指で定規をつまんだことを思い出してほしい。
荷重をかけると、確かに座屈はしにくくなった。
それと同時に定規をつまんだ君の指にはとても大きな負荷がかかっているのがわかるはず。
ここで一旦ここまでの話しを整理しよう。
❶横座屈しないように梁には補剛材が必要
❷本来の力を発揮するためには、補剛材は多く配置した方が座屈しにくい。
例えば、10の力で軸圧壊する定規と100の力で軸圧壊する定規があった場合、本来の力は前者は10、後者は100だ。
当たり前だよね? では同時にこれらの定規に圧力をかけていき、本来の力(10or100)を発揮しようとした場合、どちらの定規をつまんだ時が指先に強い力が働くかな?? もちろん後者だよね?
本来の力を発揮するために、梁の耐力が大きければ大きいほど、横補剛材に要求されるスペックも本数も多くなる。
すなわち、耐力の大きい梁にはたくさんの横補剛材が必要で、たくさん横補剛材を配置すると、その補剛間隔は短くなる。
最後に、 均等間隔に配置された場合の、保有耐力横補剛の条件は、弱軸まわりの細長比λyを下式で得られた細長比以下にする必要がある。
λy≦170+20n(400N級)
λy≦130+20n(490N級)
ここに、
λy:弱軸周りの細長比
n:補剛材の本数
仮にどちらの場合もnに1を代入すると、
400N級の場合、λy=190となり、
490N級の場合、λy=150となる。
細長比は小さいほど座屈しにくいので、補剛材を1本入れるならその細長比は490N級の方が要求される細長比が小さくなる。
すなわち、490N級の方が同じ条件の元では断面二次半径をアップ(=サイズアップ)しなければ保有耐力横補剛となる条件は満足できないよ。
ということになる。
以上より、
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保有耐力横補剛の間隔は、400N/mm^2級に比べ、490N/mm^2級の鋼材による梁の方を長くする必要がある。
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とした設問は誤り。
【まとめ】
保有耐力横補剛とは、“保有”している“耐力”を存分に発揮するために梁の“横”っぱらに入れる“補剛”材
梁の耐力が大きくなればなるほど、補剛材に要求されるスペックは高くなる。
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