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『多様性の科学』からの学び

 先週末に『多様性の科学』(マシュー・サイド著)を読みました。

 事例豊富で大変読みやすい本でした。いくつか気付きを得たので、この本を読み進めながら取ったメモを振り返りながら、備忘録的に気付きを整理しておきたいと思います。

☆★☆ マシュー・サイド著『多様性の科学』を読んで
 
■「反逆者のアイデア」が集団の創造力を高める
大事なことは異なる見方をしている、建設的な批判があってこそ、集団は創造力を発揮するのだ。

■個人の力よりも集団のつながりから生まれる「集合知」が重要なのである
「集合知(時に集団脳とも書かれています)」は密な社会的集団の中で育まれ、知恵やアイデアの共有や伝授が行われていく。そして、人々が複雑につながり合う中で、新たなアイデアや技術が生まれる。イノベーションは社会的ネットワークの中で大勢の多様な頭脳が生み出す「創造力の賜物」である。

■しかし、多様性があっても無知な集団では「集合知」は高まらない
対処すべき問題に密接に関連した知識、知見、経験を持つ多様な人々が集まらないと「集合知」、すなわち集団からの相乗効果は生まれない。ただ多様性が高い集団であるだけでは乗り切れないのだ。一定の知見や知識を有しているからこそ、多様性もまた活きてくる。

■「信頼」というフィルターがネガティブに作用すると集団を盲目的にしてしまうことがある
 フィルターバブル、エコーチェンバー現象。この2つは異なるものだが、どちらも多様性が持つ可能性を閉じ、画一的な思考に陥る要因となる。
「信頼」は集団が多様性を活かす上で重要だが、それがフィルターとなって人を盲目的にさせてしまうこともある。

■視点があるから盲点があるのだ
画一化の罠。画一的な視点にとらわれていると、盲点に気付けなくなる。その盲点に気が付かせてくれるものこそが多様性である。集団の中で異なる角度から物事を見ている人がいるからこそ、思考の枠組みから抜け出すときの「反逆者のアイデア」が生まれる。ここで大事になるのは「第三者のマインドセット」である。

■人がどのように物事を捉えるかには、文化的背景が影響している
人に視点をもたらすものは、自身の考え方の枠組み、あるいは期待や予想の枠組みである。だから、異なる文化的背景を持つ人が集団の中にいることで高い「集合知」が生まれる。画一的な組織では盲点は見抜けない。これがただ一人の賢い個人と「集合知」の差でもある。

他にも、
・尊敬型ヒエラルキー vs 支配型ヒエラルキーの違い
・権威勾配の心理が多様性を活かす機会を失わせる
・バンドワゴン効果(同調行動)によって情報カスケードが起こる
・後知恵バイアスや同類性選好という特徴
などが記憶に残っています。

特に記憶に強く残っているのは、人は視点を持っているからこそ盲点に気付きにくくなること、信頼がフィルターとなって人を盲目的にしてしまうという2点。組織の中で一定の物事を見る視点が揃ってくるのはそれが組織として機能しているからこそであると思いますし、そこには常に相互に信頼で結びついた関係性(ネットワーク)が働いているからこそ組織が機能する。しかし、皮肉なことはそれが要因となって集団は多様性の可能性を閉じてしまうこともあるということ。
だからこそ、建設的な批判、反逆者のアイデアを受け止めるマインドセットを持つこと、フィードバックし合う習慣、違いがあることを良しとする組織文化が重要になるのだと考えます。

『多様性の科学』は折に触れて読み返してみたい本です。多分、その時々の自分が置かれている環境や状況によって、この本を読んで気付くことは違ってくるような気もします。

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