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政府税制調査会での発言録

勿凝学問438


何を話したのかを忘れる前に、自分のためにメモを

第3回会議(2024年6月4日)

○権丈委員 EBPMと年金課税について話をします。国際経済学者のバグワチという人がいるのですが、その人の流れをくむ政治経済学者のマギー、ブロック、ヤングという3人は、どうしてこうも補助金を渡していく技術、手段がどんどん不明瞭になり複雑になっていくのだという問いを立てて考えていき、そういう政治過程のモデルを作っています。
彼らが作った仮説に基づくと、有権者がある程度これは補助金を渡しているものだというのが分かってくると、そういう知識を持っていくとなお一層不明瞭な制度の方向に進んでいく。最適不明瞭選択という仮説を出してくる。
 この最適というのは、彼らは政治経済学者ですから、彼らが立てている最適というのは得票率極大化行動の意味での最適なのですが、そういう仮説を立てていて、この仮説の行き着く先というのは彼らが言うわけですが、デッド・ウエイト・ロスがどんどん大きくなっていくブラックホールのようになっていくという、本の名前にもブラックホールと書いているのですが、そういう仮説を彼らは立てていく。
 私は今世紀の初め頃、昔は支出側面で補助金を渡していたのが、いつの間にか税の側面から補助金を渡していくように世界的に変わっていくのはなぜなのだろうかという疑問を持っていたときにこの仮説に触れていて腑に落ちていくわけですが、高度経済成長期の末期、歳入の伸びが鈍化した頃から歳出面から補助金を分配するという比較的誰の目にも見える手段から歳入面における租税支出、つまり、tax expenditure、ここでいう租税特別措置を通じて補助金という見えにくい手段に変化していったという文章を私は今世紀の初め頃、書いていたのですが、それ以降、一層不明瞭さを増していったようにも見えたりもします。
 ということで、アダム・スミスという人は、親方がもうけるために日頃どういうことをしているかということをよく分かっておりまして、いっぱいそういうことを書いているのですが、そういう観点を参考にしますと、私は今日も言われていた租税の3原則、公平・中立・簡素を満たすことこそが実は成長志向の法人税だと言うこともできるのではないかと思っております。
 ということでEBPM関係の話は大変ですが、やってもらわないと困る話ですので、とても重要なところだと思っておりますので、ぜひ前向きに進めてもらいたいと思います。
 もう一つ、年金関係ですが、2013年の社会保障制度改革国民会議には、「公的年金等控除や遺族年金等に対する非課税措置の存在により、世帯としての収入の多寡と低所得者対策の適用が逆転してしまうようなケースが生じている」とあります。といっても、この問題に関わる事柄は複雑に絡み過ぎていて、どこから取りかかっても行き詰まるのではないかと思えるのが私の実感なのですが、加えて、公租公課の話も関係してくるので、これは税の問題なのか、年金の問題なのかということもあります。
 しかし、この方面が抱えている課題は大きいですので、今回は来年が5年に一度の年金改革になっています。せめて高齢期の就労と年金をめぐる調整については、長年の懸案事項となっている年金の高在老と高所得者の年金控除等を関係づけて課題の解決に向けて先に進めてもらえればと思っております。 以上です。

第2回会議(2024年5月13日)

初めましてと言いますか、税調で、はじめて発言をさせてもらいます。
私は、社会保障という所得の再分配制度をずっと見てきたために、給付と財源調達をひとセットにしてみる習慣が身についていて、財源調達のみを切り離して論じることを苦手としています。
例えば、今回のこども子育てのための支援金制度にしても、この給付は、これだけ世の中に意義があるという話とセットに、新たな再分配制度がもたらす社会的便益と適合した財源調達の方法を考えていくことになるわけですが、給付は給付、財源は財源というように切り離して論じる事は、私には難易度が高すぎます。
今のような再分配国家、福祉国家全盛の時代に、絶対君主制の時代に生まれたカメラリズム的な、国家の収入と支出を分離した形で議論をすれば、支出側面で社会保障を悪く良い、その悪い制度の負担を国民に強いるというストーリーにならざるを得ません。だから、五公五民キャンペーンに簡単にやられてしまうんだとも言いたくもなる。

消費税にしても、世間相場では、逆進的だと問題視されているわけですけど、みんなに平等に給付を行う社会保障のために消費税を使うとすると、負担マイナス給付のネットで見れば、低所得者はマイナスの負担、高所得者はプラスの負担になる。そうしたネットの負担額をひとりひとりの所得で割った平均税率は、所得が増えるにつれてマイナスからプラスへと徐々に高くなって累進的です。
したがって、逆進的と批判されている消費税を用いた社会保障目的消費税を充実すればするほど、本日の資料27頁にある、ジニ係数は小さくなっていく。良いことじゃないかと思うんですね。
ピケティも言うように「万人にかなりの拠出を求めなければ,国民所得の半分を税金として集めるのは不可能」なわけですから、財源調達側面だけをみれば、ピケティの国フランスが付加価値税に頼ったように、万人が関わる社会保険も含めて逆進的とも言われる方法に福祉国家は頼らざるを得なくなります。

今回の資料は先ほどの27頁で『所得再分配調査』を使ってくれていることに、とても好印象を持っていまして、人々の生活水準に関係するのは、当初所得から税・社会保険料を控除して、医療・介護、保育サービスなどの現物給付も含まれた社会保障給付を加算した再分配所得でありまして、当初所得から税・社会保険料を引いた可処分所得、手取りではないのになぁと思ったりもする。

税だけを切り離して考えるのが苦手で、社会保障と税を一体的に考える癖があるので、どうもそういうふうに考えてしまうわけです。
主税局の人には私の言うことには違和感があるかとも思われますが、そのあたりは、まぁ、社会保障という再分配制度を長く眺めてきたようだから仕方がない、ダイバーシティの時代だからと諦めて、多めにみてもらえればと思います。今後ともよろしくお願いします。

第1回


欠席


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