暮らしをデザインするパーマカルチャー 安曇野パーマカルチャー塾

パーマカルチャー。どこか新鮮な響きを持つこの言葉は、パーマネント(持続的・永久の)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)を合わせた言葉です。
1970年代、タスマニア大学で教鞭をとっていたビル・モリソンとデビット・ホルムグレンによって体系化された実践的な学問で、発祥の地オーストラリアでは学校教育にも取り入れられています。
生態系が持つ生産力を最大限に活用し、多種多様な要素を有効に配置すること。
生態系を成す一員として〈持続可能な〉環境を自らつくり出していくことが重視されています。

パーマカルチャーが生まれた背景には、カウンターカルチャー(対抗文化)やオルタナティブな道の模索、自然回帰に連なる環境保全の運動がありました。
近年ますます〈持続可能な〉社会の必要性が叫ばれるにつけ、パーマカルチャーデザイン(計画、企画、設計)は、個人や地域を中心に、行政や国際NGO団体の働きかけにより、世界に普及しつつあります。

日本においては、『パーマカルチャー』(農文協)が1993年に出版され、1996年に神奈川県・津久井郡藤野町にパーマカルチャー・センター・ジャパン(PCCJ)が設立されました。
実習や座学、また、海外のパーマカルチャーサイトやエコビレッジの見学ツアーなどを通してパーマカルチャーを学んだ人が、自分の生活に取り入れたり、塾やワークショップを開催したりして、草の根的に少しずつ広がりを見せています。
また、パーマカルチャーを用いた技術指導が、JICA(独立行政法人国際協力機構)により、ヨルダン農業省に対して行われました。

個人の視点で見ますと、個々人の自立と全体の調和を考えた新しい地域社会のありかたに対する実践と言えます。
が、日本においては戦後の高度経済成長の過程で失われつつある資源循環型の生活や地域経済の見直し、そしてそれらを再生、修復させることと言えるかもしれません。
そのためには、伝統文化や知恵を学び、自然界のしくみを観察し、さらに新しい知識を合わせて築き上げていくことが大切です。

パーマカルチャーは自給自足、自立を目指しますが、たんなる食糧の自給に留まらず、都市生活においても適用されます。
なぜならパーマカルチャーとは自分の生活、地域、環境全体に関わる生き方・暮らし方でもあるからです。
病院や薬に依存するのではなく自分で健康な身体をつくる(セルフケア)こと、地域・その他のコミュニティーに関わること。地域通貨(経済)、教育、建築、メディア(伝達)など、私たちの暮らしに密着しています。

循環を考え、自然エネルギーを活用したり、排出・廃棄されるものを再利用して、環境に対して負荷を少なくすること。
太陽や風のエネルギー、雨や水の流れや土など、自然の働きを十分に利用して機能させ、人の労力の流れを考えることで、無駄を省き、効率を良くします。都市でも、エネルギーを効率的に利用するための工夫はできるでしょう。

また、じっくり観察して、そのものの価値や役割を見つけることも重要でしょう。これらを工夫することは愉しくクリエイティブなことです。パーマカルチャーは、私たちの日々の営みに直接関わります。
シンプルに〈心地よい〉と感じる暮らしにシフトすること。暮らしの場を…、自分を…、意識してみることから”はじめの一歩”が始まるのかもしれません。

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