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栗原康(アナキズム研究者)×勝山実(ひきこもり名人)対談編

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政治学者であり、独自な文体で新しい回路のアナキズム世界観を構築している栗原康さんと、ひきこもり名人として、飄々とひきこもり安心生活をユーモラスに啓蒙している勝山実さん。 おふたり…
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栗原康さん(アナキズム研究)✖️勝山実さん(ひきこもり名人)対談

アナキズム研究の政治学者にして、個性的な文体をもち、多数の著書がある栗原康さん。飄々としたユーモアセンスがひきこもり界随一の“ひきこもり名人“こと、勝山実さん。 おふたりにコロナ禍について、オンラインについて、著作についてなど、さまざまに語り合っていただきました。栗原さんの直近の活動は「図書新聞」などに発表した書評などをまとめた本の書評集、『アナキスト本を読む』。また、名エッセイ『はたらかないで、たらふく食べたい』、初単著『大杉栄伝ー永遠のアナキズム』、伊藤野枝の評伝名著『村

栗原康さん(アナキズム研究)✖️勝山実さん(ひきこもり名人)対談・2

言葉だけだとどうにもならない 栗原:ぼくもどちらかというと、ずっと部屋にひきこもっていても大丈夫なほうだったのですが、逆にオンライン授業をやったことで「あれ?」みたいな。いい意味でもわるい意味でも、変な出会いがない。おどろいて身体に震えが走るような出会いがないんですよね。 ーーやはり週一回東北に行くことが日常的なところから抜け出るいい日なんでしょうね。1日かけて授業をやって帰ってくるルーティン。でもぼくは、勝山さんはどうかはわかりませんけれども、ちょっと「コロナ疲れ」がき

栗原康さん(アナキズム研究)✖️勝山実さん(ひきこもり名人)対談・3

一遍上人聖絵 (ここで栗原さんのパートナーさんが登場。しばらく勝山さんが発行している、Zine(ミニコミ誌)の豆本、『LOVE 寂聴』の話で盛り上がる) 栗原:勝山さんに会いたいと言ってたので。ぜひとも、と。 勝山:光栄です。 栗原:ぼくが勝山さんの名前を出したわけじゃなくて、かの女が*模索舎でたまたま『LOVE 寂聴』を買ってきて、“こんな面白いのあったー”と言って、ゲラゲラ笑いながら帰ってきたんですよ。うおお、勝山さんじゃん、って。 勝山:すごい偶然ですね(笑)

栗原康さん×勝山実さん 対談 後編・1

(前編からの続き) はたらかなくても、たらふく食べたい 勝山:名著『はたらかないで、たらふく食べたい』(ちくま文庫 2021)が文庫になりましたよね。 栗原:これが勝山さんとの出会いのきっかけですね。 勝山:この本をはじめて知ったときは、まだ未熟者だったので、「はたらかないで、たらふく食べたい」とはいかがなものか? なんて思っていたんですよ(笑)、でも本を読んですぐに折伏されました。はたらかないだけじゃない、たらふく食べたいまで言わなければいかん、ということを学びまし

栗原康さん×勝山実さん 対談 後編・2

ビラのように、書きたいことを書く 栗原:『菊とギロチン』の監督や役者さんたちからもエネルギーをもらったし、なんといっても憑依する相手がギロチン社ですからね。死に向かってエンジン全開で突っこんでいく。振りきれてます。 ーーそれもあるのかな。勝山さんはどう思います、最近の栗原さんの表現については? 勝山:私は最高だと思うけど、一般の人はついてこられるのかなって考えちゃいます。例えば『村に火をつけ、白痴になれ』(岩波書店)は誰が読んでも文句なしですよね。これにケチつけられる人

栗原康さん×勝山実さん 対談 後編・3

こじらせニヒリズム ーー雑誌に『紙の爆弾』というタイトルのものがあるけど、まさに栗原さんは紙の爆弾投げつけてる感じがするんですよ。やっぱりピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」の唐突な暴発力とか、ロックの唐突なる衝撃みたいなものを紙で、文章で表現している感じがするわけです。だからいわゆる「小説家」でなくていいけど、研究者というより、作家路線が栗原さんの本領が発揮できる分野かなという気がしますね。評伝を書いたりとか。 栗原:広い意味で、「文学」であればいいなと。 ーー