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電力と市場①

初対面の方に「どのようなことを研究されているんですか?」と聞かれて、「電力の市場やシステムを研究しています」と答えると、「電力の市場・・・?」という反応をされることが多い。電力と市場という2つの言葉は、直感的に結びつきにくいものだ。よく分かる。

ざっくりいうと、電力にも卸売市場があり、そこでせり(入札)が行われ、需要と供給によって価格(スポット価格)が決まり、小売の事業者を通じてお客さんに販売される。野菜や魚と同じように。
ものすごく暑い日や寒い日で電力需要が上がったり、発電所が故障して供給できる電力が減ると、需要と供給が逼迫して卸価格は上がる。
春の温和な日やGWは電力需要が低下する一方、そういうときには太陽がさんさんと照るために電力供給は増え、供給がダブついて卸価格はゼロに近づき、時には一部の電力を捨てることになる。最近ニュースでよく聞く出力制御というやつだ。
そしてもちろん燃料費が上がるなど、コストが上がっても卸価格は上がる。
どちらも野菜や魚で同じようなことが報じられたのを聞いたことがあるだろう。

その卸売市場で売り買いされるものは何かというと、主に電力量(エネルギー)だ。こちらの日本卸電力取引所のサイトから毎日の30分ごとのスポット価格(卸電力価格)を見ることができる。しかし、発電所(や今後は蓄電所)が電力システムに提供してきた価値はエネルギーだけではない。発電所や蓄電書が提供する様々な価値がアンバンドル(バラ売り)されて、コモディティとして取引がされている。例えば、容量、アンシラリーサービスなどだ。

電力市場は、主に電力の物理的な性質と生活必需品という性質により、他のコモディティの市場とは異なる特徴がある。常に電力供給と消費を一致させなければいけないという「同時同量」、貯蔵コストが非常に高いこと、価格のボラティリティの高さと価格上限規制(卸、小売とも)、輸送制約の強さ、電力が交流であることに伴う性質などだ。こうした特徴が、電力市場を他のコモディティ市場よりも複雑なものにしている。一方で、コモディティの市場を分析するための様々な前提知識や経済理論の多くを使えるのもまた事実である。他のコモディティとの共通点と相違点を正確に把握することで、電力市場の理解を進めることができる。

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