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錦鯉 -今月の魚病対策-

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季節に先駆けた錦鯉の魚病対策について。 錦鯉愛好家の皆様に読んでいただけると幸いです。
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2023年2月の記事一覧

救急箱の用意を-2月の魚病対策-

急に水温が下がったときなど、鯉の体表の照りがなくなり、ごく薄く白っぽい感じになることがありますが、これは必ずしも前述した寄生虫等によるものではなく、水温の低下による粘液分泌の低下と粘液のゲル化によってみられるもので、俗にゆう”風邪ひき”状態です。 以上のような鯉の体表の白濁症状は1月、2月によく見られますので、月に1度の過マンガン酸カリの投与を行うと予防になります。このように、池全体に投薬するときは注水量など他の条件は変えないようにしておくことが大切です。 病巣を採取して

過マンガン酸カリとエルバージュを-2月の魚病対策-

図1を見てわかりますように、過マンガン酸カリとエルバージュをうまく使いこなすことによって低水温期の対部分の皮膚疾患を予防あるいは治療することができます。局所的にはピオクタニンブルー(0.5〜2%溶液)、やメチレンブルーを塗布することでよいと思います。 イソジンやマーキュロはすぐ水で洗い流されてしまいますので、回復に時間のかかる低水温期には余り向きません。 図1の冬期にみられる寄生虫による疾病-キロドネラ、イクチオフチリウス、コスティア等は皮膚病変としてみられる白濁症状-い

低水温期の塩の使用-2月の魚病対策-

低水温期の塩の使用ですが、慎重を要するものと考えます。塩による薬浴は、脳下垂体-福腎系を作動させ、コーチゾルの分泌を促し、塩類細胞をはじめとする各代謝機能を活性化します。 普通この塩分適応は7日〜10日ぐらいかかって完成するといわれていますが、かなり急速の反応していくようです。 従って鯉の代謝が著しく低下している低水温期に急にこれを活性化させようとすることは、いたずらに鯉に無理な代謝機能を強いてしまうのではないかと懸念せざるを得ないわけで、病気によっては全く意味のないもの

代謝の低下-2月の魚病対策-

1月、2月の低水温期は鯉のmetabolism(代謝)が低下しているわけで、鯉の疾病に対する対応性あるいは抵抗性が低下しております。外からの侵襲条件は普通にあっても鯉自身の防禦機構、治癒機構が低下しているため、ちょっとしたことで羅患しやすく、治りにくい状態となっています。 たとえばヌメリのもとである鱗の表層にある粘液細胞の機能が低下し、粘液の分泌量が減少します。それによって体表の洗い流し作用が低下し、イクチオフチリウス(白点虫)などに羅患しやすくなります。 普通はスレや外

冬はあまり病気にならない?-2月の魚病対策-

鯉を始めて間もない方あるいは数年経た愛好家の方からもときに「冬はあまり病気にならない」といった言葉を聞くことがあります。   しかし、これは正しい考え方ではありません。 図1は鱗光12月号「これだけは知っておきたい魚病対策」に使用したものですが、魚病知識の基本ですので再度使用させていただきます。 この図からもわかりますように、秋から冬そして春までの間に発生する疾患も少なくありませんし、進行も決して遅くないものです。 1月2月を健康に過ごすためには12月、11月のときの予

適切な水温に-2月の魚病対策-

1月、2月は1年中で最も水温が低くなる時期です。 東北地方では風雪にさらされる池はときに氷を張るようになってしまいますが、最近では、飼育管理のレベルが高くなり、何らかの方法で水温の上昇をはかり7℃〜10℃ぐらいには保つようになっているため、鯉にもある程度の動きが出て、餌を与えることも可能です。 この程度の条件であれば、泳ぎ方を見て鯉を観察することもできますし、治療もしやすくなってきます。鯉が横になってしまったり、じっと動かない状態では、観察も不十分となり治療上も不都合が生

治療は早いほど効果的-1月の魚病対策-

錦鯉の病気はいくら予防しようとしても発生するものなのです。そして、その時の対処の仕方が大切になってきます。ふつうの病気の治療は、それが適切であるならば、投薬を早く行えば行うほど効果があるわけです。(図2) cの時期よりもb、bの時期よりもaの早い時期に投薬することによって疾病の発生率を低く押さえることができることがわかります。 時を移さず素早く処置せねばならないことは少なくありません。 しかしそれはあくまで正しい判断と申しましょうか、診断が必要なわけでして、あわてて不正

魚病対策は予防から-1月の魚病対策-

定期的な消毒・投薬を!! 錦鯉の魚病対策には予防が1番であることは申すまでもありません。そのためには定期的な池の消毒、あるいは投薬が必要です。 江草教授の講演でも述べられておりましたように、魚病の発生率は、寄生虫や病原菌の数と相関関係があるのは容易にうなずけます。 つまり、池の中に、寄生虫や病原菌が多ければ多いほど病気が発生しやすくなり、特にその数があるボーダーラインを超すと病気に発生率が急激に増大します。 池の中の寄生虫や病原菌を増加させる原因として、水処理が悪かっ

錦鯉の魚医は愛好家自身-1月の魚病対策-

もっと魚病対策委員会の活用を!! 以前にも鱗光誌上で申し上げましたが、錦鯉の病気に真剣に取り組んで研究し解決して行くには、私達愛好家以外にはおりません。 なぜなら、錦鯉のなんたるかを、日常でこれに接し身を持って体験しているのは愛好家だけなのですから…。もちろん、これに関連した学術的な知識を絶えず勉強し吸収し、実践に応用して行く努力が必要であるのは言うまでもありません。 一般愛好家の方々は、わからない時、迷う時、魚病対策委員の方々あるいは先輩の指導を素直な気持ちで受けるよ

忘れ得ぬ思い出話-1月の魚病対策-

具体的な魚病の話に入る前に、私が錦鯉の飼育を始めて数年たった頃に、私の鯉の友であり師でもあった菅原正氏(故人、元宮城県支部監事)に聞かされた話を述べたいと思います。 菅原さんは生前、錦鯉の他に洋蘭の大家でもあったのですが、彼が蘭を始めた頃、二千円ぐらいの安い蘭を買っては枯らし、枯らしては買いに行く日々が続いたそうです。 特に勉強もせず、大した値段でもないからという気持ちだったのです。 ある日また蘭を枯らしてしまい、新しいものを求めようと店に行ったところ、その店の主人が、

はじめに

このたび、沢口鱗光主幹を通じて黒木会長より、季節に先駆けた魚病対策について1年間連載するようにとの要請がありましたが、私にはとても力不足で、1年間無事に通せるかどうか不安でもありましたし、また先建諸兄の立派な仕事により、だいたい魚病治療の基本となるところはすでに網羅され、そう目新しいものや、特別変わったことがあろうはずもなく、戸惑いを感じたわけです。  しかし魚病研究員を委嘱されている以上、期待に応えねばと、わが身を省みず、お引き受けすることになりましたが、これから私が述べ