君が来い

春を待ってた私を置いて
君はさっさと春を呼び寄せ
春の向こうへ行ってしまった
私は待ったまま
春を待ったまま

君は別れ際に言ったね
春よ来いなんて
待ってられなかったから
言ってやったんだよ
春が来いって

私もそんな風に
言ってみたならば
春を呼び寄せてあなたに
追いつけるのだろうけれど
君みたいになれそうになくて

だから私はもう少し
春を待ってみることにします
締まった大地がほころぶまで
大気の薫りがさくら色を帯びるまで
春が芽吹くまで
私が芽吹くまで

そして言うんです
君が来い
ここにも春は来たんだよ
君の春といっしょに
君を呼び寄せて

春は螺旋を描くでしょう
絡んだ螺旋は綱となり
二人で春の向こうを
引き寄せるための綱

待ったぶんだけ
その向こうを引き寄せる力は
きっともっと
強くなる

信じさせてください
せめてそう
信じさせて