かたち

かたちあるものに
かたちのないものが宿る
いっしょの日々をくりかえし
荒れた手のぬくもりを
冷や汗かく肌のしめり気を
うつわのように受けとめつづけて
わたしのにおいが染みつくまで
無言でよりそっていったかたちの
その声が聞こえたとき
かたちあるものへ
かたちのないものは息づく

かたちのないものに
かたちが与えられる
ふれることのできないより所を
時間のすきまの息継ぎに
なんどもなんどもたぐり寄せて
青空をゆく雲のなかに
濁った川のきらめきのなかに
より所の呼び声をみたような
そんな思いが鍵になったとき
心のとびらを開けつづけたすえに
かたちのないものの
かたちは立ちあらわれる

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