続ける

一瞬と一瞬をとぎれなくつないで
あの日々とまだ見ぬ日々を
見えないくらい遠いかなたを結ぶ
そんなありふれた行為のなかでめばえる希望
はじめは豆粒くらいのサイズなのに
感情の何もかもをも吸いこんで
六畳一間のハートをいっぱいに満たす
その圧力にきりきりまいしながら
不思議な力に背中を押され
右手を引っぱられ
今のこのいとおしさ やさしさが
熱を失って消えないうちにと
左腕と頬でやんわり ぎゅっと抱きしめ
歩き続ける

*

薄暮の目覚めの次に
南中する光のもらたす熱を待ち
おにぎり片手に正午を飛び越しては
マジックアワーを待ちわび
色重なるひとときのあとに訪れる
月と星々のあいびきタイムを期待し
あまたの灯台たちのおしゃべりに見送られては
次の朝焼けを夢見る
同時多発の桃色がぬるい風にのってゆく下で
雨をあびた青葉たちの背伸びを
かたむいた陽を透かす同じ色の木の葉を
午前五時の路地裏をうっすら覆う白を
そのあとの再びの桃色を
鬼が笑いころげるほど待っている
光と温度と季節のターンテーブルが
あした しあさって またあさって
さらにその先 歳をいくつも重ねたあとも
あたたかな日々を運ぶために
回り続けることを 静かに願う

*

芝生に寝ころんで 空をただ眺める
あきることなく目の前を横切る雲たち
その切れ目のむこうの青空
ふいに思う
巨大な空はそれ自体
ひとつのメッセージのような気がして
人はとてもちっぽけで だからこそ
大きすぎる世界に どこまでも いつまでも
夢を映していられる
包みこむ大空にそう言われてる気がして
ひとり勝手にうなづく
たとい今 通りがかりのだれかがばかにしても
ぼくは信じ続けたい
大きすぎる世界 永すぎる時間の
その先を信じることに
見えもしない未来 届かない理想の
その先を求めることに
自分のありったけを賭けたいと思った
ノーリターン 勝っても負けてもすかんぴん
この世でいちばん愚かなギャンブル
でもその末に 人が人であるのに必要な
確かなほのおが 熱が宿る可能性を
賭けたいんだ
その可能性の果てに
自分を そして誰かを明日へ導く光があると
信じ続けたいんだ

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