(詩)レトログラード

知ってしまったぼくら
ただただ空を仰ぎみる
知ってしまったぼくら
こわばった頬を風がぬぐう
知ってしまったぼくら
両手に何もつかめないまま
夕焼け色のしみが
体の芯まで染み込んでゆく

知ってしまったぼくら
風に逆らい歩いてく
知ってしまったぼくら
川の上流をのぞむ
知ってしまったぼくら
時計のりゅうずを逆回し
夕闇に抗うような残照の中
十二時の針は静止していた

知ってしまったぼくら
否応なく夜はおとずれ
知ってしまったぼくら
やがてとばりに包まれる
知ってしまったぼくら
夢みることを拒み
知ってしまったぼくら
明日にすら背を向ける
知ったまま次の夕日を
そのままやりすごせようか

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