光と宇宙とコスモロジー

温度の飽和の中に放り込まれる
幾筋もの白い直線たち
出会うやいなや沸きたって
うかれた水分と踊りながら
多孔質へと抱き込みんで
流線型を描いて膨れゆく
正午の光をたたえてゆがかれる光
二分ほどの踊りが終われば
水道水でチルアウト

冷蔵庫には
数時間前に創造された宇宙
濃緑のドレスの宿したゆらぎ
流れから取り出し彫刻された節目
期待のかたまりと小さなものたちが
長い長い共同作業でこさえた
たのもしい漆黒とあまい芳香
低温に共栄するカオスたちの
濃密でこうばしい調和は
原初の宇宙の色を
原初の生命のスープを夢みる

刻まれて同心円を成す緑
まるで引きのばされて
輪切りにされた地球
人類が長いことかけて
たどり着いた知見と
不思議に重なる断面
かぐわしい芳香とは裏腹の
ひそやかな直径の中
知らず知らずに
コスモロジーは宿る

断面に世界のすがたを浮かべて
香りたつ同心円は
色濃い期待を閉じこめて
よこたわる宇宙に浮かび
踊りを終えて眠る
ゆがかれた光は
秩序と混沌とのあいだに
いっときの奔流をつくる

コスモロジーと宇宙をともなって
細い二本のかいなにより
光はつめたい滋味となり
音をたてて吸い込まれる
額を一筋はしる雫
その成分は海に似て
光すする者の血は
星屑でできていた

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