(詩)飛ぶ夢

空を飛ぶ夢を見る

大人になったからって
空を飛べるわけじゃない
そんなことはわかってた
人は鳥じゃないし
鳥になることはできない
そんなことはわかってる
それでも飛びたいと思うのは
現実から逃げたいわけでも
ここではないどこかを目指すわけでも
なにかを持て余してるからでも
ない

空を飛ぶ

空を飛ぶことができるからって
大人になれるわけじゃない
飛べなくても知ってる
鳥より高く飛べたとしても
神様になれるわけじゃない
とうの神様だって知ってる
空が飛べるようになったからって
あの日々の憂鬱だとか
無謀な向こう傷だとか
抱えこんだ熱だとかが
消えてしまうことは
ない

夢を見る

未来に伸ばした手が
過去に届くこともある
わたしがはじめてわかったこと
傷ついた羽と向かい風にも
躊躇する足は後押しされる
わたしにやっとわかったこと
限りある力を思い知って
失敗にまみれて渇望を知って
それでも我を忘れる我に希望を知って
はじめて暗闇のむこうに見えてくる光が
ある

夢を見て空を飛ぶ

空を飛べるのは
わたしひとりとは限らない
だからわたしはここにいる
夢を見ているのは
わたしひとりだけではない
だからわたしもここにいる
わたしの羽のおこす風が
だれかの羽のおこした風が
みんなのあえぐような羽ばたきが
ふいになにかを導くことも
ある

きょうもわたしは
向かい風を受けとめながら
みんなで受けとめながら
空を飛び
夢を見る

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