2021年・2022年施行労働関連法改正
2021年・2022年施行労働関連法改正のポイント解説
1. 育児・介護休業法関連
(1) 子の看護休暇・介護休暇の時間単位の取得 (2021.1.1施行)
① 「1日もしくは半日単位」 ➔「1時間単位」で休暇の取得が可能に
② 「1日の所定労働時間が4時間以上の労働者」 ➔全ての労働者が対象に
・ すべての企業が対象
・始業時刻から連続して取得 or 終業時刻まで連続して取得の必要あり(=就業時間の途中での中抜けはNG)
・子の看護休暇・介護休暇を取得した際の賃金は、無給でOK(年次有給休暇とは異なる)
(2) 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 (2022.4.1施行)
・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件のうち、雇用継続期間が1年以上であることは不要に
・ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、雇用継続期間が1年未満の勇気コ世労働者を対象から除外することはOK
2. 高年齢者雇用安定法関連
(1) 70歳までの就業機会の確保 (2021.1.1施行)
・すべての企業が対象
・下記のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じる努力義務あり
① 70歳までの定年引き上げ
② 定年廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に雇用主が実施・委託する社会貢献事業に従事できる制度の導入
・現行は60歳定年、希望者については65歳まで継続雇用
2025.4から65歳定年制が全ての企業に適用
3. 雇用保険法関連
(1) 65歳以上の副業者への雇用保険適用 (2022.1.1施行)
・すべての企業が対象
・以下のすべてを満たした65歳以上の者が被保険者となる
① 1つの事業所における1週間の所定労働時間が20時間未満
② 2つの事業所における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上
(1つの事業所ごとではなく2つの事業所の合計で判断)
4. 障害者雇用促進法関連
(1) 障害者の法定雇用率引上げ (2021.3.1施行)
・常時雇用する労働者(※)数が43.5人以上の企業が対象
※ 1週間の所定労働時間が20時間以上で1年以上の雇用見込みの労働者
※ 1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者は、短時間労働者として0.5カウントで判断
・法定雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられたことにより、障害者を雇用しなければならない民間企業の範囲が従業員数45.5人以上から43.5人以上の企業に拡大
・毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークへ報告する必要あり
・未達成の場合には行政指導あり
5. パートタイム・有期雇用労働法
(1) 同一労働・同一賃金の中小企業適用 (2021.4.1施行)
・中小企業においても同一労働・同一賃金の適用されることになった
① 不合理な待遇差の禁止
・同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇差について不合理な待遇差を設けることを禁止
② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
・事業主は、雇用時と非正規社員から求めがあった時に、説明する必要
③ 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
・「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象になった
6. 労働政策総合推進法関連
(1) 中途採用者比率の公表義務 (2021.4.1施行)
・常時雇用する労働者(※)数が301人以上の企業が対象
※ 無期契約の従業員 or 1年以上継続雇用見込みの従業員
・直近3事業年度分の中途採用比率(正規雇用労働者の採用者数に占める、正規雇用労働者の中途採用者数の割合)の公表が義務化された
(2) パワハラ防止の中小企業適用 (2022.4.1施行)
・中小企業においてもパワハラ防止が適用されることになった
・以下が揃うとパワハラとなる
① 優越的な関係を背景とした言動である
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである
③ 労働者の就業環境が害されるものである
・正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど全ての従業員が対象
・罰則はないが、厚生労働省による助言・指導・勧告の対象となる
7. 派遣法関連
(1) 雇用に際しての研修・教育について説明義務 (2021.1.1施行)
・派遣労働者に対し、キャリアアップ措置(教育訓練やキャリアコンサルティングの内容)について説明することが必要となった
(2) 派遣契約書の電子化 (2021.1.1施行)
(3) 日雇い派遣の契約解除の際の休業手当の支払い (2021.1.1施行)
・日雇い派遣の契約解除の際の休業手当の支払いが義務化された(日雇いまで対象を拡大)
(4) 派遣先での派遣労働者からの意見処理 (2021.1.1施行)
・派遣先企業に苦情や意見を伝えることが認められ、企業は誠実に対応することが義務付けられた
8. 健康保険法関連
(1) 傷病手当金の支給期間の通算化 (2022.1.1施行)
・現在の傷病手当金は、同一傷病について支給開始日から最長1年6ヵ月間であり、その間に出勤して報酬が受けられたため傷病手当が支給されない期間があっても、支給開始日から1年6ヵ月後には受給期間が終了となる
・改正法により、傷病手当金が支給されない期間があった場合は、その分支給期間が延長されることになった
弁護士 猿倉 健司
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