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キシダと呑んだ話

飲み屋さんのカウンターで、気づけば隣にキシダがいた。
彼はいろいろと愚痴をこぼしては、ずいぶんとしょんぼりしている。
僕は自分なりに彼のことをねぎらい、いたわる。
彼の考えに賛同できることもあれば、できないこともたくさんある。

ふと思うところがあって、僕はキシダに、
アバのダンシング・クイーンの話をした。
そしたらやつは聴いたことがないという。

キシダよ、おまえは大いなる損をしてきただろう。開成で一体何をやってたんだおまえは。

知らなかったのは仕方がない。
俺だって、世間では常識とされているにもかかわらず知らないことは山ほどある。

でも、どうかキシダよ、この曲を聴いてごらん。歌詞?うーん俺はリスニングはできないから何言ってんのかはわかんない。

でも元気でるから、キシダよ、聴いてみな。
ていうか聴け。

キシダは少しだけしんみりした顔で帰っていった。

我ながらいいことを言ってやったもんだと悦に入りつつ、もう一杯だけ奄美の黒糖焼酎をあおり、帰ろうとした。

靴がなかった。

キシダてめえ!


まあ、ちょっと別のとこにあったけど。

僕はキシダに、そんなお茶目なイタズラ心があることを思い出した。

次の日。夢の中で酒を酌み交わしたキシダが国会で四苦八苦しながら何かを答えていた。

僕は、あんたはメガネがよく似合ってるよなあ、と、そのことだけを思った。

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