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日本でモン・サン・ミッシェルを巡る旅(1)

以前、「日本人はなぜモン・サン・ミッシェルが好きなのか?」という記事をnoteで書きました。

これは現地でガイドをしていてよく聞かれる質問の一つ。お客様だけでなく、モン・サン・ミッシェルで働いている人にまでよく聞かれます。やはり現地の人にとっても不思議なようです。

2019年はモン・サン・ミッシェルと宮島のある広島県廿日市市が観光姉妹提携を結んでちょうど10周年。ご縁があって、モン・サン・ミッシェルでのイベントに携わらせて頂きました。

そういう流れもあって、記念すべきこの年にモン・サン・ミッシェルとゆかりのある日本の場所を訪れてみようと思ったわけです。

「日本人はなぜモン・サン・ミッシェルが好きなのか?」という謎がもう少し解けるんじゃないか、そんな気がしたからです。

モン・サン・ミッシェル湾の姉妹湾へ

東京から新幹線に乗って京都へ。京都駅からは高速バスで日本海に向けて北上していきます。目指すはモン・サン・ミッシェル湾と姉妹湾となっている京都府北部の伊根・宮津湾。ここは日本三景の天橋立で有名なところです。

日本で通訳案内士として働いていた頃はよく京都には行っていたのですが、天橋立とはずっと縁がありませんでした。なので、実は天橋立に行くのは初めて。

仕事柄どこかへ行く時は「ここをガイドするとしたら・・・」と考えてしまうのですが、今回はオフなのであえて下調べをほとんどせずに旅に出ました。

モン・サン・ミッシェルと天橋立

2時間ほどバスに揺られて、目的地である天橋立駅に到着。駅の中に入ると、構内にはこんなポスターが貼ってありました。

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両国の湾は「世界で最も美しい湾クラブ(Le Club des plus belles baies du monde)」に加盟している縁で、2018年より姉妹湾となっています。

天橋立といえば、日本三景の一つで「股のぞき」で有名ですが、かつてここは巡礼の道だったそうです。この松林が並ぶ砂州を通って、巡礼者が対岸の寺社を訪れていたとのこと。

そういった点では巡礼地だったモン・サン・ミッシェルと同じ。一つ共通点が見つかって少しうれしくなり、長旅の疲れが吹き飛んだ気がしました。

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天橋立を訪れて「股のぞき」をせずには帰れません。ということで、翌日はかつて巡礼者が歩いた砂州を通って天橋立駅の対岸に渡ってみました。

長さ約3.2kmに渡って伸びるこの砂州は、狭いところだと幅がわずか20mほど。歩いていて両側に海が見えるというのはなんとも不思議な感覚です。

ちなみに、私が住むフランスのブルターニュ地方にもキブロンというところがまさに同じ地形になっています。キブロンは電車が通っているのですが、自然にできた海にかかる橋を渡っているようなそんな印象すら抱きます。

「股のぞき」をして見える世界

海はモン・サン・ミッシェル、そしてキリスト教とは切っても切り離せないものです。

旧約聖書の出エジプト記の中では、エジプト兵に追われたイスラエルの民をモーセが紅海を割って導くエピソードが描かれています。モン・サン・ミッシェルの巡礼でも、巡礼者たちが潮が引くのを待って湾を渡っていくのはそれと重なります。

モン・サン・ミッシェル湾が干潮になった時に干潟を渡るということは、物理的に島に近づくという意味だけでなく、そういった象徴的な意味もあるというわけです。

また、モン・サン・ミッシェルへ続く巡礼の道は「天国の道」とも呼ばれます。流砂などの危険が伴う干潟の上を歩いていくことは、島へたどりつくための最後の試練でもあります。

しかし、困難を乗り越えて修道院のある山に辿り着くことは、空つまり天国に近い場所にたどり着くことを意味します。

一方で、天橋立は日本神話ともつながりがあるところ。その由来は天界と下界を結ぶために、伊射奈芸命(いざなぎのみこと)が立てておいた梯子です。天橋立は伊射奈芸命が寝ている間にその梯子が海上に倒れてできたものと伝えられています。

梯子といえば、旧約聖書には「ヤコブの梯子」というエピソードがあります。これはヤコブが見た夢の中で、天使が梯子を使って天国へと上り下りするというものです。

そんなことを考えていくと、天橋立とモン・サン・ミッシェルには色々なつながりがあるなと思いながら、天上世界が見えるという待望の「股のぞき」もしてみました。

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想像以上に「股のぞき」の体勢を保つのは難しいです。頭に血が上ってきます。そういった意味でも長時間やると天国に行けるかもしれません・・・。

ちなみに、誰もやらないと思いますが、モン・サン・ミッシェルでもおあつらえ向きの「股のぞき」をするための絶景スポットがあります。

「股のぞき」をするともしかしたらここからも神様の世界が見えるかもしれません。

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もちろん、他の観光客から冷ややかな視線を向けられるとは思いますが・・・。

ということで、今回はこの辺で。次回は伊根湾に向かいます。



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