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蜘蛛の巣のような関係性

私の生まれ育った地域

私が生まれ育った地域は山梨県韮崎市の山上にある集落です。松の木に包まれていて「山と集落の境目」と説明すると一番想像がつきやすいかもしれません。若者はほとんどおらず中年層と高齢層が主に住んでいます。たくさんのお爺さん、お婆さんは畑を日中に行い、道を歩けば「こんにちは」と挨拶を交わすような地域で私は生まれ育ちました。

私が通っていた山の中にポツンと建っている小学校は1学年から6学年まで合わせて全校生徒約100人と、とても規模の小さい学校でした。そのこともあってかクラス替えは6年間連続にしてなく、20人のクラスメイトと6年間を共に過ごし緊密な人間関係を構築するには適した環境でした。6年間を一緒に過ごすため家族とは呼べないけれど、みんなそれぞれ親戚に近い人間関係の距離感で、生徒の保護者たちもクラスメイト全員のお父さん、お母さんのことを知っているという、今思えばとても貴重で珍しい環境下に私はいました。

学校登校の風景を思い返すと現実味のなさにくすくすと今でも笑えて来ます。山の中のある小学校ですが徒歩で歩けない距離ではないので地域ごとの1年生から6年生で登校班を作り毎朝山の中を約45分程えっせらこいさと歩いて山を登るのです。登校道には猿や猪が出たりと、危なっかしい道を小さい小学生たちがテクテクと登校してましたが、幸運にも大きな事件&事故に巻き込まれることもありませんでした。

友達のおばあちゃん

とてもワイルドで歩く距離の多い登下校でしたが、とても楽しかった思い出のある登校道でもあります。私の同級生は彼のおばあちゃんと一緒に学校の登校道の近くに住んでいました。学校を終えたら彼と一緒に山を降り、そのまま彼の家に自分の家のように上がり込んでいっていました。彼の家は伝統的な河原といろりがあり、冬には掘りこたつがあったのも覚えています。他人の家であるにも構いなしにズカズカと入っていく私に対して、友人のおばあちゃんは「おかえり」と温かい笑顔で迎え入れてくれて、ジュースやお菓子を出してくれるのでした。しかし、おばちゃんは「宿題を先にやってしまいなよ」と私たち子供に促し、遊び時間とお菓子にありつけるのはその後でした。私の友人は秀才だったので宿題もパパッとやってしまうタイプでしたので、おばあちゃんの目を盗んでは彼の宿題の答えを写していたのもいい思い出ですね。このおばあちゃんですが、とても優しいおばあちゃんで「ケンジくん」と言って私のことをたくさん褒めて、可愛がってくれました。当時私の祖父母は家から車で1時間ほど離れたところに住んでいたため、彼女は私の「近くに住むおばあちゃん」のような存在でした。

関係性の移り変わり

私の祖父は戦争を少年時代に経験をし、私と頻繁に戦争下で生活をする苦しみやストレスの話をしてくれます。しかし先日のことですが、苦しみや不便さに満ち溢れた少年時代から恋しいものがあることを教えてくれました。「地域の人々で助け合うことや家族で生き延びていくこと、人との繋がりがあること、それは良かったなぁ」と一言。

彼がつまり何を言っているかというと「人々と築く関係性」のことを言っているのだと私は理解をしています。彼が少年時代には近所の自分を家族のように扱ってくれたAさんと、その奥さんのBさん、そして共に遊びや学びを行う近所の少年Cちゃん、D君、Fさん。学校には大変厳しい指導をするD先生。彼が少年時代には希薄な関係性ではなく、戦争下ということもあり一定の団結心や助け合いの心で結ばれた、深い関係性があったかのようにも思えます。現在もウクライナで様々な惨劇がニュースを通して私たちの耳に伝わってきますが、困難な中でもウクライナ市民が団結する姿や助け合う姿を報道でよく目にします。こういった状況にあったら人々は自己中心的になり、他人との関係性を蔑ろにするのではないか、と以前から思ってはいましたが、私の祖父の話やウクライナで人々の様子を見ると、そうでないケースもあるのかもしれない、と思う次第です。

理由が何であれ近所付き合いや地域とのつながりが現在社会で薄れてきているのは私は個人的にうっすら感じています。したがって、今を生きる青少年たちが築く人々との関係性は私の生まれ育った世代よりも少ないのかもしれません。もちろん、「人との関係性が多ければよろしい」とは言えませんが、たくさんの関係性を構築していれば、その中の1つや2つが彼らにとってとても重要になる可能性も否めません。

ミアキスも関係性の一部へ

ミアキスでは青少年が自由に施設を利用できるということもあり、その中で利用者とスタッフの間で関係性が育まれることは稀ではありません。家庭、学校、友人、など様々な分野と方向で関係性を持つ青少年の彼らですが、ミアキスもその一分野となれることを願っています。家庭、学校、青少年センターミアキス、地域、と幅広い分野で青少年の彼らが蜘蛛の巣のように関係性をそれぞれの分野で構築をし、彼らを温かく見守る人、背中を押してくれる人、サポートを提供してくれる人など様々な人に囲まれてのびのびと成長をして欲しいです。

「おかえり」と温かい笑顔で迎えてくれた友人のおばあちゃんが私が成長するときにいたように、我々ミアキスも地域内外の青少年達が安心して信頼できるような関係性を築きたいと強く願っています。


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