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「他者と働く 〜「わかりあえなさ」から始める組織論」

宇田川元一氏 著「他者と働く 〜「わかりあえなさ」から始める組織論」

  我々が日々直面する問題には、既存の方法によって解決することができる「技術的問題」と、既存の方法では一方的に解決することができない「適応課題」からなります。
  一方的に解決することができない課題とは、それが他者との「関係性」によって生じているからなのであり、その関係性を“変える”手立てこそが『対話(Dialogue)』であると筆者は述べています。

  『対話』と聞くと、場を設けて語らうこと(語らう⇒解り合える)だと単純に考えてしまいますが、相互の立場や時々の関係性によって理解を妨げる様々なカベ(迎合、押付け、馴れ合いなど)があります。

  よって筆者が言う『対話』とは、“話せば解る”という類いのものではありません。
むしろ実際に話す前に行う「自らの前提(ナラティブ=本書の一つのキーワード)の偏り」を知り、「相手のナラティブ」に思いを馳せ、その中に「自己の存在(自分も同じ立場ならそう思う)」を認めるというプロセスから『対話』は始まっていると説いています。

  経営と従業員、上司と部下、営業部と開発部、といった異なるナラティブを持つ人同士の関係性において、「なぜ相手は理解しない(動かない)のか」という批判的かつ攻撃的な感情は付き物です。
  この関係性を、どちらかが腐っている(悪い)わけではなく相互を繋ぐ配管が腐っているというメタファーを用いて表現するとともに、よい配管に繋ぎ直すために行なう具体的な努力の方法が解り易く書かれています。

  仕事がうまくいかない、部門間の関係が良くない、と悩んでいる方は勿論、「正しい対策アクション」を行なっているにも関わらず状態が変わらない、と苦悩する方にこそ読んで頂きたい良書です。

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