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「強靭な組織を創る経営」

綱島邦夫 氏 著「強靭な組織を創る経営 〜予測不能な時代を生き抜く成長戦略論」

  GAFA、BATの興隆を、戦略のポリシーとそれを支える組織能力の観点から分析、そしてそのエッセンスがSONYやHONDA、セブンイレブンなどかつての日本企業と重なるところが大きいとの指摘のもとで、日本企業が未来に活路を開くための数々の提言を行なっています。

  第3章(GAFAやBATは異星人)で述べられた躍進する新興企業に共通する20項。
第19項目「全体最適ではなく部分最適」は“コングロマリット・ディスアドバンテージ(=総合メーカーの業績は専業メーカーの業績を下回る)“の以下の実例をもとにした提言です。


・百貨店の市場規模5兆円に対してカテゴリーキラーであったスーパー、コンビニはそれぞれ10兆円、ドラッグストアは6兆円。


・中古品売買を行なうフリマアプリはYahooにもあるが成長しているのはメルカリ。

・空調機器に特化したダイキン工業の2020年3月期業績予想は売上2兆7千億円、営業利益2,900億円。これはパナソニックの家電事業全体の売上規模を超え、利益は3倍に近い。

・メガ銀行のリテールビジネスは多くが低迷、リテールに特化するりそな銀行だけが健全な業績を上げている、また傘下のリース会社はどこもオリックスに太刀打ちできない。

  筆者は総合化によるメリットやシナジーに疑念を呈し、「可能性のあるビジネスチャンスがあれば、そのチャンスを最大に追求する部分最適を追求する」べきであると述べています。

  過去30年の停滞の原因をヒエラルキー(が産み出した規則やルール)であるとしな がら、その中に蓄積してきたアナログ資産を肯定し、経営者と従業員の新たな関係(働き方)によって活路は開けるという前向きなメッセージに満ちた一冊です。

  同章で引用されたGoogleのエリック前CEOの言葉。
「誰が戦略をつくるのか、これが重要だ。(中略)、変化に対して敏感な感性を持つ人、ベストな想像力を持つ人が参加しなければならない。」

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