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虎落笛

冬とはいえ少し暑くなって外に出ると、肌に突き刺すピリピリとした寒気が1年の流れを感じさせる。

四季の中でも色が減り行く世界を生み出す冬は良くも悪くも季節を1番謳っているようなそんな外見をしている。

幾度も感じながら同じ季節は二度と来ないが、私たちは季節が変わる度にそのときそのときの色合いに心を寄せ、生を知るのだ。

音が鳴る、色を映す、風に触れる

これだけで私の心にはいつも生きることの素晴らしさを揚々と生み出すのだからなんとも居心地のよい生命を積み重ねてきたものだ。

少し遅めに歩いていると、私の傍には虎落笛(もがりぶえ)が追いかけてきて息を切らしている。

「虎落」とは竹を立て並べて作った柵や竹垣のことであり、それが風に吹かれて、笛のように音を立てることに由来する。

どれだけ走ってきたのかわからないが、虎落笛は私に「ゆくなよ、ゆくなよ」とからかうかのように私の周りを踊り出す。

そして気づけば大きな鉛色の大海原から雪が降りてきて足元を彷徨う

急ぐことも無く体を冷ませばまた

家の温もりが恋しくなるものなのだから

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