ブラック企業が存続する3つの要因

(今回は少し文体を変えてみたいと思います。)

令和の時代に入り数年たちますが、いまだ日本には数多くのブラック企業が存在します。最近は残業代を払わないような平成に蔓延した典型的なブラック企業は減ったものの、末端の従業員の残業代は払うか残業自体をさせないようにする代わりに、たいして管理業務もないのに無理に「管理職」にしてそっちに残業代を払わないようにしたりする企業が増えてきたようにも思われます。いわゆる「名ばかり管理職」にしわ寄せがくる時代になったとも言えますが、名ばかり管理職については他でも多く解説されていますのでここでは割愛します。

おそらく比較的多くの人の記憶に新しい部類に入る全国的に知れ渡った凡例はマクドナルド訴訟ではないでしょうか。

https://yamamoto-syaroshi.com/precedent/titular-managers/


さて、36協定が非人道的と言っていた人もいましたが、業務量があきらかに多いにも関わらずそれにその是正に動かなかったり、その業務に対する賃金が正当に支払われない状態を認知しつつも改善しようともしない企業をブラック企業と定義したいと思います。特に昨今の管理職にして残業代を支払わない状態にしてしまおうという体質の企業は、個人的に『ネオ・ブラック企業』と呼びたいと思います。

これら従来のブラック企業やネオ・ブラック企業はなぜはびこるのか。このご時世にしても、どうして存続し続けるのか。筆者が考える最大の要因は3つあると思われます。言い方は違えど多くの方々が多方面で指摘している部分でもありますが、それは以下の3つです。

・ブラック経営者
・ブラック従業員
・ブラック顧客

ブラック経営者

これは言わずとしれた悪徳経営者です。経営者と言っても社長個人だけとは限らずその取り巻きとなる経営陣全般を指します。

「会社のため」や「会社の方針」と言いつつ、結局自分たちの利益のことしか考えていない独善的な経営者は少なくありません。これは会社の規模に限らず、未上場の中小零細企業から東証一部上場企業に至るまで様々なところにお目にかかります。

もちろん事業で高い利益を出し続けることはある種の評価を得るものではあります。しかし、それが労働に対する正当な対価を支払わない搾取の上に成り立つものであった場合、それは社会全体として望ましいものと言えるでしょうか。

「資本主義の社会ではそれは仕方がない」という人はいるかもしれません。そういう方々は、おそらくそれ以上考えることもなければ、考えようともしないタイプかと思いますので、議論は平行線になる可能性が高いのでそれ以上は期待しません。

しかし、その上でブラック経営を正当化する人には反社会性パーソナリティ(ASPD)の方や、共感性欠如DMSの方が含まれている可能性があります。サイコパスに多い職業の上位にCEOがいると言われるように、他社に対する想像力が極端に低いか、人への無関心の果てにブラック経営をするのかもしれません。

「ブラックじゃなくても稼げる」というのはGoogleが証明していると思われます。が、残念ながらいまだに能力のない経営者はブラックな経営をしなければ存続できないと思っているでしょうし、実際そうし続けているのかもしれません。それは社会全体にとっては害でこそあれ、その経営者の利益以外にほぼ有益なものにはなりにくいでしょう。例外としては、そのようなブラック経営の企業をおもちゃのように扱う投機家が短期的な利益を狙う際に使う場合はあるかもしれませんが・・・。


ブラック従業員

ブラック経営者だけでは、会社は成り立ちません。それを支える・・・というか無自覚のうちに支えてしまっている従業員がいることも見逃してはいけません。

このブラック従業員には厳密には2パターンあるように思われます。一つは、経営陣の言うことを絶対視して従うパターンです。自分が満足いく対価をもらっていると思っている場合は、一見被害者はいないようにもみえますが、実はそこに日本人の平均年収が他の先進国と比較しても著しく低い状況になっている原因になっていたりします。

社会的なモラルに反していたり、企業倫理として第三者から明らかにおかしいと指摘されているような会社のルールに従ったりするものも少なくありません。あきらかに違憲な就業規則を省みることなく、継続してしまっているところはかなり問題としては根深いものです。

もう一つのパターンは気が弱くて言い出せないパターンです。おひとよしや必要以上に優しい、相手に譲歩しすぎてしまう方々もこれに含まれます。現状の対価に満足していないはずなのに、言い出しづらいということで、ある種の「泣き寝入り」状態に入ってしまうパターンです。

賃金交渉をしない日本人は他の海外の多くの国で働く人から見ると異常に見えることもあると言われますが、しない文化に慣れてしまった多くの日本人にとっては「給料をあげろ」と上に向かって交渉しようとすること自体が難しいことかもしれません。

ちなみに上記の中間、またはあわせ技という立ち位置で、顧客に対してもできもしないのに安請け合いしてしまう従業員もいます。これは会社にとっても本来であれば損失につながるので避けたいところですが、短期的に売上を立てなければならない営業が必要以上に値引きしてしまったり、その部門長がそれを承認してしまったりすることがあります。逆に売値を変えずに過剰なオプションと無料でつけたり、限られた納期に仕様変更をどんどん受け付けてしまうものもこれに分類されます。

あとから気づいて訴訟にでたのはIBM vs 野村證券という事例がありますが、裁判にまでいくのはかなりレアなケースではないでしょうか。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05552/

実際には「お客様のために」や「とはいえ売上はたてないといけないから」と言い聞かせて「対価が支払われない労働」を生み出してしまっているのがブラック経営者とブラック従業員です。(ここでは完全に経営サイドにある管理職はブラック経営者側に含まれ、名ばかり管理職等はブラック従業員に含まれます。)


ブラック顧客

最後がブラック顧客です。直前のブラック従業員のところで触れた逆のパターンになります。つまり、とにかく安く買い叩こうとする会社、なんでも無料でオプションをつけようとしてくる会社、お客様は神様だと言わんばかりに一度金を払ったら過剰なサービスや労働時間を期待する会社等です。

このようなクライアントや顧客に従順な子犬のように「はい」と言ってしまう経営者や従業員がいることも問題だというのは前述しましたが、対した対価を支払ってなかったり事前の契約内容に含まれないような過剰なサービスを期待する企業がブラック企業です。


これら、ブラック経営者・ブラック従業員・ブラック顧客がなくならない限り、この日本からブラック企業が消えることはないでしょう。

「ブラックでも従業員の雇用を守っているんだ」と偉そうに声高らかに語る経営者はいるかもしれません。その場合はブラックな経営でしか会社を存続できないのであれば、早々に市場から撤退してもらってホワイトな企業に従業員を譲りかれらの足を引っ張るのをやめていただくのはよいでしょう。

日本の法律の弱いところは、ブラック経営者に対する罰則です。日本全体のGDP成長の足を引っ張ったり、先進国内再開の賃金レベルの雇用でしか存続できない経営者には引退してもらいたいですし、もしそれがサービス残業のうえに成り立っているのであれば、それを是正しない経営陣には全員多少の懲役刑があってもよいような気がします。


最後に

「とは言っても日本は変わらない」「ここまで来たらあとは衰退するだけ」「もうオワコンだ」とあきらめ思考停止になるのは簡単です。せもて、その苦境の中でも少しずつでもこの国を良くしていこうチャレンジしている人たちの足を引っ張るのだけはやめて、協力的な人が少しでも多くなることを祈ります。

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