質問に答えてくれなかった東北新社
2月24日、菅義偉首相の長男が勤務する「東北新社」から接待されていた総務省幹部らが一斉に処分されました。一連の接待が総務省による衛星放送事業の許認可などに影響を与えたかどうかが今後の焦点となるようです。
さて、この「東北新社」、東北地方に会社の拠点があるわけではなく、単に創業者が東北地方(秋田県)出身であることに由来する社名です。一般の方には馴染みがないと思いますが、知財的な視点では無視することのできない会社です。
同社のウェブページを見ると、「総合映像プロダクション」として、広告、映像制作、音響・字幕制作、放送・配信/コミュニティビジネス、ライセンスビジネス、デジタルプロダクション、物販、教育、声優・翻訳家マネジメント、海外事業など、かなり多様なビジネスを行っています。知財関係者にとって特に興味深いのはライセンスビジネスであり、同社のウェブページを見ると、様々なコンテンツを取り扱っていることがわかります。
同社のライセンスビジネスで注目すべき点は、オードリー・ヘプバーン氏や三船敏郎氏の肖像権・パブリシティ権の日本国内における権利処理窓口となっているところです。
また、『サンダーバード』の日本国内におけるライセンスを所有しており、『宇宙戦艦ヤマト』のオリジナルシリーズ(『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』以前の作品群)の現在の著作権者ともなっています。
『宇宙戦艦ヤマト』の著作権に関しては、漫画家の松本零士氏とプロデューサーの西崎義展氏との間で展開された争いなど、現在に至る経緯を拙著『こうして知財は炎上する』(NHK出版新書)でも紹介しておりますので、詳細について知りたい方はそちらをご覧ください。
ところで、私は同社に対して質問状を送ったことがあります。と言いますのも、オードリー・ヘプバーン氏など、すでに亡くなっている人について人格権を根拠とする肖像権・パブリシティ権がそもそも存在するのか、といった法的な論点があるからです。また、『宇宙戦艦ヤマト』に関しては新シリーズが制作されていることから、新シリーズについても同社が何らかの権利を持っているのかについても気になりました。
そこで、『こうして知財は炎上する』(NHK出版新書)で取り上げることを目的に、2018年3月に同社宛てに「知的財産権に関するご質問」と題する質問状をメールを送り、以下の2点について尋ねてみました。
①オードリー・ヘプバーン氏や三船敏郎氏など故人の肖像権及びパブリシティ権が存在するとして、日本国内の存続期間はいつまでと考えているのか?
②東北新社が保有しているとされる『宇宙戦艦ヤマト』のオリジナルシリーズ(『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』以前の作品群)の著作権はどのようなものか?「翻案権等」「二次的著作物の利用権」は含まれていないのか?
同社から全然反応がなかったものですから、その後、何度か催促したのですが、残念ながら返事は来ませんでした。
確かにデリケートな内容ですから、答えにくいという同社の立場もよくわかります。会社によっては、自分たちにとって都合のよい記事を書いてもらおうと、記者やジャーナリストを接待するところもあるようですが、私に対しては接待の申し出などはありませんでした……。
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