東京電力柏崎刈羽原発核物質防護に関する「中間取りまとめ」について

東京電力柏崎刈羽原発におけるIDカード不正使用と核物質防護設備の機能喪失に関連し、2022年4月27日に「中間取りまとめ」(「東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所に対する追加検査の状況(中間取りまとめ)」が公表された。

https://www.nsr.go.jp/data/000388647.pdf

「中間取りまとめ」によれば、①「東京電力の特徴」を把握するために、東京電力以外の電力会社に対しても核物質防護の実態調査が規制庁によって実施された。この点については「防護組織」「防護設備の仕様」「保全方式」「代替措置」「出入管理や監視の方法」「教育訓練」「その他」について調査を行っている。

調査結果は重大なもので、例えば「防護組織」については、柏崎刈羽原発で、核物質防護管理者が他の業務を兼務していたり、核物質に関する不適合管理等を審議する会議体(PPCAP)に参加していなかったり、本社や柏崎刈羽原発の経営層による防護本部への立ち会いもほとんどなかったと書かれている。さらに、「防護設備の仕様」「保全方式」「代替措置」「出入り管理や監視の方法」でも、およそ核物質を大量に扱う原発とは思われないずさんな状況が明らかにされている。

問題は、今回のとりまとめで、「2事案の発生については、他電力に共通する問題や東京電力の全社的な問題ではなく、柏崎刈羽原子力発電所に固有の問題 であると判断される。」としているところである。

先に述べたように、「本社や柏崎刈羽原発の経営層による防護本部への立ち会いもほとんどなかった」と、この「中間取りまとめ」に書かれている。このことからすれば、今回の事案が、単に一事業所たる柏崎刈羽原発固有の問題でないことは明らかである。東京電力ホールディングスの経営陣が、核物質防護を軽視していたとみるのがむしろ自然である。

東京電力ホールディングス本社の核物質防護に関する認識が十分であったのか、具体的措置を講じていたのか、といった点に関し、原子力規制委員会は具体的調査を行っていない。具体的調査を行わずして、「東京電力の全社的な問題ではなく」と断ずるのは適切ではない。

柏崎刈羽原発に関する事実関係については問題点がコンパクトにまとめられており、「中間とりまとめ」は、この点は評価できる。しかしながら、なぜ、東京電力ホールディングスが、柏崎刈羽原発における核物質防護をずさんなままにしておいたのかは全く明らかにされていない。

東京電力ホールディングス本体の問題を明らかにしなければ、今回の問題のようなことは今後も起こる可能性がある。核物質防護は、原子力発電所にとっては最も基本的な事項である。原子力規制委員会が行う調査が、より本質に迫ることを切に望みたい。


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