見出し画像

危機の時代とNew Normal(新常態)に向けた人事アジェンダ - Part 2

画像1


さて前回は、危機の克服と新常態に向けた人事アジェンダの背景などを説明しました。現在はすべての人事およびその関連プロセスに置いてCovid19の影響が出ている中で(もちろん企業全体のオペレーションに影響が多々で出ていますが)、New Normal時代においてはこれまでの人事DX一辺倒の流れから、取捨選択し「予防」という考え方が大事になっていくるということ。その予防を講じることが真の働き方改革にもつながると考えています。

昨今レジリエンス(=回復力)とアジリティ(=俊敏性)という言葉はやっていますが、正に危機を克服し、新しい環境に適応するために、これからの人事施策・プロセスにはこの2つのキーワードが重要になっていきます。

この「回復力と機動性を意識した人事施策・プロセス」を体現するには、

1.   ”個人”を守る予防の仕組みの整備
2.  挑戦のための“組織・個”の強化

の2軸の視点でアクションを検討していく必要があります。

1.   ”個人”を守る予防の仕組みの整備
さてNew Normalの時代にあって、我々の生活様式も新しくなっていくのではないかという見方がもっぱらです。政府も新しい生活様式の提案をしていますが、特に働き方の新しいスタイルという項目は我々仕事人に正に直結する内容です。テレワーク・ロケーションワークの推奨、オンライン名刺交換、広々としたオフィスを使うなどが推奨されています。Beforeコロナの生活にいち早く戻って欲しいと思いますが、しばらくは忍耐の日々が続きそうです。

<参考>厚生労働省:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

一方で従業員体験を考えたときにも”個人”を守る予防の仕組みの整備は一段と必要になるかと思います。一人ひとりの社員の健康・安全・安心を守ることが経営者により求められる時代。これは昭和の福利厚生とは全く違う文脈で待ったなしになると思います。

東京工業大学のテレワークに詳しい比嘉邦彦教によるとテレワークのメリットとして(引用 2020年5月9日(土)公明新聞4面)、

社会へのメリット
・人口の一極集中を是正
・移住など地方創生に貢献
・女性就業率の上昇

労働者へのメリット
・通勤負担の軽減
・育児や介護の両立
・従業の選択肢が拡大

経営者へのメリット
・オフィス賃料などコスト削減
・優秀な人材の確保・活用

の三方良しのツールとしているが、経営者にとってテレワークを「労働者のための福利厚生」と見ている経営者は意識を変えなけれなばならないと仰っているのが印象的です。従業員にとって、経営に貢献するテレワークとするためにも、従業員に寄り添った経営変革の施策として、この予防の仕組みを作っていくことが必要でしょう。

考えられる具体的な施策として下記の3つを挙げてみました。

1) 業務の省人化 - ワークフロー見直し
→ 今回の自粛制限で浮き彫りになったのが日本のハンコ文化です。未だに決済を取るために上長に順番に印鑑をもらいにいく業務が日本にはあります。これは一刻も早く辞め、電子承認・認証などに切り替えていきべきでしょう。外部の取引先などを含め今後益々ブロックチェーンの活用やServiceNow(https://www.servicenow.co.jp/)などのデジタルワークフローの活用事例が増えてくるのではないかと思います。

また業務の省人化という観点ではAIやRPAの活用によるオートメーションも重要です。オートメーション自体は新しい概念ではなく1950年代にはファクトリーオートメーションという概念が日本にはありました。複雑化または属人化してしまった業務を見直し、コンピューターでできる部分は積極的に活用する。そうすればBCPという観点でも大いに貢献できるのではないかと思います。また非コア業務部分に関してはBusiness Process Outsourcing(BPO)の需要も益々高まるのではないかと思います。人事領域では給与・勤怠業務のアウトソーシングは多々事例がありますが、今後はタレントマネジメント部分でも分析業務のアウトソーシングなどは事例が出てくるのではないでしょうか。


2) サーベイとアクションの迅速化 - エンゲージメント
次につながり=エンゲージメントに関する施策です。やはりリモートワークとなると同僚の顔が見えない、部下の様子が伺えないといった課題も多々聞かれるようになっています。特に緊急時にはいち早く従業員の状況を知ることが重要です。従業員の状況をいち早く知るためには、従業員に最新の状況や困りごと、考えをインプットしてもらうことが最も有効な手段です。

わかりやすいのは全社員にサーベイのメールを投げて、それに解答をしてもらい、そこから得られた課題から対応案を講じていくことでしょう。これはエンゲージメントの仕組みとしてパルスサーベイとして認識されていますが、タレントマネジメントがまだ定着化していないところでは導入も遅れています。一刻も早くこのサーベイの仕組みを入れていくことが予防策としても有効です。

関連して、今回のCovid19においても組織・人財テクノロジーを使った様々施策が出ていますが、IBMがWorkdayを活用したソリューションとして発表しているのが「Essential worker identification and enablement」です。これは自社内のエッセンシャルワーカー(医療従事者だけでなく、どうしても業務をオフィスでやらざるを得ない社員)を早期に特定し、経営者や人事が把握するものです。もう一つ出しているのが「Personal COV-19 Status」で、こちらは自分自身で個人のCOVID-19ステータスを記録でき、例えば、インドでは医療関係者はそのデータから、従業員の健康状態を解析できるようなことまでを考えています。

<参考>Empower your remote workforce during COVID-19
https://www.ibm.com/dk-en/talent-management/covid-19

3 )「個」の社員サポート - 健康経営
最後は「健康経営」です。この重要性が益々重要になってくるのではないでしょうか。ウェルネス/ウェルビーイングテクノロジーという言葉がこれからトレンドになり、企業としても積極的に活用されていく分野だと思います。

こちらに詳しく掲載されています。
<参考>
HRテクノロジーの中でも2020年以降注目したい北米ウェルネス・テックの最新潮流
http://www.wildcardincubator.com/blog

今後社員の健康というはより意識されるべき経営テーマとなり、例えばオンライン1on1を実施する際に、社員の顔や声のトーン、その話している内容から社員のフィジカル・メンタル双方の状態をAIが解析し、マネージャーや産業医に伝え、その集約された情報を元に人事施策に落としていくという時代もそんなに遠くはないと思います。これもCX(カスタマー・エクスペリエンス)領域ではすでに実装されており、テクノロジーを活用するという観点では難しくないと思います。

次回は「2.  挑戦のための“組織・個”の強化」およびこの2軸を支えるテクノロジーについて論じたいと思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?